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[コロナウイルスが私たち人間に鳴らした警鐘]

かつて中国の世界的に著名な作家魯迅が「どこにも道はなかった。人の往来があるからこそ、そこに道ができる」と述べました。この時は陸地での道の話ですが、今や地球上はありとあらゆるところに道ができています。海や空は言うまでもなく宇宙にまで道ができたといっても言い過ぎではないかもしれません。
こういう中でのコロナウイルのパンデミックの発生です。半年もたたないのにあっという間に全世界に広がりました。今やまだ終息の兆候すら見えていません。
現代社会を象徴する出来事です。これまで科学の進歩が地球を小さくしてきました。その結果、人の往来も幾何級数的に増加しました。

昨今の現況
報道によりますと5月9日現在、世界で3,932,896人が感染し患者数が2,345,470、回復者数1,313,004、死亡者数274,422にも達しています。たった三ヶ月前に誰がこの状況を予想したでしょうか? 最初に発生した中国では、対策が功を奏し感染者88,423人、回復者数81,785、死亡者数4,633をピークにしてや終息の状況ですが先の見えない国が圧倒的に多いのが現状です。
世界保健機構は「世界はWHOにもっと耳を傾けるべきだった」と声明を出しましたが私はこの声明を首肯したいと思います。政治、経済を問わず世界のリーダーの多くは医学に対する知見を持っている人はいません。従ってどの国においても対策が後追いになったり、対応の方向がずれてしまっていたことも否めない事実です。この結果として拡大を防止することができませんでした。

今回の新型コロナウイルスで得た教訓
今回のCOBVⅠD-19で私たちは多くの教訓を得ることができました。私には国家レベルや大都市レベルの教訓を語る資格はないのですが一市井の人間として企業経営の立場から私見をのべたいと思います。
第一は、有事の時と平時の時のリーダーシップを使い分けよということです。
状況によってリーダーシップを使い分けるというのは研修プログラムで語られる話です。今回どのくらいのトップリーダーが有事のリーダーシップを発揮したでしょうか。嵐が去るのをただ待っている船長と同じ行動をとっていたリーダーも多かったのではないでしょうか?
前回、著名な経営学者ドラッカーの言葉を紹介しました。「リーダーの最大の責務は危機を避けるのではなく危機に備えることだ」と。嵐に直面した船長が積み荷を降ろしてでも嵐に立ち向かうリーダーシップが船員を鼓舞するのです。企業トップの場合は何をすべきでしょうか。リーダーシップ発揮の正念場です。

第二は、未知との遭遇時にはその道の権威者の知見に従えということです。
今回の新型肺炎に限らず、企業経営者は常に戦略的意思決定に迫られています。戦略的意思決定は常に未来に向けての意思決定です。すべての情報がそろって意思決定することはありません。必ず部分的不可知の状態での意思決定です。正解があるわけでもありません。リーダー一人の知見で対処するにはリスクが大きすぎます。リーダーの周囲に権威ある専門家チームを形成することは義務でもあります。
今回のようなまさに未知との遭遇時はその道の権威者に従うことがリーダーの責任です。多くの利害関係者を誤らせないことが何よりも重要だからです。
報道によると国家レベルでも権威者を無視して対応の方向を誤ったリーダーがいたとのこと。改めて民主主義あり方を考えさせられたのは私一人だけでしょうか。

第三は、対策は総花ではなく重点事項に絞り込めと行くことです。
「大事なことは五本の指以内に納めよ」というのが私の経験法則です。どんな問題でも真因を突き止めれば五つ以内に収まることが多いからです。さらにその中から選りすぐって三つに納めれば最上でしょう。
根本問題を突き止め、それらの原因を追及して対策を練ることで再発防止や未然防止につなげることの大切さを今回のコロナ問題が教えてくれました。
表層的で、的外れな対策を講じても費用が掛かるだけで一向に解決できません。


