銘・精選

NEWS1 上海に5G電話ボックス登場 懐かしい街の風景を有効活用

世界初の公衆電話ボックスは1878年に米国のサンフランシスコに登場した。携帯電話が普及するにつれて、上海の街角にある公衆電話は利用率が大幅に低下していった。そして今、昔日の面影を残す街の風景の一部がモデル転換の道を歩んでいる。

公衆電話をどうやって有効に利用するか?

上海の淮海中路と思南路との交差点の近くに、赤い公衆電話ボックスがある。見た目は昔のままだが、内部では新しい「化学反応」が起きており、5G小型基地局が設置されて、周辺エリアは5Gネットワークの質が目に見えて向上した。

このボックスのところで作業員が5Gスマートフォンを取り出して実測する様子を見ると、速度テストソフト「スピードテスト」を開いてスタートボタンを押すだけで、数秒後には結果がわかり、下りは830Mbps、上りは60Mbpsだった。何度かテストして、5Gネットワーク速度は800Mbps前後で安定しており、4Gネットワークの10-20倍前後になることがわかった。ここで高精細の動画を見ると、バッファリングによるタイムラグやフリーズが少しもなく、画質は非常に精細だった。

中国電信上海公司の関係者は、「現在、電話ボックスに5G屋外基地局を設置する事業を始めたところで、淮海中路と思南路の交差点のこの電話ボックスを含め、第1弾として電話ボックス数十ヶ所の5G改修を進める」と述べた。

こうした5G電話ボックスは主に上海市の中心エリアに分布し、今後このエリアでは、街をブラブラしながら、5Gの高速ネットワークを利用することができるようになる。上海電信は年内に電話ボックス100ヶ所以上の5G改修バージョンアップを終えるとしている。

3Gと4Gに比べて、5Gは相対的に高い周波数を利用するため、より多くの基地局を建設しなければ、良好なネットワークのカバー状態を実現することができない。しかし街の中心エリアで、適切な5Gアクセスポイントを見つけるのは簡単なことではない。上海電信は、「既存の電話ボックスを利用して、ここに小型基地局を設置すれば、5G屋外広域アクセスポイントが十分にカバーしていない地域を補完して、人気エリアの5G信号の切れ目ないかバーを実現するための良策だといえる。電話ボックスという街の風景が5G時代に新たな役割を発揮することにもなる」と説明した。

公開された資料によれば、2019年4月現在、上海には無人の電話ボックスが5443ヶ所あり、中環路以内の主要道路の交差点、パブリックスペース、商業施設、公共サービス施設周辺に設置されている。上海電信の関係責任者も、「移動通信業務の普及にともなって、電話ボックスを利用する人がますます少なくなり、通話料収入もますます低下している」と明かした。

同責任者は、「しかし、電話ボックスは市民の日常の通信手段というだけでなく、110(警察)や119(消防)などの緊急電話をかけるときに必要になるため、すべて撤収というわけにはいかない。基礎的電気通信役務を担う事業者として、当社の未来の電話ボックス発展計画は引き続き社会の普遍的サービスの責任と義務を維持・履行すると同時に、イノベーションモデルを加え、電話ボックスの良好な発展を推進していく」と述べた。

これまでに上海電信は電話ボックスのWiFi改造を終えている。「ChinaNet WiFi」の標識のある電話ボックスの近くでは、中国電信のWiFiネットワークを利用することができ、一時的なネット接続のニーズに応えている。同時に、市民は緊急時に公衆電話で110、119、120(救急車)などの緊急電話を無料でかけることができる。

NEWS2 東京五輪延期 困難な「経済的問題」をどうするか

国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長は今週初めに、「開催が1年延期された東京五輪は2021年に開催できなければ、中止になるだろう」と初めて中止に言及した。その背後にある、延期がもたらした困難な「経済的問題」が、避けることのできない重要な要因になっていることは間違いない。新華社が伝えた。

今年4月下旬、IOCと東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会は延期による追加負担の問題で見解に食い違いが生じた。IOCの最新の声明では、東京五輪延期を含む新型コロナウイルス感染症の影響への対応で最高8億ドル(1ドルは約107.8円)を計上するとし、東京五輪組織委はコストを試算中とした。

IOCが4月20日に公式サイトで先手を打って情報を流したのも、5月14日に最高8億ドルを支援するとしたのも、自分たちが引き受ける負担額を早めに確定するための非常に積極的な動きだといえる。その一方で、日本側の動きは遅く、追加負担がいくらになるかもまだ公表していない。

東京五輪組織委の森喜朗会長は4月に、「今はまだ追加負担がどれくらいになるか確定できない。4千億円という人もいれば、5千億円という人もいて、現在、組織委とIOCもいろいろな憶測に翻弄されているところだ。実際、各方面がしっかり腰を据えて追加でいくら必要なのか細かく計算する必要がある」と述べた。

IOCのラナ・ハダド最高執行責任者(COO)は、「感染症と東京五輪延期の影響により、ワールドワイドオリンピックパートナーのスポンサー料を納める期間が延長される可能性がある。しかし、このことはまだIOCにそれほど大きな影響を与えておらず、スポンサー企業は今でも『全力で応援』してくれている」と述べた。

2018年平昌五輪から20年東京五輪までの期間のワールドワイドオリンピックパートナーは14社に上る。報道によれば、この期間に20億ドル以上の収益をIOCにもたらすはずだという。

感染症の影響で、ワールドワイドオリンピックパートナーの中には経営が厳しくなるところも出てきた。たとえば最近新たに契約を結んだ民泊サービスのエアビーアンドビーは5月初め、「感染症により世界で観光客数が急激に減少したため、社員の約25%をリストラする」と発表した。日本のトヨタ自動車は20年度の営業利益は79.5%減と大幅に減少すると予想する。

しかし影響を受けていないワールドワイドオリンピックパートナーもいて、たとえば阿里巴巴(アリババ)集団は今月初めに、20年度通年と第4四半期の業績は全面的に予想を上回るだろうと発表した。米消費財大手のP&Gは先月、製品の純売上高が最近になって急上昇していることを明らかにした。

英スポーツマーケティング企業のツー・サークルズの最新予測によれば、感染症の影響で、今年の世界のスポーツへのスポンサー料は前年に比べて170億ドル以上減少し、前年同期比37%減少するという。

この予測はさらに、「感染症により新たなスポンサー契約の多くが一時的にストップし、既存の契約の多くも企業のコストカットで終了することになる」との見方を示した。

NEWS3 中国の「帳簿」チェック どのように支出を抑えるか?

