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ケースメソッドで経営を学ぶ

 今回はケースを通じて経営をどう学ぶかを考えてみたいと思います。
 ケースによる学習方法はアメリカのハーバード大学が有名ですが今では大学ばかりではなく各企業の幹部研修で一般多岐に行われる様になりました。
 まず、ケースによる学習方法をごしょうかいしましょう。出典は日本の慶応大学のビジネスクールが解説しているものです。
ケースメソッドとは何か
 ケースメソッドは授業のやり方の一つである。この授業のやり方をする講師は、受講者と一緒になってクラス全休で討議、すなわち討議しながら授業を進める。
 討議はケース教材(経営の事例)をもとに行う。受講者はケースから考えられる問題について様々な角度から意見を出しあい、討議する。講師はクラスの議論が有益な展開になるように論点の流れの舵をとる。
何かを「教わる」メソッドではない
 ケースメソッドは、我々が受けてきた伝統的な教育方法である講議方式と比べて、著しく異なる特徴をもっている。第一に、講師は自説を述べたり、講議したりしない。クラスの討論にきっかけを与え、議論の進行の舵をとる。第二に、 「ケース」を教材として使う。ケースを用いての討論形式の授業で、講師は自説の講議をしない。ではケースメソッドは受講者に何を学ばせる教育方法なのか。
ケースメソッドの教育理念
 ここで我々は経営者教育に限定して考えてみたい。経営者は企業経営を通じて経済の発展と社会の福祉に貢献する使命を負っている。この使命を積極的に遂行するために、自主独立の精神(慶磨義塾ではこれを「独立自尊」と呼んでいる)に立脚した経営専門家としての識見と実行力を備えねばならない。知識や技術がいかに発達しても、それによって経営問題がすべて解決するわけではない。経営者は知識や技術を適用する場合の限界を知らねばならない。同時に、その限界を踏まえての的確な判断と意思決定が要求される。そのためにこそ、経営問題を多角的に考察する弾力性のある思考、強靭な論理、鋭い洞察力、そして旧来のものに捕らわれない捲刺たる創意がなくてはならない。さらに経営者は、自己の判断に従ってこれを主体的に実行する能力を備えねばならない。確固たる決断力、綿密な企画力、そして高度の指導と実行の力が求められる。そして、かような識見、判断力、意思決定力、実行力は、経営者が自己の人格の尊厳を確信し、時の権威や私情に屈しない烈々たる自主独立の精神に裏付けられてこそ、よくこれを具現することができる。慶磨義塾で言う「独立自尊」である。ケースメソッドによる経営者教育は、経営者のこのような資格能力を滋養することがその基本的理念である。 知識の伝授より意思決定と行動の訓練をこの教育理念のもとにおいては、経営上の諸事実を抽象化し知識として理論化したものを講述するあの講議方式という伝統的教育方法を最適のものとは考えない。
ケースとはどのようなものか
 ケースメソッド授業で使用される教材が「ケース」である。この教材には企業で実際に発生した、あるいは発生しつつある、経営上の出来事がありのままに記述されている。もちろん単に事実が記述してあるだけでは教材としてのケースではない。事実の記述がケース教材とせるには更につぎの条件を具備していなければならない.経営者教育でとり上げる何らかの訓練主題を含んでいること。その主題の訓練に必要な情報が盛られていること。これを教材として訓練を受ける者を登場人物の立場に立たせ、その責任において意思決定を迫るように表現されていること.これらの条件が揃ってはじめてここに言うケースとなる。
討議による学習
 だからこそ、ケースを読んで気付いた諸事実を指摘し並べていくことで、あたかも「答え」や「正しいやり方」を抽出し得たような気持ちになる授業の受け方はケースメソッドで目指すものではないoケ-スから考えられる経営問題を洞察し、その間題への意思決定と実行への責任を果たそうとすることがケースメソッドで目指すものである.そのためにこそ受講者が意見を出し合う討議が必要となる。
 経営者教育にとって重要なことは問題の解決に到達するまでの思考の過程である。現実をつぶさに把握した合理的かつ建設的な思考努力である。各自が試みる問題解決のしかたは各自の経験や思想を反映して、それぞれ特色がある。
 ケースメソッドによる討議とは、これら特色ある各自の考え、判断、意見を持ち寄り、発言しあい、思考を重ね合わせることで、相互の成長に資することである。受講者は相互に自分の思索結果を披露し、検討しあう。こうして触発されながら自らの考え方に修正を加え、自らの判断と意思決定を再構築していく。これこそが自主独立の精神に立脚した経営専門家の育成である。集団による討議を欠いてはケースメソッドの意義はない。
ケースの実例
 このケースはある会社の経営幹部研修で用いたケースです。皆さんはこのケースを読んでどのように感じるでしょうか。
【リーダーシップ教材】
「大島社長の決断と新役員陣のとるべきリーダーシップ」

