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論語に学ぶ人事の心得第三回 「たとえやさしいことでも毎日反省することが大切である」

孔子の氏は孔、名は丘、字は仲尼と言いました。孔子は孔先生という意味の尊称です。弟子が3000人もいたと伝えられているので余程の大先生だったのでしょう。しかし、孔子は若くして学問を志ますがいわゆる象牙の塔にこもったような学者ではありませんでした。2500年も前のことですから高い学問を習得したのでもありませんし高貴な指導者に指導を受けたわけでもありませんでした。
魯の国の下級官吏に任官され、社会生活のスタートを切りますがやがて魯国のクーデターで国王とともに国を追われ隣国斉に亡命します。30代半ばに亡命先から帰国し弟子の指導を始めます。長らく弟子の指導に専念しますが、再び国王に取り立てられて行政職に復帰します。
大司冠(裁判官の最高位)にまで上り詰めました。55歳で官を辞し、弟子たちとともに13年間の諸国漫遊の旅に出ます。
孔子は儒教の開祖ですが特定の指導者に学んで開眼したのではなく自らの体験と学習からから編み出したものです。弟子のひとりは「先生は特定の師を持たなかった」と語っていますのでおそらく事実なのでしょう。誰であっても謙虚に耳を傾け自分のものにしたと言います。まさに、生涯にわたり活学を実践されたと言えると思います。

それでは引き続き論語の「学而編」移りましょう。
学而1-4 曾子曰く、吾れ日に三たび吾が身を省みる。人の爲に謀りて忠ならざる乎、朋友と交りて信ならざる乎、習わざるを傳ふる乎。
曽子が言った。「私は毎日必ず何度も自分を点検することにしている。仕事にあたって誠意で取り組んだだろうか? 交友で約束を破らなかっただろうか? 知り得たことを実践しただろうか? と。」
曾子は孔子と46歳も離れた最若年の弟子の一人です。孔子の没後、頭角を現し指導的地位についたと伝えられています。

論語の教え5:「たとえ易しいことであっても毎日何度も自己反省することが大切である」
これらはビジネスマナーの基本であり、本質です。

①仕事にあたって誠意を持って取り組んだか?
誠意をもって仕事するとは私利・私欲を離れて、正直に、熱心に事にあたることを意味しています。簡単なようであって、実に難しいことです。

②交友関係で約束を破らなかったか?
これも易しいようでなかなか難しいことです。例えば、約束を守ることは人間関係の基本です。時間を守ること、決められたことを守ること、指示されたことをやり遂げることなど仕事をする上でのすべてにあてはまります。

③知りえたことを実践したか?
何事も目的指向で実践することが大切です。私たちは何のために学ぶのでしょうか?
学んだことを活用して役立てることです。単に知識を蓄積することだけでは意味がありません。

上記三つのことはなにも難しいことではありません。たとえやさしいと思われる事であっても日々に反省することに重要な意味があります。このような生活習慣を心がけ実践することが成功への道だと論語が説いてい.ます。


論語に学ぶ人事の心得第二回 論語が生まれた時代背景と孔子の人となり

前回から「論語に学ぶ人事の心得」と題して、論語の教えを人事管理にどのように役立てるかを取り上げることにしました。2500年も前の英知が現在に十分有効であるばかりでなく未来の人事管理にも燦然と輝く北極星のようにあるべき姿を指し示してくれているように思います。
論語の教えに入る前に孔子の人となりと孔子が生きた時代を簡単に紹介しておきます。孔子が生きたのは古代中国の春秋時代です。群雄割拠し戦乱に明け暮れていた時代でもありました。孔子は紀元前551年9月28日に魯の国(現在の山東省南部)に生まれ、紀元前479年4月11日74歳で波乱万丈の生涯を終えています。魯の国は、もともと弱小国で、貧しく人心も安定していませんでした。父親は魯の国の将軍でしたが孔子が幼いころ(3歳)に戦死します。母は側室でした。父の死後酒造り職人であった母とともに辛酸をなめる生活に追い込まれます。その母も孔子が17歳の時に亡くなります。天涯孤独の孤児となりました。このようにその出自は決して恵まれたとはいえず、むしろどん底の貧しい家庭に育ったのです。
このシリーズでは孔子がこのような逆境の中からいかにして儒教の開祖といわれるまでの思想家になれたのかを紐解くことができればとも考えております。
どうか楽しみにしていただければ幸いです。