2020年には貧困脱却で勝利を収めるという着実な任務がある一方で、新型コロナウイルス感染症の打撃の中で雇用を維持し国民生活を安定させるという着実なニーズもあり、さらに実体経済の負担を軽減するため、内需を拡大し、イノベーションを促進し、弱点分野を補強することも必要だ……どの任務も達成しなければならないが、それでは資金はどこで、どのように使えばよいだろうか。特殊な年にあって、これらはどれも「国の帳簿」をしっかり管理する上で答えを出さなければならない問題だ。ここで財政予算報告を見て、帳簿の中身をチェックしてみよう。中央テレビ網が伝えた。

感染症の打撃を受け、今年に入ってから、中国の財政収入は増加率が鈍化した。今年の全国一般公共予算収入は18兆元(1元は約15.1円)をやや上回る程度で、全国一般公共予算支出は24兆7800億元に達する見込みだ。収入と支出をみると、支出が収入より6兆7千億元多い。財政収支の圧力に対処するため、20年の中国は積極的な財政政策がさらに積極的なものになり、「足し算」もあれば「引き算」もある。そして最も注目されるのは、2つの「1兆元」が増加することだ。

2つの「1兆元」 特殊な深い意義は何か?

20年予算報告によると、今年は財政部(財務省)が赤字率を前年比0.8ポイント上昇の3.6%に引き上げることを提起した。こうすれば1兆元の財政資金が増加することになる。それだけではなく、今年の中国は感染症対策特別国債を発行し、規模は1兆元に達する。この2つの「1兆元」は、経済社会のリスクをヘッジし、積極的な財政政策が「より積極的になる」ことを体現するものだ。

資金源があれば、資金はどこに使うか?

政府活動報告で明確に述べられたように、2つの「1兆元」はすべて地方に回される。感染症対策特別国債で集めた資金は主に地方の公衆衛生などのインフラ建設と感染症対策関連の支出に充てられる。国民生活への投資の予算では引き続き足し算が用いられる。20年には、中央財政に雇用支援の539億元が計上される。地方都市と農村の教育分野への移転支出が全面的に引き上げられ、都市部・農村部の義務教育の経費補助が8.3%増加し、就学前教育の発展支援資金が11.8%増加する。健康の分野では、個人の医療保険の平均財政補助標準が30元引き上げられ、基本的公衆衛生サービス費用の平均財政補助標準が5元引き上げられ、新たに増えた基本的公衆衛生サービスの財政補助経費はすべて都市部・農村部のコミュニティに回される。

サイフの紐が引き締められる中、支出はどのように抑えるか?

国民生活に関する支出が増加し、中央政府機関は率先してサイフの紐を引き締め、今年の中央財政の本級支出は0.2%減少し、このうち不急で硬直的需要でない支出は50%以上削減される。

「引き算」には企業や人々に利益をもたらすことや減税・費用削減も含まれる。予算報告によれば、今年は通年で企業の負担軽減のための費用として2兆5千億元以上が計上されるという。

NEWS4 デリバリーが日本の飲食店の苦境を救うか

歌舞伎町は日本の東京都新宿区にある繁華街で、名実ともに不夜城であり、また外国人観光客が必ず訪れる人気の観光スポットでもある。日本の安倍晋三首相が新型コロナウイルス感染症で「緊急事態宣言」を発令すると、外食産業は営業時間が短縮され、薄暗くなった街の明かり、まばらな通行人、職を失った若者、焦りを募らせる各店舗など、歌舞伎町にも驚くべき変化が見られた。「新民晩報」が伝えた。

数十年にわたり居酒屋を経営してきた女性オーナーは、「こんなに閑散とした歌舞伎町は初めて。うちの店の売り上げは90%減少した。1日にお客さんが1人あればいい方」と話す。71歳の今も店を切り盛りするオーナーは、常連客から、「心配しないで、感染症が収束したら、また飲みに行くから」といったショートメッセージを時々受け取るという。

自炊が人気 健康的な生活に注目

感染症の中、日本政府は国民に不要不急の集まりを控え、不要の外出を減らすよう呼びかけ、テレワークを推奨している。そこで自炊をする、テークアウトする、デリバリーを頼むのが、生きる上で真っ先に必要な「食事をする」うえでの主な選択肢になった。

レシピアプリを開発運営する株式会社ギークワークスがこのほど10歳から60歳までのユーザー1043人を対象に行った、感染症の食生活への影響についての調査によると、70%が「感染症の流行中に台所に立つ回数が増えた」と答えたという。第一生命経済研究所が男女1千人を対象に行った、感染症が生活スタイルや生活意識に与えた影響についての調査では、50.2%が「外食の回数が減った」と答え、「家で食事をする」とした人が37.0%増加した。やむを得ず台所に立った多くの「料理しない派」の人たちもだんだん料理が好きになり、中には「食習慣や生活習慣が大いに改善した」という人もいる。

証券会社で働く佐々木さん(男性)は入社して2年目に入ったばかりだ。普段は仕事が忙しく、シングルということもあって、「とりあえず何か食べればOK」という食生活だった。感染症のため家でテレワークになり、ほとんど家事をしたことのない佐々木さんも自分でなんとかすることになった。「2ヶ月ほど頑張ってみて、料理の腕前が大いに上がった。より大切なのとは健康な食生活の重要性を体でわかったことだ。今は台所で過ごす時間を楽しんでいる。感染症が終わっても、この生活習慣を続ける」と語った。

元ラグビー日本代表メンバーの金正奎さんは、SNSで栄養バランスの取れた簡単なメニューを積極的に発信している。金さんは早稲田大学の2年生だった時から食生活に気をつけるようになり、感染症で家にこもるようになると、栄養と健康に配慮した簡単なメニューを紹介することにし、自作レシピを「きんめし」と名付けた。ネットユーザーの間で「作ってみた」と人気になっている。

外食産業が苦境に オーナーから悲鳴

日本フードサービス協会が発表したデータによると、今年3月の外食産業の売上高は前年同期比17.3%減少し、1994年に調査を始めて以来、減少率が最も高い月になった。業態別にみると、ファストフードが6.9%減少、和食レストランが7.2%減少、ファミリーレストランが21.2%減少、高級レストランが40.5%減少、バー・居酒屋が43.3%減少と大幅に減少したが、テークアウトとデリバリーは6.9%の減少にとどまった。