創業社長の退陣の決断と後継者問題について
 私は大島康雄と申します。大島食品工業(上海)有限公司の董事長兼総経理です。当社を、25年前に起こし、今日まで経営の第一線でがんばってきました。年齢が73歳になりそろそろ会社を後継者に譲ろうとしたときに会社は大きな問題に直面してしまいました。
 直面した二つの大きな問題は昨今、食品業界で問題となっている産地を偽って表示している問題です。もう一つの問題はBSE(狂牛病)で当社の主力商品である牛肉の加工品がまったく売れなくなってしまったことです。
 会社全体の売上は前年比で10パーセントも減少してしまいました。このままで期末を迎えますと、利益は前年比70パーセントの減益となり、場合によれば、創業以来はじめての赤字を覚悟しなければなりません。さらに、悪いことに、当社は現主力事業の業績が創業以来順調に推移したこともあって食肉加工製品に集中しています。従いまして、なんらの抜本的な対策を打たなければ次年度も業績が快復することなく今年より大幅な減収減益が予想されます。
 工場は10年以上前に、当時としては近代的な模範工場といわれた設備を備えたものでしたが今になっては旧いほうの工場になっているかもしれません。といいますのも、当社は比較的競争の少ない品質を追及する高級な商品を生産してきました。したがって、工場への設備投資よりも人に投資してきたといって言いすぎではありません。
 ところで、なぜ私が73才になっても社長をしているかということに触れておきたいと思います。正直申しまして、60歳までは後継者のことなど考えたこともありませんでした。一心不乱に事業の発展にのみ集中してまいりました。まるで、会社がわが子のように思われました。60歳を過ぎたころから意識はしてきたのですが残念ながら、後継者を得ることが出来ませんでした。実は、私には子どもがいませんので、もともと親子で事業を引きつぐことはありえないことでした。私や妻の兄弟の子どもを養子にして後を継がせてはどうかとの話を何度もアドバイスされましたが、私にはどうしてもその気になれませんでした。というのも、企業は社会の公器であり、私物化してはならないという気持ちが私には拭えきれなかったからです。もちろん、他人に渡すより血のつながった後継者にするほうが安心できるという気持ちがまったくなかったわけではありません。実子がいたら、今のように考えたかというと自信がありません。
 長い間考える時間が合ったのに、ここまで来てしまったのは、いろいろ迷う間に時間が過ぎてしまったということも言えるかもしれません。しかし、今回の会社が直面する問題は、私が社長として解決するよりも後継者に任せて次代の経営者に当社の将来を託したほうが良いとの決心をするにいたりました。理由は一言ではいえません。
 現在の当社の役員は10人いますが、私が社長として採用し、育ててきたものばかりです。人間としては従順でよく仕事もするのですが、これまで会社の決定は私が行ないましたので自ら決めることがなかなかできないようです。いつか、社員から私にある役員のことを手紙に書いてきたことがありました。
 その手紙によりますと「役員なのに決済伺いを出しても一切決定をしてくれない」というものでした。権限の範囲内のことでも意思決定をしないというのです。しかし、私はこのことにあえて自分が踏み込んで解決しようと思いませんでした。私にとりましては役員であっても単なる使用人に過ぎないのです。
 組織管理の本には「職制」とか「職階」とか言いますが、私には余り大きな意味を持っていません。私は役員を私の補佐役と思っています。私を助け、会社の業績を上げ続けることが取締役の役割だと思っています。取締役には専務や常務などの役付き役員はおりますが、私にとりましては単なる呼称であるとしか思えません。この考えは人に雇用されたことのない創業者の独断的な考えであるかもしれません。
 役員も物事を決めるに際しては、もし失敗して後で私に叱られるより、私に先に了解を得たほうが楽だというような気持ちもありました。私はそのような会社の空気はうすうす感づいていましたが見て見ぬふりをしていました。会社のことは何でも知っておきたいという気持ちが強かったのです。しかし、今回は会社の長期的な存続を考えると私が経営の第一線を退いたほうが大きな飛躍につながるのではないかと考えたのです。
 そして、私が相談役に退き、60歳以上の7名の役員には子会社の役員若しくは顧問に退いてもらうことにしました。総経理以下役員は全員が50歳代へと若返らせました。総経理には子会社を経験している43歳の岸本弦三董事兼営業部長を抜擢しました。