学而1-2有子曰く、その人と為りや高弟にして、而も上を犯すことを好むものは鮮し。上を犯すことを好まずして而も乱をすことを好む者は未だこれ有らざるなり。君子は本を務む。立ちて道生ず。孝弟なる者はそれ仁の本なるか。
「高弟の有子がこのように解説しました。年長者を敬い控えめな者は目上の人に逆らうことを好む人はめったにません。目上に逆らうことを好まない人で、不作法や謀反を起こしたりする人はかつて誰もいませんでした。優れた人は基本を大切にします。基本が確立さると、正しいやり方が生まれます。孝行や年少者として控えめな態度を身につけた人は、それこそが仁の基本を身に着けた人であろうと思われます」

論語の教え3:目上の人の意見を傾聴することの大切さ
他者への傾聴を心掛けている人は情報が入りやすくなり、人間関係も良くなります。とりわけ自分と反対の意見を持っている人や個性的な人の意見を重視していると真に必要な情報が入りやすくなります。部下を持つ人は部下に従順さを求めるあまり反対者や反対意見を遠ざけることがよくありますが、諫言を傾聴し快く受け入れる人こそ真のリーダーです。

論語の教え4:基本的な原則の修得し何事に対処するにもぶれないことが重要である。
何事にも基本があり本質があります。基本を身につけておけば応用ができます。基本が理解できていないのにむやみに変化させると目的や原則とかけ離れた制度や仕組みになってしまいます。いわゆる手段が目的化することです。人事の事例で異動を取り上げましょう。人事異動は社員の適材適所の配置のために行われるのが基本原則です。現在の所属で十分能力を発揮しているのに上司の部下に対する好みで人事異動させてしまうことがよくあります。その逆もあります。上司が今の部下がとても従順で使い易いからいつまでも抱え込んでおきたいといって離さなかったとしたらどうなるでしょうか。部下はマンネリに陥り便利屋としての価値しかなくなります。その人の職業人生は上司によって抹殺されることになってしまいます。
仁とは孔子による儒教の教えの中で5つの徳「仁・義・礼・智・信」の一つとして説かれた概念です。


「論語に学ぶ人事の心得」 第一の教え:「学ぶことは大切だが、実践してこそ意味がある」 第二の教え:「言葉巧みに人当りよく取り入る人は誠実でない」

2020年は年初から世界中がコロナ禍に翻弄されました。季節も冬から春を過ぎ、やがては夏を迎えようとしているのに収まる兆しは見えていません。世の中、暗いニュースばかりですが一時の清涼感を味わうために有名な論語を取り上げたいと思います。2020年のこのブログの年間テーマとして2500年前の英知の結晶が現代の人事管理に何を教えているのか紹介していきたいと思います。
 ところで現代を生きるビジネスマンで内容の詳細は別として「論語」という単語を一度も聞いたことがないという人はいないと思います。2500年という長い時空を超えて脈々と伝承されてきた孔子という偉大な思想家が弟子と対話した内容を孔子本人ではなく弟子がまとめてものです。
「温故知新」という言葉があります。古きを訪ねて新しさを発見するという意味です。この言葉も論語で用いられたものが現代にまで伝わったものです。そんなに古くからあった言葉かと驚かれる人もいるでしょう? 古い時代の教えにも現在に通じるものがある。論語から学ぶことはまさに「温故知新」そのものだということにほかなりません。
 今回は論語の教えの中から以下の二点取り上げます