東京商工リサーチの調査では、4月27日までに、感染症の影響で倒産した企業は100社に達した。月別にみると、2月が2社、3月が23社、4月が75社だった。このうちホテル・外食産業が40%を占め、倒産の原因は資金繰りの行き詰まりが多かった。

大阪府にあるミシュラン三つ星レストランのHAJIMEは予約が取れない店として知られ、米田肇シェフは「伝説のシェフ」と呼ばれる。感染症の影響で、この三つ星レストランでさえ営業が困難になり、4月は200人分以上の予約がキャンセルになり、売上が2千万円減少が見込まれた。米田氏は同業者とともに政府に要望書を提出し、家賃と従業員の給与の補助を求め、これにはわずか2週間で12万筆を超える賛同の署名が集まった。

政府からの支援金 デリバリー・テークアウトを奨励

日本の経済産業省、都道府県庁、地方自治体は相次いで支援政策を打ち出し、外食産業が試練を乗り越えられるようサポートしている。

経産省が店舗向けに拠出する支援金は総額1兆6千億円に達し、売上に影響があったレストランは特別貸付を申請できる。東京都は企業に助成金を支給するとし、1店舗の経営者は50万円、複数店舗の場合は100万円を受け取れる。

また日本政府と地方自治体はテークアウトとデリバリーを推奨し、店の売上を伸ばそうとしている。大阪府は日本最大のデリバリー予約サイトの1つである「出前館」、NTT、通信アプリのLINEと協力し、オンラインでデリバリーを注文した注文額1000円以上の客に500円分のポイントを還元することにした。ポイントの半分は府が負担し、最大で1億5千万円まで負担するとしている。

神戸市とフードデリバリーサービスのウーバーイーツが協力し、ウーバーイーツに登録する中小の飲食店560店舗の割引サービスに対し、市の予算で1500万円を補助するとした、同市商業流通科は、「デリバリー配達を通じて売上高を確保すると同時に、市民が自覚的に外出を減らすことにもなる」と述べた。

これまで日本でデリバリー産業が発達しなかった理由は3つある。1つ目は日本は人的資源が乏しく、人件費が高く、デリバリーの料金が高止まりしていること。2つ目は日本人は冷たい食べ物が好きだが、デリバリーは温かい食べ物が多く、においも強く、人に迷惑をかける可能性がある。3つ目は日本は至る所にコンビニがあり、デリバリーを頼むよりコンビニまでちょっと歩いて弁当を買う方がいいからだ。感染症の前には、日本の飲食店はアルバイトの学生を雇って配達業務を担わせるところが多かった。労働力市場の競争が激しくなり、高齢化が進行していることから、デリバリー配達員を始めた高齢者もいる。

国方雅美さんは岡山県岡山市でカレー店を経営する。感染症の影響で、店に来る客が3割前後減り、一度は一時休業にしようかと思ったが、デリバリーの需要が増加し、常連客からの注文も激増した。国方さんは、「みなさんに支持していただける限り、店を続けていく」と話す。今はデリバリーに適したカレーの新メニューを考案中で、注文してくれた人にはおまけとしてサラダをつけるという。

喫茶店オーナーの鈴木智美さんは、「人類は必ず感染症に勝つことができると信じる。今は毎日なんとか店を開けて、自分の希望にしたいし、お客様にもホッとしてもらいたい。店が開いていて、明かりがともっていれば、みんなが希望をもてる」と話している。

NEWS5 在中国日系企業「中国からの移転はそれほど簡単ではない」

5月22日付のシンガポール紙「聯合早報」は、「在中国日系企業は『移転しようとしてもそれほど簡単ではない』」と題する記事を掲載した。その分析によると、新型コロナウイルス感染症によってサプライチェーンが停滞する環境の中、日本と米国からこのところ企業を中国から撤退させるとの声が同時に上がっているが、経済グローバル化の流れは変わらず、中日両国は経済協力の融合度が高く、自動車や機械など産業チェーンが複雑な製品の分野では企業が競合関係にあるものの、イノベーションや品質向上、コスト削減などでは引き続き共存共栄の相互補完関係にあり、日系企業は中国から安易に撤退することはないだろうし、撤退するとしても難しいだろう。

日本政府は4月7日に打ち出した「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」の中で、「一国依存度が高い製品・部素材について生産拠点の国内回帰等を補助する」、「ASEAN諸国等への生産設備の多元化を支援する」、「強固なサプライチェーンの構築を支援する」とした。具体的には、中小企業が日本国内で生産拠点などを整備する場合の補助率を引き上げて、中小企業への補助率を4分の3、大企業への補助率を3分の2とした。

「聯合早報」の記事は次のように分析している。日本は国家安全保障を考えなければならないが、この政策の目的はサプライチェーンのリスクを分散することにあり、支援を通じて日本企業の中国からの撤退を奨励するものではない。この政策に強制力はなく、日系企業が政府の支援を受けるからといって大規模に中国から撤退することはないとみられるが、今後ミドルクラス・ロークラス製品のASEANへの移転ペースが加速する可能性があり、日系企業が感染症収束後に中国以外のサプライヤーを増やして供給のリスクを回避しようとすることも考えられる。

中国製造業のコストが徐々に上昇するにつれ、一部の付加価値が高く自動化レベルの高い産業が日本に回帰し、労働集約型産業が中国よりも人件費が安価なASEAN諸国に移転するのは、国際分業における必然的な流れだ。また中国企業の成長や製品の品質向上の速さにより、一部の日系企業の製品の競争力が下がり、中国からの撤退を余儀なくされた。

日本貿易振興機構(ジェトロ)が今年3-4月に、中国の華東地域の日系企業710社および華南地域の日系企業457社を対象として、サプライチェーンの移転に関する緊急調査を行った。その結果、華東地域は14%、華南地域は15%の企業が調整を行うと答えた。中米貿易摩擦と感染症という2つの不確定要因の影響により、在中国日系企業の約85%が今は現状維持の態度を取る。実際、在中国日系企業のうち、過去5年間に中国事業の縮小か移転を検討したことのある日系企業の割合はずっと10%程度にとどまっており、全体としては日本の製造業が中国を離れることは難しいとみられる。ただ、一部の付加価値の低い業界は、価格競争力を向上させるためにASEAN諸国へ移転せざるを得なくなった。

