「2019年も残り10日余りとなりました

月並みですが本当に「光陰矢の如し」です。つい最近2019年を迎えてと思ったらもう2020年が間近に迫ってきました。前回のブログでは2019年を振り返りましたので今回は2020根を展望したいと思います。
まず、中国と日本の共通の文化である干支から話を始めたいと思います。来年の干支は庚子(かのえね)です。日本では来年の2020年は「令和」になって初めての年明けになりますね。干支も最初の「子(ね)」で迎えることになりました。
それでは来年はどんな年になるのでしょうか。干支から見た2020年は「命の始まり」という意味を持つ「子」と変化の予兆という意味を持つ「庚」と組み合わされる2020年の「庚子」は、変化を求めて新しい事にチャレンジするのに良い年になると言われています。
それにあやかって正銘も「積極的に挑戦する年」と位置付けたいと思います。

2020年の事業方針
2020年の事業方針を以下の三点とします。





方針1.人事労務事業の深耕と主力事業への進化
 正銘が人事労務事業に本格的に進出してから3年経過しました。進出した3年前はちょうど労務管理全盛時代から人事管理の時代への分水嶺に当たる年だったと思われます。
時あたかも華東地域は人件費の高騰と労働力不足時代を迎えようとしていました。加えてその勢いは黄河のごとく濁流かつ急流でもありました。
労務問題の後処理に翻弄されていた各企業は一気に人手不足に翻弄されるようになりました。各企業も人事の量から質への転換を迫られるようになったのです。そこで、たちまち、人事労務の専門部署の設置が要請されるとともに人事担当者の配置が求められるようになりました。
労務管理時代は大量に採用し大量に離職しても大きな問題にはなりませんでした。労務管理は集団管理ですから人事評価などの個別人事管理制度は必要ではありませんでした。給与や賞与もほぼ平等主義でした。人材を育てる必要もなければ人事を取り扱う部署も必要がなかったのです。
正銘が人事労務事業を本格稼働させてからのこれらの一連の環境は様変わりしました。そこに正銘の事業機会があったことも事実です。既存事業の経営で振り回されていた私は通関物流事業のみでは将来リスクが高すぎると思い人事労務事業進出を決意しました。このあたりの心境は以前にもこのブログで述べましたので割愛させていただきますが周りから理解されないこともあり大変な思いをしたことが今では懐かしい思い出となっています。
 人事労務の本格展開をしてからの3年間を振り返ってみますと新しい事業を軌道に乗せるには並大抵の努力では難しい、鉄の意志と信念がないと成功は覚束ないと思います。しかしながら、事業の定義を見直さなかったら既存事業の陳腐化とともに企業が没落するだけです。2020年は大事に育ててきました三年前に産んだ子をいよいよ大きく羽ばたかせるせる年だと認識しています。ノウハウも実績も蓄積されました。あとは行動するだけです。

方針2.営業力の強化で新規エリアと新規顧客の積極的開発
 専門能力を高めるには狭い範囲だけれど深く掘り下げることが大切だと言われます。2020年は人事労務を専門事業として深堀する代わりにこれまでの活動エリアを上海やその近郊エリアに限定せず活動地域を拡大して取り組みます。
コンサルティング事業はお客様に来ていただくビジネスではありませんのでお客様のところへ出かけてゆくことが大切です。
マーケティングにはご案内のように4P4Cという考え方が普遍的に定着しています。
ちなみに4Pとは「商品開発」、「価格設定」、「流通」、「販促」であり、4Cとは「顧客価値」、「経費」、「顧客利便性」、「コミュニケーション」です。この考えで当社を振り返ってみますと4Pでは「流通」(Place)と「販促」(Promotion)、4Cでは顧客利便性(Convenience)とコミュニケーション(Communication)に課題があると認識しています。
新事業成功の要諦の一つに積極的なマーケティング活動がありますがこの点もかけていたのかなとこれまでの活動を反省しています。
今やっと事業基盤が確立されましたので積極的マーケティング活動を転嫁する絶好のタイミングが来たと満を持して2020年度に備えているところです。