新経営陣の船出
 あなたにも新しい董事候補であるとの打診がありました。あなたには、当時を引き受けることに対する不安な気持ちもありましたが、熟慮して引き受けることを決意しました。大島総経理は候補者全員に確認し、7人全員が引き受けました。そして、このことを直ちに社内に発表しました。社員は一様に驚きました。一部には動揺が広がりました。岸本次期総経理が今日の難局を乗り切れるとは思えなかったからでした。誰もが岸本董事が社長に指名されるなどと思っていませんでした。
 しかし、ある時期から社内には新総経理に対して信頼と期待感が芽生え始めました。これはあることがきっかけでした。この事件が起ってから岸本総経理はわが社の仕入れや製造現場の状況を現場で把握し、偽りがないことを念には念を入れて確認をした後、当社の顧客を自ら先頭に立ち一軒一軒回って顧客の不安感を取り除いていたことがわかったからでした。それでも顧客の動揺が深刻で冒頭に述べたような業績の低迷につながってしまったのです。
 新生、大島食品工業(上海)有限公司が今まさに船出をしようとしています。嵐に向かっての船出でありました。船長のみならず、乗組員が一致団結しないとこの荒れた大海原は乗り越えられないと思われます。
創業者である大島前総経理から新経営陣に次のような要請が特にありました。
 自分は会社の経営にはまったく口出ししない。会社にも月に1度程度出社するが、経営のチェックをするために出社するのではないから誰も報告などに来ないでもらいたい。
 会社の株式のうち半分は「財団法人大島国際育英基金」に寄付する。残り半分はいずれ導入する会社のストックオプションの原資として活用されるときには提供するとのことでした。
 そして、以下の「はなむけ」のメッセージが添えられており、これ以降はすべて任すとのことでした。


嵐に直面して、船長及び幹部がなすべきこと

岸本船長殿
幹部乗組員殿
                             水先案内人 大島康雄

1. 航海する目的地を改めて明示すること。
①嵐を避けて他の目的地に向かうこと
②安全航海のシナリオ(経営戦略)を書くこと
③船長以下幹部が決めた以上一枚岩であること

2. 大波に飲まれないよう積荷を軽くすること
① 何回にも分けるのでなく一度に軽くすること
② 乗組員が納得するものであること
③ 嵐が去ったら、軽くした積荷を戻すことを乗組員に約束すること

3. 幹部は前線に立ち乗組員を指揮すること。
① 船長室での会議はすべて止めること。
② 船長は第一線で志気高揚(結束すれば嵐を克服できる)を図ること
③ 嵐が去るまで幹部は休めないと覚悟すること

4. 業務は船が安全に航海することのみに絞り込むこと。
① これを機会に安全航海に関係のない業務はすべて止めること
② 乗組員が船を前に進める仕事に徹する環境をつくること
③ つまらない命令をして、幹部が乗組員の仕事の邪魔をしないこと

5. 情報の共有化と活用を図ること。
① 安全航海のための情報を最優先し常に流し続けること
② 甲板の情報を全員が把握し共有していること。
③ 言いにくい情報を船長に報告する習慣づけをすること

以上
【テーマ】
「新経営陣としてこの“はなむけ”の言葉を参考にして大島食品工業の経営陣は今後どのようなリーダーシップがとるべきか」を考えてください。



仕事の管理はすべて計画から始まる

あなたは行き当たりばったりで仕事をしていませんか?
 今回のブログでは「仕事の計画」を取り上げたいと思います。取り上げた理由は2018年のコンサルティン活動で計画の必要かつ重要性を痛切に感じさせられたからです。
 私たちが支援した多くの企業では管理職や監督職の社員が自らの業務であっても計画する能力に欠ける人たちが多くいたからでもあります。その原因をたどりますとそもそもたとえ管理職や監督職であっても業務を計画することは会社から求められていなく上司から指示されたことのみをやれば良いという一般社員並みの仕事しか求められていないケースから、管理職と言っても能力が低いから業務を任せることができないといった理由まで様々でした。いずれの理由にせよ今の現状を改善しないわけには行けません。
 そこで改めて仕事の管理の基本である「計画」についてまとめてみたいと思います。

1.仕事の管理とは?
 仕事は、だれでも知っているように、計画(PLAN)、実施(DO)、評価(CHECK)、反省(ACTION)のサイクルを回すことを言います。これをマネジメントサイクルと言い、英文字の頭文字をとってPDCAサイクルを回すとも言います。このことは頭の中では誰でも理解していることなのに現実の仕事をするときにはサイクルが回っていないのです。また、このサイクルは部下を持つ人と持たない人で変わります。
 部下を持つ人は自らの仕事と同時に部下とともにこの仕事のサイクルを回します。部下を持たない人は自らの仕事だけのサイクルを回します。管理職であっても一般社員であっても仕事を進める際には何らかの形でこのサイクルを回す必要があります。

2.仕事の計画とは?
 計画とは何をすることでしょうか?
 計画とは仕事進めるに当たって将来の変化を想定し変化に対応できるよう、創造力を働かせることに よってその内容や方法や手順をあらかじめ決めておくことです。業務の内容によって週間計画、月度計画、年間計画のように時間軸による計画と経営計画、営業計画、要員計画、生産計画。調達計画のように経営の質や職能による計画があります。また、日々の仕事をムダ。ムラ、ムリなく進めるための業務計画もあります。

 計画はなぜ必要なのでしょうか?
 第一に上司にとって計画すること自体が責任であり仕事です。計画をしない仕事はありえません。必ず上司の仕事には計画があります。
 第二に計画は部下にとっての行動の指針や目標を示すものです。組織は多くの人たちが目標や目的を共有することで期待する成果を達成することができます。