日系企業が海外生産を行う主な目的は、現地の低コストの優位性を活かして製品の加工と輸出を行うこと、現地市場をターゲットに地産地消を展開することだ。前者については、今後はASEAN諸国への移転の可能性が高い。後者については、規模の巨大な中国市場に依存することが今や中国のサプライチェーンの重要な一部分になっており、自動車産業がその典型だ。

日本の自動車産業はトヨタ、ホンダ、日産といった世界トップクラスのメーカーがあるだけでなく、巨大な生産システムと複雑なサプライチェーンが構築されており、その精密なものづくりと匠の精神は世界の工業製造技術の集大成の中核となっている。1998年、ホンダと広州汽車が合弁設立した広州ホンダは、日系自動車メーカーが中国大陸に本格進出する幕開けとなった。2003年には日産と東風汽車、トヨタと第一汽車がそれぞれ合弁会社を設立し、新会社に部品を直接提供する日系部品メーカーも後を追って中国に進出し、天津、広州、武漢などに日系自動車産業クラスターが形成された。その後、間接サプライヤーや材料設備のメーカーも相次いで華東地域や華南地域などに進出した。

19年には、日系車の中国での販売量が500万台を突破し、中高級車ではドイツ車と拮抗し、市場シェアが目に見えて上昇した。日本自動車メーカーの牽引役であるトヨタは中国で独資企業9社、合弁企業15社をそれぞれ設立し、完成車工場6ヶ所とエンジン工場4ヶ所も合弁設立した。

日本自動車部品工業会が19年に行った調査によると、在中国の日系自動車部品メーカーは539社に上り、海外全体の25.8%を占め、販売、研究開発、管理などを手がける企業は119社で、17.6%を占めた。中国での売上高は約400億ドル(1ドルは約107.7円)だったが、うち輸出額の割合は12.3%にすぎなかった。日系メーカーの平均売上高は1億2千万ドル、同年の黒字企業は82.4%に上り、世界水準の75.3%を上回った。中国での正社員の従業員は28万人で、1社あたり614人を雇っていることになる。

19年の広汽ホンダの売上高は1057億元(1元は約15.1円)、広汽トヨタは980億元、東風ホンダも1千億元に達した。トヨタ、ホンダ、日産、三菱、マツダの5社と日系直接サプライヤーの中国での売上高は9千億元に迫ると推計される。また日系自動車メーカーと直接サプライヤーの中国での雇用規模は40万人に達し、中国自動車産業の発展に向けて大量の技術者を育成したともいえる。

日本政府の移転政策が自動車業界に与える影響は限定的で、中国の毎年2500万台規模に上る自動車ニーズと整った産業チェーンを前に、日系自動車メーカーは軽々しく中国市場から撤退することはないばかりか、さらに自動化、スマート化、ネットワーク化、共有化の「新四化投資」を拡大することになるとみられる。トヨタは中国工場での電気自動車(EV)生産能力を72万台に引き上げる計画で、さらに比亜迪(BYD)と合弁会社を設立して中国市場向けEVの共同開発を進めるとしている。日産も武漢に年間生産能力16万台のEV生産拠点を建設する。広汽ホンダはホンダ中国法人の工場を買収し、広州工場のEV生産能力を拡大させる。19年のトヨタ、ホンダ、日産の中国での自動車販売量が各社の世界販売量に占める割合は、トヨタが17%、ホンダと日産がそれぞれ30%だった。新型コロナウイルス感染症が収束した後、欧米自動車市場が短期間で立ち直ることは難しいとみられ、これも日系メーカーが中国市場に熱い期待を寄せる一因となっている。

日本の国内市場の規模には限界があり、日系企業は海外での事業拡張という主要な方向性を変えるわけにはいかない。日系企業にとって、中国には整ったサプライチェーンと豊富な技術者があり、中国で製造されるミドルクラス・ハイクラス製品のコストパフォーマンスには依然として競争力がある。特に自動車業界はサプライチェーン構築の周期が長く、投資周期も長く、日系メーカーは原則として「現地調達、市場近くで生産、地産地消」の海外戦略を採用する。もしも日系自動車メーカーが中国から撤退するとしたら、移転費用という単純な問題があるだけでなく、自動車産業システム全体および国際分業全体に関わる「一大手術」になる。日系メーカーが生産拠点を中国から移転させることは、何もせずに中国市場を明け渡すことに等しく、中国市場を放棄することにほかならない。

中国は01年に世界貿易機関(WTO)に加盟してから、20年足らずで工業大分類39分類、中分類191分類、小分類525分類を擁する整った工業体系を作り上げ、生産量が世界一の工業製品は200種類を超える。世界の工場である中国は、非常に大きな生産能力と整った産業チェーンを備えるだけでなく、「メイド・イン・チャイナ2025」の旗印の下で成長した華為(ファーウェイ)、中訊軟件、晋華集成、海康威視など一連のハイテク企業が、いろいろな意味で米国と日本にますます大きなプレッシャーを与えるようになった。感染症の打撃を受けた経済環境の中、米国政府の「自国ファースト」の政策が世界規模で蔓延したとしたら、民族主義が台頭して国際分業の調整及び経済グローバル化の流れの逆転を引き起こし、グローバル経済に極めて大きな影響を及ぼす可能性もある。

しかし経済グローバル化の流れは変わることがないだろうし、東アジア地域は目下、世界の製造業ネットワークの中核であり、中日間の産業分業と産業協力は両国産業チェーンの融合レベルをますます高めている。自動車や機械など産業チェーンが複雑な製品の分野で、中日両国の企業には競争も存在するが、イノベーションや品質向上、コスト削減などでは引き続き共存共栄の相互補完関係にあるといえる。

NEWS6 ネットで人気の「タニシ麺」輸出が絶好調 勢いは続くか

新型コロナウイルス感染症の流行で「巣ごもり生活」が続いた影響で、タニシ麺をはじめとするインスタント食品が中国内外のグルメ達の人気を集めている。広西壮(チワン)族自治区柳州市特産のタニシ麺は、辛くてあっさり、すっぱくてフレッシュと好評で、SNSの人気検索ワードランキングにもたびたび登場。メーカーは在庫が底をつき、供給不足の状況が今も続いている。今年1-4月、柳州税関が輸出の監督管理を行ったタニシ麺は10ロットに上り、輸出額は31万1千ドル(約3341万円)で、前年同期比141.68%増加した。中国新聞社が伝えた。

