[コロナウイルスが私たち人間に鳴らした警鐘]
かつて中国の世界的に著名な作家魯迅が「どこにも道はなかった。人の往来があるからこそ、そこに道ができる」と述べました。この時は陸地での道の話ですが、今や地球上はありとあらゆるところに道ができています。海や空は言うまでもなく宇宙にまで道ができたといっても言い過ぎではないかもしれません。
こういう中でのコロナウイルのパンデミックの発生です。半年もたたないのにあっという間に全世界に広がりました。今やまだ終息の兆候すら見えていません。
現代社会を象徴する出来事です。これまで科学の進歩が地球を小さくしてきました。その結果、人の往来も幾何級数的に増加しました。
昨今の現況
報道によりますと5月9日現在、世界で3,932,896人が感染し患者数が2,345,470、回復者数1,313,004、死亡者数274,422にも達しています。たった三ヶ月前に誰がこの状況を予想したでしょうか? 最初に発生した中国では、対策が功を奏し感染者88,423人、回復者数81,785、死亡者数4,633をピークにしてや終息の状況ですが先の見えない国が圧倒的に多いのが現状です。
世界保健機構は「世界はWHOにもっと耳を傾けるべきだった」と声明を出しましたが私はこの声明を首肯したいと思います。政治、経済を問わず世界のリーダーの多くは医学に対する知見を持っている人はいません。従ってどの国においても対策が後追いになったり、対応の方向がずれてしまっていたことも否めない事実です。この結果として拡大を防止することができませんでした。
今回の新型コロナウイルスで得た教訓
今回のCOBVⅠD-19で私たちは多くの教訓を得ることができました。私には国家レベルや大都市レベルの教訓を語る資格はないのですが一市井の人間として企業経営の立場から私見をのべたいと思います。
第一は、有事の時と平時の時のリーダーシップを使い分けよということです。
状況によってリーダーシップを使い分けるというのは研修プログラムで語られる話です。今回どのくらいのトップリーダーが有事のリーダーシップを発揮したでしょうか。嵐が去るのをただ待っている船長と同じ行動をとっていたリーダーも多かったのではないでしょうか?
前回、著名な経営学者ドラッカーの言葉を紹介しました。「リーダーの最大の責務は危機を避けるのではなく危機に備えることだ」と。嵐に直面した船長が積み荷を降ろしてでも嵐に立ち向かうリーダーシップが船員を鼓舞するのです。企業トップの場合は何をすべきでしょうか。リーダーシップ発揮の正念場です。
第二は、未知との遭遇時にはその道の権威者の知見に従えということです。
今回の新型肺炎に限らず、企業経営者は常に戦略的意思決定に迫られています。戦略的意思決定は常に未来に向けての意思決定です。すべての情報がそろって意思決定することはありません。必ず部分的不可知の状態での意思決定です。正解があるわけでもありません。リーダー一人の知見で対処するにはリスクが大きすぎます。リーダーの周囲に権威ある専門家チームを形成することは義務でもあります。
今回のようなまさに未知との遭遇時はその道の権威者に従うことがリーダーの責任です。多くの利害関係者を誤らせないことが何よりも重要だからです。
報道によると国家レベルでも権威者を無視して対応の方向を誤ったリーダーがいたとのこと。改めて民主主義あり方を考えさせられたのは私一人だけでしょうか。
第三は、対策は総花ではなく重点事項に絞り込めと行くことです。
「大事なことは五本の指以内に納めよ」というのが私の経験法則です。どんな問題でも真因を突き止めれば五つ以内に収まることが多いからです。さらにその中から選りすぐって三つに納めれば最上でしょう。
根本問題を突き止め、それらの原因を追及して対策を練ることで再発防止や未然防止につなげることの大切さを今回のコロナ問題が教えてくれました。
表層的で、的外れな対策を講じても費用が掛かるだけで一向に解決できません。