 計画を立てるときの問題点はないのでしょうか?
以下のような問題点が想定されます。
① 事実や情報が集めにくい。
 これは計画を立てる際の目的や問題意識があいまいな場合に起こりがちになります。現代は情報氾濫社会です。情報はいくらでもありますがよほど鮮明に目的や問題意識を持っていないと必要な情報を入手することは難しいでしょう。
② 外的要因が働くので予測が立てにくい。
 企業は変化適応業です。変化に適応できなければ没落するだけです。この世の中で不変の真理は変化するということであると格言すらあるくらいです。
 私たちの仕事は外的要因に影響されない仕事はありません。これはある意味計画能力のない人の言い訳であることが多いと思われます。
③ 将来に向けての決定なのでそのリスクに不安感がある。
企業経営や仕事にリスクはつきものです。リスクのない仕事をしても大きな成果を得ることができません。
例えば、リスクの最も大きいのは投資や事業拡大などの戦略計画です。将来に向けての不可知な状態を見込んでの計画です。会社の成長戦略は常にリスクが伴うものです。
④ 思考するよりも条件反射的、行動先行的な職場の雰囲気がある。
 多くの企業でよくある話です。このような状況では蒋場や組織が目的、目標を共有できていないため成果が上がりません。リーダーのマネジメント力が欠如しているかもしれません。根本原因を究明して抜本的対策を講じる必要性がありそうです。でもこの問題はそんなに難しくないので対策が講じやすいでしょう。
⑤ 人員、予算、時間、上司の考え方など制約条件が多い
 企業はすべて有限の世界で企業活動をしています。どんな企業でも満ち足りた資源を使って業務をすることはありません。天はすべての企業に平等に制約条件を与えていると考えるべきでしょう。この制約条件を克服できた企業のみがおいしい果実を手に入れることができます。

3.計画の立て方?
◆仕事の立て方の手順
 計画は以下の六つのステップでサイクルが回されることになります。実務的には第六ステップの「確かめる」ことを第一番にすると良い計画ができます。実施結果の反省のない計画は現実味に欠けることが多いからです。
第一ステップ 目的を明確にする。
        目的を明確にすることがとても重要です。計画の七割は目的の有効性で決まるといっても言い過ぎではありません。
第二ステップ 事実をつかむ
       当たり前のことですが、事実でない情報をいくら積み上げてもいい結果をもたらしません。誰でも事実でない情報を計画に使わないと思っているのですが、問題は事実と信じて疑わないデータや情報が事実でないことが多いのです。計画に使用する情報は必ず複数の検証をして使用しなければこのような罠にはまってしまいます。
第三ステップ 事実について考える
       事実は決して鵜呑みしないことです。
例えば、他社で成功しても自社で成功するとはかぎらないことです。むしろ、他社の成功事例をそのまま導入しても自社では成功しないと言った方が正しいかもしれません。計画することと考えることは切っても切れない関係であると言えましょう・
第四ステップ 実施方法を決める
       計画の内容が決まったら、目標を実現する手順を明確にします。仕事は
一人でやることもありますが大抵はチームで行います。関係する各人がいつまでにどんな役割を担い責任を持つか明示する必要があります。
第五ステップ 実施する
       実施するうえで大切なことは計画通り実施することは言うまでもありま
せんが、加えて柔軟に対応することです。往々にした机上プランは実務
につなげると通用しないことが多いものです。ここで大切なことは目的
と手段を間違わないことです。私たちはあくまでも計画の目的や目標に合致する最適な手段を実施途中であっても柔軟に選択しなければなりません。
第六ステップ 確かめる
       実施結果は必ず測定し成果を把握し反省します。ここは改善の宝庫だと言っても過言ではないでしょう。また次回以降の計画策定の貴重な情報を得ることができます。冒頭に計画策定は反省から始まると述べたのはこの意味です。
4.計画を策定する時に留意するポイント
 今までのことをまとめると以下のようになります。
 ポイント1. いくつかの案を立てその中から選択すること。
 ポイント2. 「六つの疑問」(5W1H)で落ちなく具体的な計画すること。
 ポイント3. 変化に対応できるよう柔軟な計画を立てること。
 ポイント4. 創造力を働かせて革新的な計画を策定すること。
 ポイント5. 進捗状況を点検する方法を取り入れた計画を策定すること。
 ポイント6. 実行に関係する人々の立場や気持ちを考慮した計画にすること。

5.計画策定による効用
効用1.思いつきや推量で仕事を進めることがなくなる
効用2.些細なきまりきった仕事が優先し、重要な仕事が後回しになったりしなくなる
効用3.あらかじめ問題点がつかめないようなことがなくなる
効用4.実施や検討の際に無理、無駄がなくなる。