新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)で考えること―今こそ危機管理を見直そう

新型コロナウイルスが世界で猛威を振るっています。春節中は湖北省や武漢でローカルな現象だと思われていたのがあっという間に上海をはじめとする周辺に拡大し、さらにイランやイタリアに飛び火したと思ったらヨーロッパ全域にまで広がっています。南北アメリカ大陸にもアフリカ大陸にも飛び火しました。いまや地球規模の大災害へとなってしまいました。各国のリーダーは国境を閉鎖し自国に災禍が及ばないように大わらわです。
世界保健機関の事務局長テドロス氏によると、昨年12月末に中国で流行が始まってから世界の感染者が10万人となるまでにかかった日数は67日だったが、10万人から20万人となるまでには11日、20万人から30万人となるまでには4日しかかからなかった。
 テロドス氏は、外出禁止などを通じて人々と物理的な距離を取る措置はウイルスの拡大を抑え時間を稼ぐためには重要だが、「これらは防衛策であり、われわれはこれで勝つことはできない」と警告。
「(ウイルスに)勝つためには、積極的かつ焦点を絞った戦略でウイルスを攻撃する必要がある」と述べ、感染疑いのある患者は全員検査し、感染の確認された患者は全員を隔離・治療し、感染者との濃厚接触者は全員を追跡・隔離することを改めて呼び掛けたと報じています。

このような衝撃的な現象が世界的に起こるとはつい3か月前に誰が予想したでしょうか?
危機は避けることでなく、備えることである―ドラッカー
私は今日のこの状況に直面してかの有名な経営学者ドラッカーの言葉を思い出しました。「リーダーの最大の任務は危機を予知することである」「それは危機を避けるためでなく、危機に備えるためである」と同氏が述べているように、確かに私たちは決して危機を避けることはできません。予知することも難しいでしょう。今回のパンデミックに関して言えば誰も予知できなかったと言っても言い過ぎでないでしょう。
ここで大切なことは誰でも危機に備えることができるということです。
よくよく考えてみますと危機はこれまでにも周期的に訪れています。大小を問わず私たちの身近にあるのが危機です。危機が過ぎると忘れてしまうことが多いのも危機の特徴かもしれません。
そして、それらの危機を克服できた企業のみが生き乗ってきたことも事実です。
私たちを取り巻く経営環境の中で最大の脅威は“見えざる危機”が忍び寄って来ていることです。この見えない危機の襲来こそ、現在の私たちを取り巻く経営環境の大きな特徴です。それは災害リスクであるかもしれませんし、人為的なリスクであるかもしれません。潜在的リスクが顕在化したとき、危機を克服できる組織と克服できない組織に分かれます。それはなぜでしょうか。
観点を変えて、私たち人間に当てはめて考えて見ます。病気にかかり易いのは体力の衰えた弱体な人です。普段から体を鍛えるのではなく体力を消耗ばかりしている人が病気になりやすいのです。同様に組織においても見えない危機が来襲しても、危機を克服できる組織とできない組織に分かれます。組織に活力がっていれば、よほどのことがない限り危機を克服できます。そして、危機を乗り越えたことより組織に自信がつき体質が強化されていくのです。企業体質を継続的に強化してい行くことがいかに大切か危機に遭遇した時に実感できるのではないでしょうか
これからの貴社はこの「危機を乗り越えること」をおいてほかに生き残る道はないと思われます。


私の夢―正銘にとって2020年代は?