第一の教え:「学ぶことは大切だが、実践してこそ意味がある」。
一人で学ぶより友人との談笑のなかに学ぶことが多い。真に優れた人は評価されなくても不平不満を言わない。
「子曰く、学んでこれを習う、またばしからずや。朋有り遠方より来る。また、楽しからずや。人知らずして怒らず、また、君子ならずや。」
論語は20篇で構成されています。これは第一篇「学而」の最初に出てくる教えです。
私たちが学ぶのは知識をため込むことではありません。実践して目的を達せすることに意味があります。手段を目的化してはいけないとの教えです。また、より広い視野や多様な視点を持つためには友人との対話が不可欠です。一人で悶々と考えるより対話や討論で断片的だったアイデアが体系化され何かを生み出す力になります。一人ではなかなかまとまらなかった事柄が対話に触発され、アイデアが一気に解決策へと進化させたことを誰でも一度や二度経験していると思います。
自分の生き方や生きる目標を鮮明にして生きている人はその都度の批判や評価に一喜一憂しません。私たち人間の成長は木の成長と同じで長い時間をかけて努力して実現できることを知っているからです。君子とは私たちとかけ離れた立派な人ではなく私たちと同じ普通の人にも当てはまることです。

第二の教え:言葉巧みに人当りよく取り入る人は誠実でないから気をつけよ。
「子曰く、巧言令色鮮し仁」
この教えは何かと引用される教えです。短い文ですが、その教えが意味するところは海のように深いと思われます。すべての人間関係に当てはまり、巧言令色によって真実が隠されてしまうことが多いのです。とりわけ、権限を持つ人や優越的地位にいる人、上司にあたる人は気を付けなければいけません。例えば営業マンなどで自分は口下手なので営業に向かないと劣等感すら持っている人がいますがとんでもない誤解です。それは言い訳にすぎません。営業の本質は顧客に誠実さを売り込むことなのです。
人事業務では採用に携わる人は応募者の表層面だけでなく内面のとりわけ深層を見抜く力が人財を得られるか人罪をつかまされるかどうかのカギを握っています。


「コロナウイルス(COVID19)の PANDEMICの教訓」

当初はパンデミックにならないとの憶測もあったのに、パンデミックという難しい言葉が普通に使われるようになったのは今回のコロナウイルスがあまりにも早く広域に全世界に拡大したからだと思います。
前回も述べたのですがつい昨年末から2020年年初にはこれほどの大惨禍が世界を襲うことになろうとはだれも予測していませんでした。
大きくなるにつれて後付けのデマめいた話や責任論が飛び交いました。世界で500万人以上の人々が感染し30万人以上の方々が亡くなりました。現在でもその勢いは衰えていませんが、もう「コロナ後の云々」といった情報が飛び交うようになりました。
政治、経済のそれぞれのレベルで自分の周りの事態が収まりかかったらもう快方に向かっているとの誤解を与えかねない情報が飛び交い始めるのです。今こそ冷静にパンデミックの防衛策について、立場を超えて真実を追求する時ではないでしょうか。問題を先に送ってしまわないことを祈るばかりです。

私たちは今回の歴史的な大惨禍で何を学んだのでしょうか。企業経営の立場から私見を述べたいと思います。

第一は「誰が正しいかでなく何が正しいかを信じる必要がある」ということです。
これは道徳再武装運動(MRA)設立者のフランク・ブックマン博士の言葉ですが、この言葉ほど今回のパンデミックに最適な言葉はないと思います。人には自分の所属する国家や組織の立場や利害に基づいて発言します。必ずしも正しいことを言っているリーダーばかりではありません。何が正しいのかを判断できる情報を一人ひとりが入手することが大切です。

第二は「情報は鵜呑みにするな。必ず複数の情報を検証せよ」ということです。
ご高承の通り、この世の中は一つの情報ですべてを説明できるほど単純ではありません。また、情報源をたどると事実として伝えられていることがいつの間にか誰かに解釈され誇大化されたり矮小化されたりしていることが多々あります。何が正しいか間違っているのかは事実のみが証明できます。企業経営で大けがをするのは大抵事実でない情報に基づいて意思決定することで生じています。