キャリアプログラムについて

 春節が過ぎてあっという間に三月を迎えました。いよいよ間もなく春本番を迎えます。
春は芽吹きの季節です。すべての物が動き始め伸びる季節でもあります。ビジネス社会では人事異動の季節を迎えます。
 今回は人財育成の大切な施策であるキャリアプログラムについて考えてみたいと思います。キャリアというとこれまで積んできた職歴という過去形のイメージが強いのですが、本来は成功の連続を意味する未来志向概念です。これから将来に向けてどのような職務を経験して自己成長させてゆくのか計画することをキャリアプログラムと言います。そのためには自己の職務適性を正確に把握する必要があります。これをキャリアアセスメントと言います。人間は管理職向きの人と専門職向きの人とに大別されます。自分がどんなタイプなのか客観的に把握することがとても重要でタイプに沿った自己の成長計画を持つことが成功への近道になります。
 キャリアプログラムを専門的に定義すると以下のようになります。
 「企業目標と個人目標を統合させ、長期的視点で経験教育と知識教育をバランスさせる人材開発プログラムである」
 経験教育とは人事異動を通じていろいろな職場を体験し学習することを言います。知識教育というのは経験する職務の遂行能力を高める知識を習得することを言います。どちらか一方でなく両方を個々人の成長段階にマッチさせることがカギとなります。能力の蓄積にはどんな順序で経験しそれに合わせてどんな知識を習得するのか学習の原則があるからです。
1. キャリアプログラムの意義について
キャリアプログラムには意義が三点あります。
① 長期的な人材育成プログラムである。
会社の長期ビジョンと連動させ、5年から10年の開発期間を設定する。
② 総合的な人材育成プログラムである。
OJT(職場内教育)プログラム、OFFJT(職場外研修)プログラム、自己啓発プログラムを体系化して個別に運用するのではなくトータルで推進する。
③ 統合的な人財開発プログラムである。
前述したように経験教育と知識教育をバランスさせ相互に補完関係を確立して学習効果を最大限発揮させる。
2. キャリアプログラム導入の目的について
① 自分で考えた成長目標とキャリアプログラムを連動させる。
② 若手育成や40代のマンネリ化した社員の再点火をねらったポジティブなジョブローテーションを制度化する。
③ 上司のコーチングで部下に考えさせる能力、問題解決能力を醸成する。

3. キャリアプログラム導入のメリット
① 社員に個人的な計画を作る機会を提供することで能動的なキャリア管理を行える
② 社員に対して長所と短所と能力開発ニーズを提供することで自己啓発を刺激することができる。
③ 組織内外のキャリアの選択に関してキャリアパスを形成するための自己啓発情報を提供することができる。
④ その結果人材活性化された組織風土を形成することができる。

4. キャリアプログラムのフレームワーク
① キャリアコース
上司やキャリアカウンセラーとの対話を経て下記のキャリアアンカーからコースを選択する。ただし一度選択したコースは永久のものでなく定期的に見直す。
五つのキャリアアンカー
 スペシャリストコース(技術職)
 ゼネラリストコース(管理職)
 プロフェショナルコース(専門職)
 ベンチャーコース(起業職)
 ローカルコース(地域職)
② キャリアパターン
•  キャリアフィールドごとにどの職務(職位)からどの職務(職位)に異動もしくは昇進できるのかの経路を明確にする。
 職務(職位)のタイプ、数、職務間の関連性
 同種職務内の上位レベルに進む場合、同一キャリアフィールド間の多種職 
務に移る場合にそれぞれ必要とされる経験と知識教育の内容とレベル
 キャリアカウンセリングで業績の評価、長期と短期の2つキャリア目標を設定する。
 個別訓練スケジュール、育成のための業務割り当てスケジュールを決定する
 キャリアレベルに応じた教育体系を明示する

③ クリティカルパス
 クリティカルパスとは長期ゴールに到達するために欠かすことのできない職務もしくは職位経験。
 クリティカルパスはあらかじめキャリア開発センターで設定したものを社員に公開する。
 どのキャリアコースにも必ず1か所以上設定する。

④ キャリアサイクル
 ローテーションサイクルは特に決まったものはない。
 標準的には2年から3年とされている。
 個人ごとに学習力に差があり、経験法則で決められている
 若い世代ほどキャリアサイクルは早く年次が高くなるにつれてサイクルが遅くなっている

• 5.まとめ
•  キャリアプログラムの構築と運用は人事管理スキルの中でも最高度に難しいスキルである。しかしながら、長期的視点から人材育成すには避けて通れないスキルであるともいえる。ぜひ検討されることを進めたい。