タニシ麺は柳州独自の特色ある軽食で、スープにタニシのエキスが含まれていることからこの名前がついた。ここ数年は中国だけでなく海外でもファンを獲得し、「ネットで人気の軽食」になった。2019年に個包装の袋入りタニシ麺の売上高は60億元(約905億円)を突破し、遠く米国、カナダなどの国・地域にも販路を広げた。

柳州市得華食品有限公司市場部の顔晶晶マネージャーは、「感染症の影響で、タニシ麺の海外販売が絶好調だ。当社は今年3-4月に、タニシ麺6ロット、計20万食分近くを米国、カナダ、シンガポールなどの国に輸出し、5月は4ロット、計23万食分を輸出する」と述べた。

海外で売り上げが激増したのは得華公司だけではない。広西螺覇王食品有限公司、広西全滙食品有限公司などのメーカーも、今年は海外からの注文が引きも切らない。螺覇王公司の陳梓豪対外貿易主管は、「4月はタニシ麺2ロットを輸出しており、5月は4ロットを輸出する。現在、海外からの注文は7月生産分までいっぱいだ」と説明した。

それでは感染症が収束した後も、タニシ麺の輸出は今の勢いが続くだろうか。

顔さんは、「感染症の流行中には、国内市場は供給不足になり、感染状況が好転しても、注文は引き続き急増しており、ECプラットフォームでは今なお40日後に商品を受け取る予約販売モデルを続けている。海外からの注文は7月生産分までいっぱいで、生産能力に限界があるため、海外注文の多くは断らざるを得ない状況だ。この時期に当社の製品が海外で足場を築いて定着すれば、感染症の収束後も売り上げが落ちることはない」と楽観的な見通しを示した。

陳さんも同じような見方を示し、「米国、シンガポール、カナダだけでなく、当社はニュージーランド、オーストラリアなどにもこれから輸出する。英国、オランダ、フランスなど欧州諸国からも引き合いがあり、感染症の流行中に売り上げが増加して、タニシ麺の海外での知名度と市場シェアが上昇した。感染症後も今の増加傾向を維持すると確信する」と述べた。

陳さんの説明によれば、海外の食品基準とグルメ達の食習慣に合うようにするため、螺覇王公司は研究開発を重ね、パッケージを中国語・英語併記にする、海外向けの味の配合を考案するなどのイノベーションを行ったという。

得華公司、螺覇王公司などのタニシ麺メーカーは、生産能力の限界という問題を解決するため、既存の製造ラインを調整したり、従業員の募集に力を入れたりするほか、新たな工場の建設を急ピッチで進めている。柳州市の関連当局もタニシ麺の海外市場進出を支援するため努力している。同市は、企業が輸出時に必要とする各種の国際品質標準システム認証、国際展示会、越境EC、海外での広告などの知識を学ぶ対外貿易業務の研修をたびたび行っている。

柳州税関の劉建副関長は、「税関は柳州のタニシ麺輸出企業の『4in1』登録管理モデルの構築を通じて、内部のプロセスを最適化し、今後は複数の登録を1つの窓口で一括して受理するようにし、登録の電子化を実現する。また『オンライン+オフライン』の検査方式を通じて、企業に対する検査の回数を大幅に減らす」と述べた。

このほか、柳州税関はタニシ麺の原材料となる米の登録栽培農園の共有管理モデルの構築も検討しており、メーカーが登録農園の原料米を共有することで、原料米不足というメーカーのボトルネックを解消し、タニシ麺の輸出を促進するとの構想を描いている。

NEWS7 世界が注目する今年の中国両会5つの「キーワード」

2020年の全国両会(全国人民代表大会・全国人民政治協商会議)タイムが21日に幕を開けた。特殊な時期に開催される今年の両会は世界中の注目を集める。国際社会が注目する両会の「キーワード」は何だろうか。新華社が伝えた。

キーワード1:経済運営

新型コロナウイルス感染症が世界経済に深刻な打撃を与えた。国際通貨基金(IMF)の予測では、20年の世界経済の成長率は前年比3%減少し、1930年代の世界大恐慌以降で最も深刻なグローバル経済の衰退になるという。国際社会は世界2位のエコノミーである中国が両会期間にどのような経済政策のシグナルを出すかに、非常に注目している。

ロシア開発対外経済銀行(VEB)調査・鑑定研究所の「中国とユーラシア経済連合(EEU)の発展」の課題責任者であるセルゲイ・ツィプラコフ氏は、「中国が経済復興をどのように促進するかに非常に注目している。それにはどのような金融政策・通貨政策を推進するか、経済発展の計画、今年の経済成長率の予測、及びインフラ建設における投資などが含まれる」と述べた。

フランスのパリ第8大学のピエール・ピカール教授は、「中国経済の回復が全面的に加速しつつあり、これはグローバル経済の振興にプラスであり、世界の投資家と消費者に信頼感を与えるものだ。世界はこれまでのどの時よりもさらに中国の両会、中国の経済的成果に注目している」との見方を示した。

キーワード2:全面的な小康社会

今年は中国の小康社会(ややゆとりのある社会)の全面的な完成の勝敗を決める年であり、貧困脱却の難関攻略の年だ。国際社会が広く関心を寄せるのは、突如襲来した新型肺炎の中で、中国がどのようにして目標の実現を確保し、人類の貧困削減と発展の歴史の上で新たな1ページを刻むかということだ。

ドイツのベルリン・プロイセン協会のフォルカー・チアプク名誉会長は、「中国は感染症の抑制で素晴らしい危機対応を行った。両会は中国のこれからしばらくの間の政治・経済政策を計画する場になるだろうし、中国の貧困脱却の難関攻略、小康社会の全面的な完成という目標は感染症の影響を受けておらず、感染症は中国の力強い発展プロセスにおける一つのエピソードに過ぎないと確信する」と述べた。

メキシコのノティメックス通信のサンジュアナ・マルティネス社長は、「メキシコと中国はともに発展途上国であり、中国の発展と貧困削減の経験はメキシコにとって大いに参考になる。そのため、今年の両会で、ノティメックスは中国の貧困脱却の取り組み、農村の発展などの話題に非常に注目する」と述べた。