第三は生「情報を自分の眼で確かめよ」ということです。
第三者の情報は往々にして主観的解釈が入っています。例えば新聞記事であったとしてもその記事を鵜呑みにすることはできません、とりわけ所属組織に多大の影響を与える可能性のある戦略情報などは注意しなければなりません。戦略的意思決定に用いる情報は足で稼ぐことが必須条件だと言っても過言ではないでしょう。そして、自分の身の丈を超えているものはその道の一流の専門家の声を必ず聴くことも忘れてはならないことだと思います。


「先人に学ぶ不況時の経営者の心得」

2020年が幕開けてから、コロナウイルスCOVID19が世界中で荒れ狂っています。そのあおりを受けて政治、経済、教育、文化とあらゆる分野で大混乱に陥っていると言っても言い過ぎではないと思います。
米国では有名な百貨店ニーマンマーカスやJCPENNYも倒産が報道されました。倒産まで行かなくても業界を問わず大幅な減収、減益が予想されています。このような厳しい環境下で経営者は何をなすべきなのでしょうか。
先日、友人が不況時を乗り切るための経営者の心得を送ってくれましたのでご紹介+したいと思います。これは、日本の松下電器産業株式会社(現パナソニック)を創業した松下幸之助氏の言葉です。かつては経営の神様と言われ自ら設立したPHPを通じて多くの著作も発表しています。

第一条: 「不況またよし」と考える。
不況に直面して、ただ困った、困ったと右往左往していないか。不況こそ改善、発展へのチャンスであると考える前向きの発想から、新たな道もひらけてくる。

第二条: 原点に返って、志を堅持する。
ともすれば厳しさに流されて判断を誤りやすい不況時こそ、改めて原点に返り、基本の方針に照らして進むべき道を見定めよう。そこから正しい判断も生まれ、断固とした不況克服の勇気と力が湧いてくる。

第三条: 再点検して自らの力を正しくつかむ
ふだんより冷静で念入りな自己評価(自己観照)を行ない、自分の実力、会社の経営力を正しくつかみたい。誤った評価が破綻を招くのである。

第四条: 不退転の覚悟で取り組む
なんとしてもこの困難を突破するのだという強い執念と勇気が、思いがけない大きな力を生み出す。不況を発展に変える原動力は、烈々たる気迫である。

第五条: 旧来の慣習、慣行、常識を打ち破る
非常時ともいえる不況期は、過去の経験則だけでものを考え行動してもうまくはいかない。これまで当然のこととしてきた慣習や商売の仕方を、徹底的に見直したい。

第六条: 時には一服して待つ
あせってはならない。無理や無茶をすれば、深みにはまるばかりである。無理をせず、力を養おうと考えて、ちょっと一服しよう。そう腹を据えれば、痛手も少なくなる。終わらない不況はないのである。

第七条: 人材育成に力を注ぐ
「苦労は買ってでもせよ」というが、不況とはその苦労が買わずとも目の前にあるときである。好況のときにはできない人材育成の絶好の機会としたい。

第八条: 「責任は我にあり」の自覚を
業績低下を不況のせいにしてはいないか。どんな場合でも、やり方いかんで発展の道
はある。うまくいかないのは、自らのやり方に当を得ないところがあるからである。

第九条: 打てば響く組織づくりを進める
外部環境の変化に対する敏感な対応は、よい情報も悪い情報も社員からどんどん上がってくる、お互いの意思が縦横に通いあう風通しのよい組織であってこそ可能となる。

第十条: 日頃からなすべきをなしておく
不況時は特に、品質、価格、サービスが吟味される。その吟味に耐えられるように、日ごろからなすべきことをなしていくことが必要である。

すべての項目に含蓄がこもっています。十分味わっていただければ幸いです。


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