新しい年代2020年代(decade)の始まり
今年は2020年代の幕開けの年です。干支も子年で始まる年でもあります。偶然とはいえ何かの縁を感じさせてくれる一致となりました。
これまで私たちは時代を10年ごとに区切ることを習わしとしてきました。そして、その特徴をとらえてその時代にふさわしい名称をつけて意義づけました。私は2020年代を「正銘が躍動する年代」にしたいと考えています。
正銘は2012年上海で開業以来、今年で8年目を迎えます。
当初は通関物流事業と財務コンサルティング事業でスタートしましたが2017年人事労務事業の本格的展開をはじめ三本柱で事業展開してきました。
今年は2020年代の始まりという時代の区切りの年を迎えるにあたって、その幕開けにふさわしい大いなる羽ばたきの年にしたいと心を新たにしているところです。
前回もこのブログで取り上げましたが2020年の単年度の事業方針は以下の通り取り組みます。

第一は人事労務事業を深耕し主力事業へと進化させる。
正銘が人事労務事業に本格的に進出してから3年経過しました。進出した3年前はちょうど労務管理全盛時代から人事管理の時代への分水嶺に当たる年だったと思われます。時あたかも華東地域は人件費の高騰と労働力不足時代を迎えようとしていました。加えてその流れは黄河のごとく濁流かつ急流でもありました。
多発するドロドロした労務問題の後処理に翻弄されていた各企業は一気に人手不足に翻弄されるようになりました。各企業も人事の量から質への転換を迫られるようになったのです。そこで、たちまち、人事労務の専門部署の設置が要請されるとともに専門の人事担当者の配置が求められるようになりました。
労務管理時代は大量に採用し大量に離職させても大きな問題にはなりませんでした。労務管理は集団管理ですから人事評価などの個別人事管理制度は必要ではありませんでした。
社員の会社への貢献度を把握していませんので勤続年数で多少の差はあるものの給与や賞与もほぼ平等でした。人材を育てる必要もなければ人事を取り扱う部署も必要がありませんでした。
正銘が人事労務事業を本格稼働させたくらいの時期から、これらの一連の環境は様変わりしました。そこに正銘の事業機会があったことも事実です。既存事業の経営で振り回されていた私は通関物流事業主力では将来リスクが高すぎると思い人事労務事業進出を決意しました。
このあたりの心境は以前にもこのブログで述べましたので割愛させていただきますが周りから理解されないこともあり大変な思いをしたことが今では懐かしい思い出となっています。
人事労務の本格展開をしてからの3年間を振り返ってみますと新しい事業を軌道に乗せるには並大抵の努力では難しい、鉄の意志と信念がないと成功は覚束ないと思います。しかしながら、事業の定義を見直さなかったら既存事業の陳腐化とともに企業が没落するだけです。2020年は大事に育ててきました三年前に産んだ子をいよいよ大きく羽ばたかせるせる年だと認識しています。人事労務に関するノウハウも実績も蓄積されました。あとは行動するだけです。

第二は営業力を強化し新規エリア、新規顧客を積極的に開発する。
専門能力を高めるには狭い範囲だけれど深く掘り下げることが大切だと言われます。2020年は人事労務を専門事業として深堀する代わりにこれまでの活動エリアを上海やその近郊エリアに限定せず活動地域を拡大して取り組みます。
コンサルティング事業はお客様に来ていただくビジネスではありませんのでお客様のところへ出かけてゆくことが大切です。マーケティングにはご案内のように4P4Cという考え方が普遍的に定着しています。ちなみに4Pとは「商品開発」、「価格設定」、「流通」、「販促」であり、4Cとは「顧客価値」、「経費」、「顧客利便性」、「コミュニケーション」です。
この考えで当社を振り返ってみますと4Pでは「流通」(Place)と「販促」(Promotion)、4Cでは顧客利便性(Convenience)とコミュニケーション(Communication)に課題があると認識しています。新事業成功の要諦の一つに積極的なマーケティング活動がありますがこの点も欠けていたのかなとこれまでの活動を反省しています。今やっと事業基盤が確立されましたので積極的マーケティング活動を展開する絶好のタイミングが訪れたと満を持して2020年度に備えているところです。