キーワード3:公衆衛生

新型コロナウイルス感染症は第二次世界大戦の終了以降で最も深刻な世界的な公衆衛生上の緊急事態だ。中国が自国の公衆衛生システムをどのように整備するか、世界の公衆衛生ガバナンスにどのように寄与するかということも、国際社会が関心を寄せる両会の議題だ。

欧州研究国際センター(International Centre for European Studies)欧州-中国プロジェクト責任者を務めるギリシャの研究者ジョージ・ツォゴポロス氏は中国両会の公衆衛生の議題に関する議論に注目しており、これには危機警戒能力の向上、生物学と医薬品の研究強化、感染症の再発防止が含まれるという。

エジプトのエジプト中国商会のディア・ハーミ事務局長は、「両会が『一帯一路』(the Belt and Road)の枠組の下での経済貿易と公衆衛生分野での協力強化に関する議題を議論することを期待する。中国は感染症の予防管理で非常に独特の経験をしており、これにより『一帯一路』の枠組内での衛生・健康をめぐる協力強化がとりわけ重要であることがはっきりとわかる」と述べた。

キーワード4:国際協力

感染症の打撃の中、反グローバリゼーションと保護貿易主義が台頭した。国際マクロ経済政策の協調を強化し、グローバル産業チェーン・サプライチェーンの安定とスムーズな流れを維持することは、世界経済の迅速な復興にプラスであり、国際社会の共同の願いに合致する。

韓国の檀国大学政治外交学部の金珍鎬教授は、「今年の両会で中国が開放をさらに拡大し、世界経済との連携を深め、地域経済協力を促進し、世界の産業チェーンを安定させることなどをめぐって新たな政策・措置を打ち出すのを見られると期待する」と述べた。

英国ダーラム大学中国発展研究院の郭傑執行院長は、「中国の企業活動再開はグローバル産業チェーン・サプライチェーンの安定を守った。ポスト感染症の時代には、グローバル化が引き続き未来の経済成長の基礎になる。両会がどのような関連の政策・措置を打ち出すかは注目に値する」と述べた。

キーワード5:対外関係

世界の過去100年間にも見られなかったほどの大きな変化の局面における感染症という「ブラックスワン」に直面して、中国の対外政策も広く注目を集める。

メキシコ紙「ディアリオ・デ・メキシコ」、アルゼンチン紙「クラリン」など中南米地域のメディア関係者は、「中国と米国は世界の大国であり、中米関係の動向は世界に大きな影響を及ぼし、米国に隣接する中南米地域にとってはさらに影響が大きい。両会の中米関係に関する議題に非常に注目している」と述べた。

エジプトのベニスエフ大学のディア・ヒルミ教授(政治学)は、「中国は両会を通じて対外関係の面で積極的なシグナルを発するだろう。これにはより緊密な国際協力関係を構築し、国際社会の貧困削減、感染症予防管理、発展実現のために寄与すること、より公正で合理的な国際秩序の構築に努力することなどが含まれる」との見方を示した。

NEWS8 2児をもつワーキングマザーの実態、「超絶パワー」の裏に何があるか

新型コロナウイルス感染症の流行中に、安全で静かなオフィス環境を確保するため、85後(1985年から1989年生まれ)で2児の母親の張欣さんは毎日、自家用車の中で7時間働いていた。「中国青年報」が伝えた。

それを「一石二鳥の悪くない選択」と言う張さんは独立した企業コンサルタントで、1日に何回も電話会議を開かなければならない。車の中なら子どもに仕事を邪魔されることもないし、家族も仕事中の張さんに気を遣わなくて済む。

北京で暮らす若い2児の母親の張さんは、1日の時間をきっちり配分している。毎朝8時から9時半まで子どもと一緒に朝食を取り、9時半から午後6時まで車の中で働き、昼ご飯は自分だけで食べ、午後6時から11時まではまた家族とともに過ごし、11時以降はスキンケアと仕事の時間、寝るのは深夜の2時から3時だ。

レストランやサービス、金融プラットフォームなどの分野の顧客を抱える張さんは最近、仕事のプレッシャーが高まっている。企業が相次いで操業を再開するのにともない、企業の問題を解決するコンサルタントとして、感染症の影響で不確実になった経済情勢を前にして、企業に正しい決定と戦略のアドバイスをするには、これまでより多くの努力が必要になったからだ。

張さんはこれまでいくつか仕事を変えている。テレビ局で経済番組のディレクターをしていたこともあれば、インターネット業界で起業を試みたことも、ベンチャー企業に勤めたこともある。現在のフリー形式の仕事には満足しており、仕事上の興味や関心にも合っている。より重要なのは、子どもの世話をする時間がより多く取れることだという。

張さんには上は5歳、下は3歳の可愛い女の子が2人いる。感染症の影響で幼稚園が休園になると、家にいる張さんは仕事をする時間がなくなってしまった。毎日、どちらが先におもちゃで遊ぶかとか、どちらかがどちらかのものを壊したとかいった争いごとや喧嘩をいさめるのに忙殺された。

昨年5月、人材募集サイトの智聯招聘が発表した「2019年ワーキングマザーの生活状況調査報告」によると、ワーキングマザーが職場復帰した重要な原因には、「女性にとって経済的自立がとても重要だから」、「社会とつながっていたいから」、「自分がよい状態でいたいから」などがあった。その一方で、「経済的プレッシャーでやむを得ないから」も出産後に女性が職場復帰する重要な原因だという。

また同報告の調査研究データでは、ワーキングマザーの60%近くが、「子どもは昼間は両親に面倒をみてもらい、夜は自分が面倒をみる」と答えた。「すべて自分が面倒をみる」は15.2%で、こうした母親達にはさらに気力が必要だ。

張さんがありがたく思うのは、自分の母親と義母が代わる代わる北京に来て子どもたちの面倒をみてくれ、張さんの負担をかなり軽くしてくれることだ。

同じく85後で2児の母親の李琳さんは、張さんほど条件に恵まれていない。友人の目からみると、李さんは「謎めいた存在」だ。李さんが2人の子どもの面倒をみながら仕事を続けていられるのはどうしてかと、好奇心を抱く人は多い。ここ2年ほどの間に、李さんはたびたび「本当にすごい」、「スーパーママ」といった賛辞を耳にしてきた。