春節明けに事業活動が本格稼働その②

 2019年の春節も明けました。中国全土で四億人ともいわれる大移動が大都市に向かって始まっています。帰省した人たちがUターンしてきて上海も再び活気を取り戻しています。故郷で心身ともにリフレッシュした人々の表情は仕事への意欲にあふれています。
 実は私もその一人です。故郷の山西省太原市で両親と春節を祝いました。ところで私は帰省中にとても感銘を受けた出来事と出会いました。
 それは、なんとかつて日本留学時代に知り合った旧知の中国人の友人と連絡がとれたのです。その方とは東京のレストランでアルバイトをしていた時に知り合いました。20年以上前の話ですがとても頑張り屋さんでしたので私の心から離れることは一度もありませんでした。その方を仮にAさんとしましょう。人は誰でも仕事をはなれた緩やかな環境に身を置くとこれまでの懐かしい日々の思い出が甦ります。
 「Aさんは今どうしているのだろうか」とふと私の頭をよぎりましたのが今回の再交流のきっかけでした。WECHATで連絡を取り合ったのですが、なんとAさんは今アメリカのニューヨークで幸せな生活を送っているとのことでした。
 日本にいるときは朝から夕方までは工場で汗にまみれて働き、夜はレストランでアルバイトする一日14時間も労働する過酷な日々でした。また、一間に三人も入居するアパートで切り詰めた生活をしていました。
 実はこれには深い訳(わけ)があったのです。Aさんは、自分は学歴がなく異国での厳しい逆境と戦いながら苦しい思いを募らせていましたので、一人娘にはアメリカの大学の医学部に進学させて医者にすることが人生の目標だったのです。そして、かれはその目標を達成するために生活のすべてを「娘を医者にする」との一点に集中させました。
 なんと、Aさんは目標を見事に成就させていました。娘さんはアメリカで医師の資格を取得しニューヨークの病院に勤務、結婚もして幸せな家族を築いているとのことでした。Aさんの話を伺って、日本時代の想像を絶するばかりの苦労を知っているだけに、私は打ちふるえるばかりの喜びに心が揺さぶられました。
 Aさんから目標をもって生きることの大切さを思い知らされました。これほど飽くなき目標達成行動を実践して成功した人をAさんの他に私は知りません。まさに「素晴らしい!」の一語につきます。
『成功とは目標を設定して達成するプロセスを繰り返し続けること!』
 これはSMIという自らのセールスマンの体験を教育プログラムとして開発し事業化して実業家としても成功したアメリカ人のポール・J・マイヤーの言葉です。マイヤーは成功とは単に経済的豊かさを獲得することではなく目標を達成するプロセスに成功の秘訣があり、成果はあくまでも結果でしかないと提唱しています。
 今年の春節はAさんが私に何よりも大切な「目標を持って生きる」というプレゼントをしてくれました。この一年、否(いな)、これからもずーっと私の座右(ざう)の銘(めい)として心の灯(ひ)を点(とも)し続けたいと思います。
 Aさんに勇気と元気をもらい、今年の残された二つのエンジンを前回の第一エンジンマーケティング革新、第二エンジンのマネジメント革新に続き述べたいと思います。

第三エンジン:サービス革新
2019年度はすべての顧客に「正銘サービス五つのお約束」を実践します。
以前にご紹介した通り「正銘サービス五つのお約束」とは以下の通りです。前回より詳細にご紹介させていただきます。
◆正銘サービス五つのお約束
①制度が軌道に乗るまで責任を持ちます。
 制度は作ることが目的ではありません。制度改革は作りっぱなしで終わることはあせん。軌道に乗るまで面倒を見ます。
 このサービスの実践を決意したのは多くの企業で多大な労力と資金を投入しながら新制度を作成しても導入できない場合と導入しても定着させられない場合との二つのケースがあります。私たち正銘はその理由を明確に把握しています。必ず軌道に乗せるまで支援し続けます。

②貴社の発展に貢献する制度を導入します。
 新制度が機能して貴社の発展に貢献して初めて意味を持ちます。貴社の発展に貢献しないものはすべて排除します。
 私たち正銘の人事労務事業の存在意義はお客様の事業の発展に貢献することだと認識しています。制度がいくら立派であっても企業の発展に貢献できなければ何の意味もありません。貴社の組織風土、管理職や社員の能力を把握しレベルにあった使いこなせる制度構築をします。

③貴社のどんな注文にも応える制度を導入します。
 正銘は基本的にお役立ち業です。お役にたってこそ存在意義があります。
痒いところに手が届くというのが正銘のサービス精神です。お客様のどんな無理難題と思われる要求や要望にも誠心誠意を尽くします。お客様のわがままと言われる要求にもこたえます。不可能を可能にするのが正銘のサービス精神の一つでもあります。

④貴社にのみ通用する制度を開発し導入します。
 貴社のためのフルオーダーメイドの制度を構築します。貴社の職場風土になじむオンリーワンの制度を構築するのが正銘の信念です。
 人事制度ほど汎用性の利かない仕組みはないと思います。それは一人ひとりの社員が唯一の人格の持ち主であるように法人である企業組織も組織風土という唯一の法人格を持っているからです。従って正銘は貴社の現状をきめ細やかに調査し貴社の組織と個人の能力を把握し最適な貴社にしか通用しない制度を設計し導入します。

⑤どんな問題にも逃げずに対応いたします。
 貴社内で発生する人事労務問題はすべて真正面から受け止め解決します。問題から逃げることは絶対にありません。
 貴社内で発生する問題に解決不可能な問題が発生すことが絶対にないというのが正銘の信念です。もちろん正銘が独断的に対処することはありません。貴社と正銘がしっかりと信頼関係を構築して協働して進めることが前提です。