第三は即戦力となる人材を確保しチーム力を強化する。
企業は人なりとは言い古された言葉ですが、もともとコンサルティング事業は人以外の資産を必要としない事業です。とりわけ正銘のようにこれから成長してゆく若い企業では人材の確保が企業全体の成否を左右します。加えて、企業が抱える問題もますます複雑化、多様化、高度化してきています。これらのお客様のニーズに応えるためには深い専門性と柔軟な思考力、独創的な発想が求められます。さらにいかに専門性が深くても個人で対応するのには限界があります。一匹狼で通用する時代もありましたが個人プレーの時代は去りました。プロジェクトチームで常に団体戦で戦える人材が必要です。
また、お客様の不可能を可能にするのがコンサルティング会社のであり、使命でもあります。
それだけに、コンサルティング会社の業務ほど思考力が求められ、また思考力が鍛えられる仕事はないと思います。創造力を発揮してお客様の困っている問題を解決して喜ばれる顔を見るときほどこの仕事をしてよかったなあと感じる時はこれまでのすべての苦労が吹き飛ぶ瞬間です。このような瞬間を共有できる同志を心より歓迎します。

2020年代の私の夢
次に、冒頭に述べましたように新しい時代を迎えるにあたって私の夢を述べてみたいと思います。


第一の夢は正銘を中国有数の経営人事の専門コンサルティング会社に育て上げることです。
華東地域では、時代は完全に集団的管理から個別的人事管理へと加速しています。この流れに乗れない企業は遅かれ早かれ窮地に追い込まれることは必至です。欧米をはじめとする先進国がたどった道を私たちも今辿ろうとしているのです。
人事労務事業にもいろいろな領域がありますが、正銘の目指すところは組織開発と人事企画と人材育成の三つを事業領域とする総合的でなく経営人事の専門コンサルティング会社へと進化させることです。
「組織開発」とは何か?組織には命令系統や職務分掌を明示する組織機構図、組織を動かすための仕組みや規則、それらを実際に機能させる人材の三つの要素が必要です。これらはそれぞれ組織のハードウエア、ソフトウエア、ヒューマンウエアと呼ばれています。
これら三つの要素がうまくかみ合って成果を出せるように組織診断し、組織診断カルテを作成し、診断カルテに従って問題解決する一連の活動を行うことが組織開発です。
「人事企画」は組織のソフトウエアに相当する分野です。人事諸制度や諸規則をお客様のオーダーメイドで企画立案し提案します。具体的には能力本位の人事管理諸制度を構築します。基本的には社員等級制度、人事評価制度、社員処遇(給与・賞与・福利厚生)制度、社員登用制度、人材育成制度、目標管理制度の六つの制度で構成されます。
「人材育成」はヒューマンウエアに属する分野で組織機構が最高度に成果を発揮できるように人的能力を整えることです。「組織は戦略に従う」「組織は人事で妥協させてはならない」という格言があります。前者は著名な経営学者アルフレッド・チャンドラーが実践研究の中から導き出した法則です。その意味するところは組織というのはあくまでも会社の経営戦略を実現するための手段であるということです。
また、「組織は人事で妥協してはならない」という格言は人事に対する戒めの言葉です。人事は本来企業の発展を確保するために存在するにもかかわらず、意図するしないに関わらず発展を阻害したり、人事業務が停滞したのでは人事の役割を果たせないばかりか存在意義に汚点を残すことになります。いくらきれいな組織図や的確な諸規則を作ったとしてもそれを運用する人の能力が備わっていなければすべて絵に描いた餅になってしまうからです。
私はこれらを専門とする強い人事コンサルティング企業を構築します。あえて「強い」と言葉を挿入したのは私の事業哲学でもあります。正銘を大きい企業にするというのではなく正銘にしかできない企業を作り上げることです。量より質を追求する事業経営を続けます。