方針3.即戦力となる人材確保とチーム力の強化
 企業は人なりとは言い古された言葉ですが、もともとコンサルティング事業は人以外の資産を必要としない事業です。とりわけ正銘のようにこれから成長してゆく若い企業では人材の確保が企業全体の成否を左右します。
加えて、企業が抱える問題もますます複雑化、多様化、高度化してきています。これらのお客様のニーズに応えるためには深い専門性と柔軟な思考力、独創的な発想が求められます。さらにいかに専門性が深くても個人で対応するのには限界があります。一匹狼で通用する時代もありましたが個人プレーの時代は去りました。プロジェクトチームで常に団体戦で戦える人材が必要です。
コンサルティング会社の業務ほど思考力が求められ、また思考力が鍛えられる仕事はないと思います。創造力を発揮してお客様の困っている問題を解決して喜ばれる顔を見るときほどこの仕事をしてよかったなあと感じるときはこれまでのすべての苦労が吹き飛ぶ瞬間です。このような瞬間を共有できる同志を心より歓迎します。


新しい人事制度をスムーズに導入し定着させるには

新しく人事制度を改革し新制度を導入定着させるには容易なことではありません。私たち正銘は上海で本格的に日系企業の人事制度改革に取り組んでから三年が経ちました。まだ三年しかたっていないのかという思いと三年もたったのかという思いが交錯しています、
というのもこの華東地域における日系企業を取り巻く経営環境がドッグイヤー的で劇的に変化しているからです。ある企業の経営者の言葉です。これまでは100人採用するのに1000人の応募者があった。ところが最近では10人採用するのに三か月もかかる。だから人を辞めさせない人事をしないといけない。同席していた人事担当者もこれからは人財育成の時代だと語っていたことが印象的でした。
これまでは大量に採用して大量にやめさせてしまう。荒っぽい労務管理がまかり通っていました。社員の定着率が50%を切る企業は珍しくありませんでした。社員を労働者とひとくくりにして集団管理するのが労務管理です。極端に言うと会社は社員の肉体的労働力をのみを必要としていたのであって社員の個別の頭脳労働を必要としていませんでした。能力という概念がそもそも存在していなかったのです。組織的に言っても財務のない企業はないのですが独立した人事担当部署がない企業がほとんどでした。労務の仕事と言えば勤怠管理か給与計算しかなかったからです。
ところが先に述べましたように地殻変動ともいうべき変化が華東地区の企業を直撃したのです。その最たるものは人件費の高騰と人材不足でした。これらの変化を先取りして人事革新に取り組んでいる企業も少なからずあります。正銘が人事管理に本格的に取り組んでからこのような企業を支援してきました。昨年度からの取り組み事例を紹介します。
正銘の人事革新支援は次の四つのステップに区分できます。
第一ステップは調査分析です。社員の意識を調査します。
第二のステップは制度企画です。最適な制度を企画します。
第三のステップは制度導入です。制度を実際に適用します。
第四ステップは制度定着です。制度を馴染ませ習慣化します。
今回取り上げますのは第三ステップと第四ステップの実際例です。昨年は第一ステップと第二ステップを取り組みました。正銘と企業が信頼関係の下、定期的な進捗会議を開催して制度企画に取り組んできました。
◆新しい人事制度導入に対する社員の反応
新しい制度の導入には社員から三つの反応が示されました。

①改革そのものに対する不安がありました。
それは改革そのものが未体験だからです。未知なことばかりだからでもあります。
人事というのは社員にとり最も身近でなことですが、反面最も不可解なことでもあるのです。
②変化への抵抗感がありました。
人間はだれしも新しいことに対する抵抗本能があります。これは保守本能の裏返しでもあります。現状に不満を持ちながらも現状維持の安住本能も頭を持ち上げてきます。一見矛盾するようですが機械でない人間らしさが表出したのでしょう。これまでのように決定事項のみを知らされ、事項を強制されることに対する本能的反発もありました。