第四エンジン:コンサルティングスキル革新
 正銘には大きく三つのコンサルティングスキルがあることはすでに紹介しました。
第一は組織診断スキル
 診断スキルにはさらに三種類のスキルがあります。一つ目はモラール診断、二つ目はマネジメント能力(リーダーシップ)診断、三つ目は報連相診断です。
 今年度は分析処理をシステム化を行い、少なくとも第一段階の簡易診断ではすべての診断プロセスを電子化します。これらはすべてアンケート方式による調査手法ですが一人ひとりの回答も電子入力できるシステムも開発準備を行います。
第二は問題解決スキル
 組織診断の結果判明した抱える問題を原因究明し解決するのが問題解決スキルです。このプロセスは医学のプロセスに似ています。
 問題解決スキルには二種類のスキルがあります。第一は人事制度設計スキルです。第二は組織開発スキルです。
 第一の人事制度設計スキルでは能力本位人事制度を設計します。具体的には社員等級制度(職能別等級基準、格付けガイドライン)、人事評価制度(職能別階層別能力評価基準、能力評価表・職能別階層別業績評価基準、業績評価表)、能力本位賃金制度(月例能力給与制度・賞与制度)を設計します。
 第二の組織開発スキルでは組織の三要素(ハードウエア・ソフトウエア・ヒューマンウエア)ごとに問題解決案を企画し提案します。解決案策定のポイントは診断結果を正確に把握することです。診断結果にマッチしない解決策は内容がいかに正確を得ていたとしても無意味です。このように正銘が提供するコンサルティングスキルは論理的で科学的な手法であると自負しています。
第三のスキルは経営品質診断スキルです。
 経営品質というと耳慣れない言葉でご存じでない方も多いと思います。
 経営品質とは良い結果を生む出す経営のプロセスを言います。1990年代のアメリカ再生のカギとなったマルコムボルドリッジ国家経営品質賞を起源としています。どんな企業でもいい結果を出すためにはいいプロセスを持たなければ絶対に実現しません。経営者は誰でも利益はのどから手が出るほど欲しいのですが利益を出すための仕組みには無関心です。経営品質診断では「人財の視点」「プロセスの視点」「顧客の視点」「財務の視点」から経営の有効性を検証します。正銘は経営人事という通常の人事管理から視野を広げて経営から見た人事管理を提唱していますので経営品質診断は不可欠なコンサルティングスキルなのです。
 2019年度の正銘のコンサルティングスキル革新の目標はこれらのスキルを正銘メソッドとして体系化することです。
 冒頭に引用させていただきました通り「目標を持って生きること」を法人である正銘と一人ひとりの社員の行動指針とすることで激動の時代を乗り切りたいと思っています。
 2019年が皆さんにとり輝かしい年でありますことを衷心より祈念します。


春節明けに事業活動が本格稼働その①

 2019年が明けてから一段と寒くなりいよいよ冬本番を迎えることとなりました。皆様その後お変わりありませんか。
 春節を前にして、この時期の上海ではどの交通機関のターミナルも背中にナップザック、右手に大きな旅行鞄、左手には土産の紙ケースを持って足早に乗り物に向かう帰省客でごった返しています。故郷へ帰るどの人の表情も家族と再会する喜び、仕事をやり遂げた喜び、幼馴染と久しぶりにバカ話に興じる喜びに眼が輝いています。これは、毎年大都会上海で繰り返される春節前の風物詩ともいえる光景です。
 中国では政治も経済も社会も一年のサイクルは太陽暦よりも春節で始まる旧暦のサイクルが今でもしっかりと根付いています。
 というわけで、2019年の本格稼働は春節明けの2月11日からになりそうです。正銘も春節明けから本格的な活動を始めます。
 前回のブログでは「年頭所感」を述べさせていただきました。今年度の正銘は「巡航飛行へと加速させる年」と位置づけ「四つのエンジン」で推進することも述べました。四つのエンジンをもう一度確認させていただきます。いずれも「革新」がテーマになっています。
第一エンジンンは「マーケティング革新」です。
第二エンジンは「マネジメント革新」です。
第三エンジンは「サービス革新」です。
第四エンジンは「コンサルティングスキル革新」です。
 今回のブログでは年頭所感をより具体的に述べたいと思います。