第二の夢は人事労務コンサルティング会社の経営者として成功すること
 私は2020年代に50歳代となります。日本への6年間の留学経験を経て、ビジネス経験もやがて30年になろうとしています。上海正銘を任されて8年になろうとしています。この8年を振り返ってみますと経営者としては未熟で反省することばかりです。
ビジネスマンとしては十分な経験を積むことができましたが経営者としては2020年代が勝負の年代になります。
 かつてアメリカ人で成功哲学を確立した人がいました。その人の名前はポール・J・マイヤーと言います、彼は保険のセールスマンをはじめ多くの企業でセールス活動を行い、ほぼすべてで成功することができました。通常の人はそこで成功者としてハッピーエンドとなるところですがポール・j・マイヤーの場合はこの後からが彼の本当の成功物語が始まるのです。P・J・マイヤーは彼のセールスマンの成功ノウハウを体系化します。そして、理念編と実践編にマニュアル化するとともに教育プログラムを開発するのです。さらにそのノウハウを教材とした成功哲学を啓蒙啓発する会社を設立し人材育成を始めるのです。これがまた大成功し、全米はおろか世界にもナポレオン・ヒルとともに成功哲学者として名前が知られるようになり、経済的にも富裕者としての成功を収めるのです。
彼の「成功」の定義は「成功とは前もって目標を設定し、それを一つひとつ達成してゆくこと」というものです。かれは、また「あなたの掲げた目標は必ず実現する」とも言っています。
 P・J・マイヤーの成功哲学の特徴は経済的側面だけでないことです。精神的側面も経済的側面と同じように重要であると語っています。
 長々とP・J・マイヤーの成功哲学を引用してきましたが私は彼の成功哲学に共感し2020年代の自分の経営者としての成功を目標として掲げそれを一つ一つ達成していきたいと考えているからです。

第三の夢は人事労務サルティングの実績をまとめ著作として中国と日本で出版すること。
この目標はP・J・マイヤーの影響かもしれません。
自分の成功を人占めするのではなく成功を多くの人と分かち合いたいというのが、彼が第二の成功をさせた人材育成事業でした。しかも経済的にも精神的にも成功を収めることができました。
私達正銘も毎日のコンサルティング活動を通じ多くの問題解決や調査活動を通じて多くの新しい事実に遭遇します。これを私たち正銘に閉じ込めておくだけでは宝の持ち腐れです。多くの人に知ってもらい共有することによって形式知としての価値を生むことになると信じています。
今はまだ初めて時間が短く共有するだけのケースも足りないと思っています。2020年代の半ばには数多くのケースが蓄積できると思われます。人事管理の発展に貢献できる問題解決事例を必ず世に問える時期が来ることを信じています。

結びに
2020年代の年頭に当たり私の三つの夢を述べました。これは私の目標宣言でもあります。
目標実現の第一歩は「設定した目標を鮮明に頭の中に描くことだ」と先に紹介したP・J・マイヤーも述べています。これからの10年は私の脳裏から片時も離すことなく目標達成の実践行動に取り組みたいと固く心に誓いたいと思います。


「2019年も残り10日余りとなりました

月並みですが本当に「光陰矢の如し」です。つい最近2019年を迎えてと思ったらもう2020年が間近に迫ってきました。前回のブログでは2019年を振り返りましたので今回は2020根を展望したいと思います。
まず、中国と日本の共通の文化である干支から話を始めたいと思います。来年の干支は庚子(かのえね)です。日本では来年の2020年は「令和」になって初めての年明けになりますね。干支も最初の「子(ね)」で迎えることになりました。
それでは来年はどんな年になるのでしょうか。干支から見た2020年は「命の始まり」という意味を持つ「子」と変化の予兆という意味を持つ「庚」と組み合わされる2020年の「庚子」は、変化を求めて新しい事にチャレンジするのに良い年になると言われています。
それにあやかって正銘も「積極的に挑戦する年」と位置付けたいと思います。