李さんはこうした評価を耳にしつつ、「特別な力なんてない。昼間は子どもの世話をして、夜になると寝ないで働いているだけ」と話した。

李さんには2人の子どもがいて、上が5歳の男の子、下が2歳の女の子だ。男児も女児もいるため、多くの人にうらやましがられる。李さんはかつてメディアで働き、その後、脚本家に転じた。夫は隣の都市で働き、週末になると家に帰ってくる。普段は2人の子どもの食事や排泄まですべて李さんが1人で担う。幸い、会社に行く必要がなく、仕事の大半は家でできる。

李さんが上の子を出産した時は、義母がよく来て子どもの世話をしてくれた。しかし時間が経つうちに、自分と義母の子育て観の違いをすりあわせることができなくなってきた。義母は子どもを甘やかし、夫は普段家におらず、張さんも義母と言い争うわけにはいかない。最終的に李さんは自分で子どもの世話をすると決め、どんなに大変でもその方が子どもをしっかり教育できると考えた。

会社では毎週定例会議があり、李さんは上の子を幼稚園に送ると、下の子を連れて会議に出る。また普段の生活でちょっと外出する時は、上の子に携帯電話を持たせて留守番させ、妹の面倒をみさせており、何かあれば電話をかけさせることにしている。

1児の母親と比べ、2児の母親は責任とプレッシャーのため専業主婦になる割合がかなり高い。19年に育児情報サイトの育児網が精碩科技集団と共同で発表した「2019年2人っ子世帯マーケティング洞察報告」は、母親9837人を対象とした調査に基づいて、2人っ子の母親の87%が1人で子どもの面倒をみる責任を担い、そのうちの52%が専業主婦だと伝えた。

毎日2人の子どもの食事やトイレの世話と仕事に追われて、2児をもつ若い母親はいつも不安や鬱屈した気持ちを抱いている。李さんはマイナスの感情が満ちてくると、大きなチョコレートをかじったり、あふれるほどのラー油をかけたタニシ麺を食べて、涙が出るまで辛さを味わったりするという。張さんのほうは、心が揺れて気持ちが乱れる時、大きくてフカフカのパンを食べると、「噛んでいるうちに強烈な満足感を得られる」といい、テレビドラマを続けて見て気を紛らわすこともあるという。

「食べる、動く、女友達に話を聞いてもらう、趣味に没頭するなどは、どれもマイナスの気持ちを解消するよい方法」だが、長春明心理コンサルティングセンターのカウンセラーの孟燦■(女へんに朱)さんによると、「マイナスの心理を吐き出すのは一時しのぎであって、状況は変わらず、根本的な問題の解決にはならない」と注意を促し、「2児をもつワーキングマザーにかかるさまざまなプレッシャーを解決する根本は、子どもをいかに上手に教育できるか、婚姻関係をいかにうまく維持できるかという点にある」と述べた。

孟さんのところには、ほかのワーキングマザーからしょっちゅうSOSが来て、「どうやったら仕事と子どもの教育のバランスを取れるのか教えて欲しい」と頼み込まれるという。

孟さんは、「母親は子どもの教育をフルタイムの仕事のように考えている。仕事を続けるなら、一度に2つのフルタイムの仕事を抱え込んでいることになり、疲労困憊になってしまうだろう。特に2児を抱えるワーキングマザーは、子どもがまだ幼児で、大きな子よりも手がかかる。条件が許すなら、家政婦を雇ったり、家族のうち高齢者に頼んで手伝ってもらうといい。無理なら、妻と夫で家事を分担するべきだ」とアドバイスした。

また孟さんは、「子どもの教育は夫婦2人の共同責任で、父親の役割も欠かせない。両親の結婚が幸せかどうかも子どもの性格に影響する。夫婦が愛し合い、助け合っていればこそ、若いワーキングマザーが困難な時期を乗り越えやすくなる」と述べた。

NEWS9 ECによる貧困者支援の早送りボタンが押された

小さなキクラゲが大きな産業になる。4月20日、陝西省を視察した習近平国家主席は、商洛市柞水県小峰鎮金米村のライブ配信プラットフォームを訪れ、現地特産の柞水キクラゲに「いいね!」を送り、「最強のライブコマース・パーソナリティ」になった。習主席は、「ECは人々が貧困から脱却するのを支援するだけでなく、農村の振興を後押しすることもでき、非常にやりがいがある」と述べた。

8万パック超の計12.2トンの柞水キクラゲが即完売

ここ数日、柞水キクラゲは新しいネットの人気者となっている。4月21日、人民日報のライブ配信で8万パック以上計12.2トンが売に出されると、瞬く間に完売した。柞水キクラゲは淘宝(タオバオ)などのECプラットフォームで最も売れ行きのよい商品にもなっている。

多くのネットユーザーから、「先を争うのは刺激的で、購入した時は頭がクラクラして、商品が届くとすごくうれしかった」「EC+農産品+貧困者支援の攻略戦、支援が必要」といった声が上がった。習主席が柞水キクラゲを評価したことが「史上最強のライブコマース」と呼ばれ、大手ネットワークプラットフォームで人気の検索ワードになり、この話題がネットワークを駆け巡った。ネットユーザー「膠莱人」さんは、「ECによる貧困者支援は早送りボタンが押され、農村振興に新たな原動力を注入すると確信する」と述べた。

4月23日夜、これまでで最大規模の陝西省産農産品の公益ライブ配信が行われた。柞水キクラゲは10秒で売り切れ、陝西省の擀面皮(かんめんぴ。小麦粉を伸ばして作った麺類)も8秒で、「肉挟饃」(中国風ハンバーガー)も16秒で売り切れた……陝西省の農家・業者3800社あまりが集まって一晩で農産品約5万種類を売り出し、「史上最強のライブコマース」の牽引効果がさらに拡大した。ネットユーザーは、「各地にネットで人気の市長さんや県長さんがたくさん誕生し、大手ECプラットフォームのライブ配信で各地の特産品を売り出すようになるだろう」とコメントした。

柞水キクラゲは人民網の総合型消費サービスプラットフォームである「人民優選」で打ち出している貧困者支援商品の1つでもある。「史上最強のライブコマース」の追い風を受けて、「人民優選」に選ばれた他の貧困者支援地域のキクラゲの売り上げも目に見えて増加した。新型コロナウイルス感染症は経済社会に大きな打撃を与えたが、さまざまな新業態も生み出しており、「デジタルが新たな農業資本となり、スマートフォンが新たな農具となり、ライブ配信が新たな農家の仕事になった」こともそのうちの1つだ。