「マーケティング革新」について
 第一の革新は正銘のマーケティング活動エリアを革新します。
 これまでの正銘のコンサルティング活動の範囲を上海市とその近郊都市に加え内陸部の有力都市へと拡大します。中国における沿海州と内陸部の経済格差は指摘されてから久しいのですがこの経済格差を無くすために政府主導で内陸部の開発に取り組んでまいりましした。その結果、武漢をはじめ有力都市では著しい発展を遂げました。新しく開発された地域は日欧米をはじめとする有力企業が進出し有望事業機会が生み出されています。
 このまま発展を続ければ内陸部で沿海州と並ぶ経済圏が出現することになるでしょう。正銘はこれらを商機と捉え2019年度の営業活動を展開します。正銘のモットーはお客様に来てもらうのでなくお客様のところに出向くことです。今後もこのお客様に寄り添う姿勢を堅持し続けたいと思います。
 第二の革新は顧客ターゲットを中国国内企業に拡大します。正銘はここ数年労務管理から人事管理へと人事労務管理の革新を提唱してきました。これまでの中国国内企業や日系企業は労務管理が主流でした。つまり、集団管理が中心でしたので社員等級制度や人事評価制度を必要としませんでした。もちろん、人財育成制度もありませんでした。低コストの豊富な労働力が確保できたからです。しかし、今や時代が変わりました。沿海州などでは高コスト人材不足時代を迎えることになったのです。正銘がこれまで日系企業で培ってきた能力本位の人事管理制度を中国国内企業にも積極的に展開します。労働力を単に人手とした時代から人的資産とする時代へと変化したしたのです。
 第三の革新はお客様への情報提供の革新です。
 これまでは、お客様には正銘が公開セミナーを通じて単独で情報提供することが主流でした。2019年度からは友好企業との連携による情報提供の場を設定します。加えて一方的ないわゆるセミナー形式による情報提供でなくワークショップ的な情報提供、懇談会風の対話型の情報提供の場も作りたいと考えています。

「マネジメントの革新」について
 私はお客様の管理職や監督職の中堅幹部の皆さんにマネジメント能力向上の研修プログラムを担当しています。マネジメントについては人様よりは知識も経験も豊富にあると自認しています。しかしながら、実務面でマネジメントを行うことは言うほど生易しいものではないことをしみじみと感じるこの頃です。正銘の経営に携わってから7年経ちました。この間に最も苦労したのはマネジメントだと言っても言い過ぎではありません。前回も述べましたようにマネジメントの定義はいろいろありますが、私は「マネジメントとは部下が自ら心のエンジンを始動させて上司から指示されなくてもあるいは上司がいてもいなくても目標に向かって前向きに挑戦する職場環境を作りあげることである」と信じています。
 では実際にどうすれば部下が自立してこのような行動のできる職場にすることができるのでしょうか。私は「目標による管理」を置いてほかにないと思っています。2019年度のマネジメント革新はこの一点に集中したいと思います。
 目標による管理を導入する目的は次の三点です。


第一は全員参画による業績向上への取組みです。
 マズローの欲求5段階が示すように個人欲求には高度な欲求と原始的な欲求に分かれますが、私たちが注目しなければならないのは高度の欲求です。
 現在のような高度文明社会では「自尊欲求」や「自己実現」

の欲求が主流になります。その中身を見ますと右図にありますように「自己実現の欲求」では能力を発揮したい、自己啓発を続けたい、創造的でありたいという事ですし、「自尊の欲求」では認められたい、自信を持ちたい、独立したい、達成したいという内容になっています。何れも参画意識に関係する欲求内容です。
目標による管理では自ら自主的に目標を設定し、自主的に達成プロセスをコントロールします。人間の持つ究極の欲求を充足するマネジメントシステムであることが分かります。
第二点目は面談による上下の円滑なコミュニケーション
 目標による管理は面談に始まり、面談に終わるといっても過言ではありません。また、通常のコミュニケーションでは上司が一方的に話すことが多いのですが、目標面談では上司は聴くことに徹しなければなりません。
 上司と部下の業務上のコミュニケーションでは、普通95%以上を上司が話し、5%しか部下は話さないと言います。目標管理の面談では95%以上を部下に話させてください。目標面談のことを別名目標カウンセリングとも言います。本格的なカウンセリング場面ではカウンセラーはただひたすらクライアントの言葉を聴き続けます。カウンセラーはほとんどしゃべりません。クライアントが沈黙してもじっとつぎの発言を待ちます。
 目標面談でも上司はカウンセラーとほぼ同じような態度が求められます。また、部下が発言しやすい環境を作るのも上司の大切な役割です。

第三点目は目標達成行動による能力開発です。
 目標による管理では自主性が非常に重視されます。たとえば、目標設定も原則的には自主的に設定します。目標設定後の達成プロセスも自主コントロールが原則です。このような目標管理システムが目指す「組織の束縛」からの開放と言うすばらしい狙いを理想論と思われる人がいるかもしれません。そのような人は基本的に「人は成長を求めることが本性であること」を信じていないからです。
 人は誰でも押しつけられたことにはあまり責任を感じません。自ら決めたことに対してはそれが規則である場合は守ろうとしますし、目標である場合は達成しようとします。そして、より高い目標やより厳しいルールに挑戦する意欲が湧いてくるのです。スポーツ選手が暑くても寒くても記録の達成を目指して苛酷な練習にひたすら耐えられるのも自ら設定した目標だからです。そして、その目標に向かって、監督やコーチの厳しい要求や指導に耐え練習を重ねます。私たちのビジネスの場も全く同じことなのです。目標達成プロセスは自己を磨くプロセスでもあるのです。
 第三エンジン「サービス革新」と第四エンジンは「コンサルティングスキル革新」は次回に紹介させていただきます。


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