2020年の事業方針
2020年の事業方針を以下の三点とします。





方針1.人事労務事業の深耕と主力事業への進化
 正銘が人事労務事業に本格的に進出してから3年経過しました。進出した3年前はちょうど労務管理全盛時代から人事管理の時代への分水嶺に当たる年だったと思われます。
時あたかも華東地域は人件費の高騰と労働力不足時代を迎えようとしていました。加えてその勢いは黄河のごとく濁流かつ急流でもありました。
労務問題の後処理に翻弄されていた各企業は一気に人手不足に翻弄されるようになりました。各企業も人事の量から質への転換を迫られるようになったのです。そこで、たちまち、人事労務の専門部署の設置が要請されるとともに人事担当者の配置が求められるようになりました。
労務管理時代は大量に採用し大量に離職しても大きな問題にはなりませんでした。労務管理は集団管理ですから人事評価などの個別人事管理制度は必要ではありませんでした。給与や賞与もほぼ平等主義でした。人材を育てる必要もなければ人事を取り扱う部署も必要がなかったのです。
正銘が人事労務事業を本格稼働させてからのこれらの一連の環境は様変わりしました。そこに正銘の事業機会があったことも事実です。既存事業の経営で振り回されていた私は通関物流事業のみでは将来リスクが高すぎると思い人事労務事業進出を決意しました。このあたりの心境は以前にもこのブログで述べましたので割愛させていただきますが周りから理解されないこともあり大変な思いをしたことが今では懐かしい思い出となっています。
 人事労務の本格展開をしてからの3年間を振り返ってみますと新しい事業を軌道に乗せるには並大抵の努力では難しい、鉄の意志と信念がないと成功は覚束ないと思います。しかしながら、事業の定義を見直さなかったら既存事業の陳腐化とともに企業が没落するだけです。2020年は大事に育ててきました三年前に産んだ子をいよいよ大きく羽ばたかせるせる年だと認識しています。ノウハウも実績も蓄積されました。あとは行動するだけです。

方針2.営業力の強化で新規エリアと新規顧客の積極的開発
 専門能力を高めるには狭い範囲だけれど深く掘り下げることが大切だと言われます。2020年は人事労務を専門事業として深堀する代わりにこれまでの活動エリアを上海やその近郊エリアに限定せず活動地域を拡大して取り組みます。
コンサルティング事業はお客様に来ていただくビジネスではありませんのでお客様のところへ出かけてゆくことが大切です。
マーケティングにはご案内のように4P4Cという考え方が普遍的に定着しています。
ちなみに4Pとは「商品開発」、「価格設定」、「流通」、「販促」であり、4Cとは「顧客価値」、「経費」、「顧客利便性」、「コミュニケーション」です。この考えで当社を振り返ってみますと4Pでは「流通」(Place)と「販促」(Promotion)、4Cでは顧客利便性(Convenience)とコミュニケーション(Communication)に課題があると認識しています。
新事業成功の要諦の一つに積極的なマーケティング活動がありますがこの点もかけていたのかなとこれまでの活動を反省しています。
今やっと事業基盤が確立されましたので積極的マーケティング活動を転嫁する絶好のタイミングが来たと満を持して2020年度に備えているところです。

方針3.即戦力となる人材確保とチーム力の強化
 企業は人なりとは言い古された言葉ですが、もともとコンサルティング事業は人以外の資産を必要としない事業です。とりわけ正銘のようにこれから成長してゆく若い企業では人材の確保が企業全体の成否を左右します。
加えて、企業が抱える問題もますます複雑化、多様化、高度化してきています。これらのお客様のニーズに応えるためには深い専門性と柔軟な思考力、独創的な発想が求められます。さらにいかに専門性が深くても個人で対応するのには限界があります。一匹狼で通用する時代もありましたが個人プレーの時代は去りました。プロジェクトチームで常に団体戦で戦える人材が必要です。
コンサルティング会社の業務ほど思考力が求められ、また思考力が鍛えられる仕事はないと思います。創造力を発揮してお客様の困っている問題を解決して喜ばれる顔を見るときほどこの仕事をしてよかったなあと感じるときはこれまでのすべての苦労が吹き飛ぶ瞬間です。このような瞬間を共有できる同志を心より歓迎します。