ネットユーザー「聞所未文」さんは、「農業・農村の事業は、なんといっても、農民の収入を増やすことが重要なカギだ。国民を中心とした発展の理念を貫徹し、『農民・農村・農業』がインターネットの追い風に乗るようにし、大勢の農民が一日も早く豊かになるようにすることが、習氏がこれまでずっと関心を寄せてきたことだ」と述べた。

デジタル経済は持続的かつ急速に発展し、巨大な活力を生み出して、今や農村の経済成長の新たな原動力に育ちつつある。人民網新EC研究院が4月24日に発表した「中国農村EC物流発展報告」は、「デジタル農村建設、ECの農村進出総合モデル、ECによる貧困者支援などの事業がより深く推進されるのにともなって、中国の農村ECは急速な発展の勢いを維持し、農村のネットワーク小売の伸びは加速を続け、農村ECの発展は農村EC物流ニーズを効果的に喚起した。ECプラットフォームは農産品の販売におけるスマート化、システム化、大規模化された物流『新インフラ』の代表的存在だ」と指摘した。

「ECなどの新業態の効果を発揮するには、一方で新業態を上手に使うことが必要で、ライブコマースはECなどの新業態の1つの成果に過ぎず、ECプラットフォームにはまだ非常に多くの発掘されるのを待っているポテンシャルがある。他方で新業態にうまく対応することが必要で、より有力な制度設計を通じてECプラットフォームがより高いステージに上るよう後押しすれば、ECプラットフォームはより大きな役割を発揮するようになる」という論評がみられる。

NEWS10 コロナ下の日本 テレワークが巨大な市場を生み出す

長年低迷続きだった日本のパーソナルコンピューター市場が、最近になって勢いを盛り返している。「経済参考報」が伝えた。

PC・家電専門の調査会社BCNが日本の主要家電量販店とネット店舗のPOS(販売時点情報管理)データに基づいて行った調査の結果、パソコン市場が久しぶりに活況を呈していることがわかった。4月の第1週には、日本パソコン市場の売上が前年同期比109.0%増加し、第2週は同145.1%増加、第3週は同164.7%増加して、驚くべき上昇傾向を示している。

その背後にあるのは、新型コロナウイルス感染症が日本で拡大を続けていることだ。日本の小中学校は3月の初めから休校になり、4月に緊急事態宣言が出されると、日本政府は企業にテレワークの割合を引き上げるよう繰り返し要請してきた。多くの家庭で親と子供がともに「巣ごもり」し、テレワークとオンライン学習を行うようになった。そのために、多くの家庭が急いで仕事用のパソコンを購入した。

日本では1997年にテレワークという働き方が登場した。子どもがいる家庭で子育てをしながら仕事ができるようにと、日本政府はテレワークなど多様な働き方の実現を目指して制度を整えてきた。たとえば日本の株式会社キャスターは、700人あまりいる社員が徹底したテレワーク制度を実践しており、会社そのものにオフィスがなく、社員は全国各地に散らばって、お互いに顔を合わせずに働いている。

しかし世界からみれば、日本のテレワーク率は高くない。3月13日から4月13日にかけて日本のテレワーク状況を調査したところ、サラリーマンで感染症の流行中にテレワークをした人は18%にとどまった。英調査会社YouGov社が調査した26ヶ国の中で最低の割合だ。これは別の角度から、日本のテレワークがハードもソフトも未熟で、今後の発展の可能性が非常に大きいことを物語ってもいる。

今回の感染症を受けて、日本では一気にテレワークシステムが急速に動き出した。ますます多くの企業がWEB会議などを通じてテレワークを始め、出張する代わりにオンラインビジネスシステムを利用するようになった。それにともなって現れたのは、テレワーク関連ソフトウエア開発業務の急速な伸びで、これにはさまざまな出勤管理ツール、WEB会議ツール、業務コミュニケーションツール、職務管理ツール、バーチャルオフィスツールなどが含まれる。

それだけでなく、さまざまな家具・インテリアメーカーもチャンスに乗じて次々にオンライン業務を打ち出し、競うようにマーケティングを展開している。また最も顕著な例は、街中を縦横に駆け抜ける食品デリバリー配達員の大幅な増加だ。多くの高級レストランが店舗での料理の提供を停止して持ち帰り業務に転換し、店の入り口で販売したり、近所の企業や家庭に配達したりするようになった。滴滴出行の日本法人も、4月から大阪で食品デリバリー業務をスタートした。

広告代理店NKBの調査によれば、感染症流行中の「ステイホーム」で食品の販売が増加しただけでなく、キッチンツールや家具、スポーツ機材、書籍の売上も目に見えて増加し、特にゲーム・動画業界は流れに逆らって増加したことが注目を集めた。

広告代理店Criteoの調査では、ここ数週間では、スポーツウエアやトレーニングウエア、パジャマなどのリラックス・レジャー用衣料品の売上が大幅に増加した。なかなか外に出られず、家にいる時間が増えたことから、消費者は着ていて楽な服を真っ先に買うようになったのだ。

突然大幅に増加したテレワークはリフォームのニーズも生み出し、リフォーム業界がビジネスチャンスを迎えた。3月以降、リフォーム会社のなかには、公式サイトにテレワーク向けリフォームのコーナーを打ち出し、さまざまなプランや事例を紹介するところも出てきた。感染症が拡大するにつれて、対面で受け取る必要のない宅配ボックスの設置、家庭用の非接触型コントロール設備への改造、抗菌壁紙への張り替えなどの需要も大幅に増加した。

フィットネスクラブチェーンの東急スポーツオアシスは、ジムが休業になると、「トレーニング家具」のオンラインマーケティングに力を入れるようになり、3月の売上高は前月比2倍になった。同社が取り扱う「トレーニング家具」の最大の特徴は、普段は家具として使用でき、運動する時だけトレーニング機器に早変わりするという点にある。

緊急事態宣言が延長され、テレワークなどの措置が長期化する流れの中、消費者は物資の供給が十分であることがわかった後は買いだめをしなくなり、少しずつ家での暮らしの楽しさを追い求めるようになった。データによると、お菓子やスナック食品、ギョウザの皮、春巻きの皮などの売上高がこのところ大幅に増加している。

今回の感染症は、日本のオンライン診療の発展も後押しした。厚生労働省は4月にオンライン診療に関する指針を見直し、対象となる患者や疾患の範囲を広げた。


オフィス