新しい人事制度をスムーズに導入し定着させるには

新しく人事制度を改革し新制度を導入定着させるには容易なことではありません。私たち正銘は上海で本格的に日系企業の人事制度改革に取り組んでから三年が経ちました。まだ三年しかたっていないのかという思いと三年もたったのかという思いが交錯しています、
というのもこの華東地域における日系企業を取り巻く経営環境がドッグイヤー的で劇的に変化しているからです。ある企業の経営者の言葉です。これまでは100人採用するのに1000人の応募者があった。ところが最近では10人採用するのに三か月もかかる。だから人を辞めさせない人事をしないといけない。同席していた人事担当者もこれからは人財育成の時代だと語っていたことが印象的でした。
これまでは大量に採用して大量にやめさせてしまう。荒っぽい労務管理がまかり通っていました。社員の定着率が50%を切る企業は珍しくありませんでした。社員を労働者とひとくくりにして集団管理するのが労務管理です。極端に言うと会社は社員の肉体的労働力をのみを必要としていたのであって社員の個別の頭脳労働を必要としていませんでした。能力という概念がそもそも存在していなかったのです。組織的に言っても財務のない企業はないのですが独立した人事担当部署がない企業がほとんどでした。労務の仕事と言えば勤怠管理か給与計算しかなかったからです。
ところが先に述べましたように地殻変動ともいうべき変化が華東地区の企業を直撃したのです。その最たるものは人件費の高騰と人材不足でした。これらの変化を先取りして人事革新に取り組んでいる企業も少なからずあります。正銘が人事管理に本格的に取り組んでからこのような企業を支援してきました。昨年度からの取り組み事例を紹介します。
正銘の人事革新支援は次の四つのステップに区分できます。
第一ステップは調査分析です。社員の意識を調査します。
第二のステップは制度企画です。最適な制度を企画します。
第三のステップは制度導入です。制度を実際に適用します。
第四ステップは制度定着です。制度を馴染ませ習慣化します。
今回取り上げますのは第三ステップと第四ステップの実際例です。昨年は第一ステップと第二ステップを取り組みました。正銘と企業が信頼関係の下、定期的な進捗会議を開催して制度企画に取り組んできました。
◆新しい人事制度導入に対する社員の反応
新しい制度の導入には社員から三つの反応が示されました。

①改革そのものに対する不安がありました。
それは改革そのものが未体験だからです。未知なことばかりだからでもあります。
人事というのは社員にとり最も身近でなことですが、反面最も不可解なことでもあるのです。
②変化への抵抗感がありました。
人間はだれしも新しいことに対する抵抗本能があります。これは保守本能の裏返しでもあります。現状に不満を持ちながらも現状維持の安住本能も頭を持ち上げてきます。一見矛盾するようですが機械でない人間らしさが表出したのでしょう。これまでのように決定事項のみを知らされ、事項を強制されることに対する本能的反発もありました。

③硬化した社員の気持ちを態度変容させる切っ掛けがありました
第一の切っ掛け「2対6対2の原則 
社員の理解と協力を得るためのワークショップを開催することになり、最初の会合で
この原則通りの社員の態度が確認できました。積極的に進める人2割、どちらでもない人6割、反対の人2割と見事理論通りに分かれました。この区分の態度の特徴をとらえて対応することにより次第に和らいできました。
第二の切っ掛け「話せばわかる」
  誰でも疎外されたり無視されたりすることを嫌います。無視されれば反発したくなります。相談を受けると真剣にその問題を考えて自分なりの解答を寄せてくれます。ワークショップはその最適な舞台となりました。
第三の切っ掛け「参画こそ最高の良薬」
  経営問題を含め人事などの改革は社員に参画を求めることは決定事項だけでなく決定後の運用を効果的に進めるうえでとても有効です。ワークショップは参画意識を醸成する最高の方式であると思われます。
 
◆2019年コンサルティング活動を通じて得た教訓

①今日の現状を変えるには過去を清算しなければならないということです。
第一は悪しき慣行の原因究明することは絶対条件です。
 第二は悪しき慣行を是正するにはその慣行が継続した同じ時間必要します。
第三は自分以外の誰かが悪いという他責意識が変化受容の足かせになっていることも修正しないといけないと思います。

②現象面の裏にある本質を見抜かなければならないことは重要です
人間はすべて意識的であれ、無意識的であれ筋書きのないドラマを演じています。事実を覆い隠すために、自分をよく見せるために演技しています。ルール違反は会社や上司がどこまで許容されるのか部下は常に試しています。それが拡大してルールと乖離が発生して慣行化し習慣化して悪しき慣行になるのです。習慣化する前に見て見ぬふりをせず断ち切ることが大切です。前任者の認めたものでもそのまま踏襲できるものとできないものがあります。理にかなったものでなければ敢然と断じて認めないよう直ちに修正すべきです。

③現場は常に経験法則の積み上げにによって検証されてゆきます
誰が正しいのかでなく何が正しいのかを考えることが多雪です。誰が正しいかで考えると情に流されます。何が正しいかで考えると理に適った行動をとることができます。それと現時点で正しいことはいつまでも続くとは限りません。時代が変わると正しいことでも正しくないことに変わります。正しいと信じて正しくない行動をとり続け企業を没落させた事例はいくつもあります。
また、机上の理屈は現場で通用しないというのも嘘です。優れた理論こそ現場で実践し経験法則にまで磨き上げることが大切なのです。

3.2019年のコンサルティング活動を通じて成果につながったこと
①ワークショップで社員を巻き込んで新制度の中身を検討できたことです
今年度の成果は何といってもワークショップで個人も集団も態度変容を実現できたことです。人は討議を通じて頭が柔軟になり創発的態度をとるように変身する。これは脱皮というよりぜい変に近いと思います。甲殻類は殻を脱皮して成長しますが昆虫はさなぎが蝶となるよう変体します。人の態度も変体はしませんが全く別人になったように変わることがあります。そのような様子を私はあえてぜい変と呼びたいと思います。

②新制度の理解が深まるとともに参画意識が格段に進んました
ワークショップの主たる目的ではありませんが、ワークショップを通じて社員の部門を超えた横のつながりが強化されました。講義形式の通常の研修ではこのように集団は進化しません。ワークショップならではの特徴です。集団凝集力が高まった何よりの証拠です。 また、自分だけでなく職場全体に浸透させる機運も高まりました。

④自社だけでは制度改革が進捗しにくいことを顧客企業に理解してもらえました
緊急でないが重要な事項が先送りされることが実務の社会で多発するが改革への取り組みであることが分かってもらえました。
緊急かつ重要事項が日々に降り注ぐ中で緊急でない業務は先送りされ、何も手が付けられないまま次年度を迎えることがどの企業でも見られることです。
社内で人事企画ができる社員がいないので問題意識はあっても具体的に着手できないままになっていたとかいくつかの理由付けがなされていますが会社自体に推進力が働かないのです。

2019年のまとめとして新制度を絵に描いた餅に終わらせず導入定着の取り組みに深耕できたことが大きな成果だったと思われます。人事制度の改革を受注したら導入定着まで支援するコンサルティング企業が少ないが正銘は定着するまで責任を持つのが特徴です。
2019年度もまさにこの取り組みを行いました。理解することと実践することは全く異なるので根気よく指導することがとても大切です。
長らく浸りきった慣習を変えることは至難の技です。しかしながら、不可能なことはなく必ず変化するという信念の問題であることがよく認識できた2019年度の活動でした。


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