③硬化した社員の気持ちを態度変容させる切っ掛けがありました
第一の切っ掛け「2対6対2の原則 
社員の理解と協力を得るためのワークショップを開催することになり、最初の会合で
この原則通りの社員の態度が確認できました。積極的に進める人2割、どちらでもない人6割、反対の人2割と見事理論通りに分かれました。この区分の態度の特徴をとらえて対応することにより次第に和らいできました。
第二の切っ掛け「話せばわかる」
  誰でも疎外されたり無視されたりすることを嫌います。無視されれば反発したくなります。相談を受けると真剣にその問題を考えて自分なりの解答を寄せてくれます。ワークショップはその最適な舞台となりました。
第三の切っ掛け「参画こそ最高の良薬」
  経営問題を含め人事などの改革は社員に参画を求めることは決定事項だけでなく決定後の運用を効果的に進めるうえでとても有効です。ワークショップは参画意識を醸成する最高の方式であると思われます。
 
◆2019年コンサルティング活動を通じて得た教訓

①今日の現状を変えるには過去を清算しなければならないということです。
第一は悪しき慣行の原因究明することは絶対条件です。
 第二は悪しき慣行を是正するにはその慣行が継続した同じ時間必要します。
第三は自分以外の誰かが悪いという他責意識が変化受容の足かせになっていることも修正しないといけないと思います。

②現象面の裏にある本質を見抜かなければならないことは重要です
人間はすべて意識的であれ、無意識的であれ筋書きのないドラマを演じています。事実を覆い隠すために、自分をよく見せるために演技しています。ルール違反は会社や上司がどこまで許容されるのか部下は常に試しています。それが拡大してルールと乖離が発生して慣行化し習慣化して悪しき慣行になるのです。習慣化する前に見て見ぬふりをせず断ち切ることが大切です。前任者の認めたものでもそのまま踏襲できるものとできないものがあります。理にかなったものでなければ敢然と断じて認めないよう直ちに修正すべきです。

③現場は常に経験法則の積み上げにによって検証されてゆきます
誰が正しいのかでなく何が正しいのかを考えることが多雪です。誰が正しいかで考えると情に流されます。何が正しいかで考えると理に適った行動をとることができます。それと現時点で正しいことはいつまでも続くとは限りません。時代が変わると正しいことでも正しくないことに変わります。正しいと信じて正しくない行動をとり続け企業を没落させた事例はいくつもあります。
また、机上の理屈は現場で通用しないというのも嘘です。優れた理論こそ現場で実践し経験法則にまで磨き上げることが大切なのです。

3.2019年のコンサルティング活動を通じて成果につながったこと
①ワークショップで社員を巻き込んで新制度の中身を検討できたことです
今年度の成果は何といってもワークショップで個人も集団も態度変容を実現できたことです。人は討議を通じて頭が柔軟になり創発的態度をとるように変身する。これは脱皮というよりぜい変に近いと思います。甲殻類は殻を脱皮して成長しますが昆虫はさなぎが蝶となるよう変体します。人の態度も変体はしませんが全く別人になったように変わることがあります。そのような様子を私はあえてぜい変と呼びたいと思います。

②新制度の理解が深まるとともに参画意識が格段に進んました
ワークショップの主たる目的ではありませんが、ワークショップを通じて社員の部門を超えた横のつながりが強化されました。講義形式の通常の研修ではこのように集団は進化しません。ワークショップならではの特徴です。集団凝集力が高まった何よりの証拠です。 また、自分だけでなく職場全体に浸透させる機運も高まりました。

④自社だけでは制度改革が進捗しにくいことを顧客企業に理解してもらえました
緊急でないが重要な事項が先送りされることが実務の社会で多発するが改革への取り組みであることが分かってもらえました。
緊急かつ重要事項が日々に降り注ぐ中で緊急でない業務は先送りされ、何も手が付けられないまま次年度を迎えることがどの企業でも見られることです。
社内で人事企画ができる社員がいないので問題意識はあっても具体的に着手できないままになっていたとかいくつかの理由付けがなされていますが会社自体に推進力が働かないのです。

2019年のまとめとして新制度を絵に描いた餅に終わらせず導入定着の取り組みに深耕できたことが大きな成果だったと思われます。人事制度の改革を受注したら導入定着まで支援するコンサルティング企業が少ないが正銘は定着するまで責任を持つのが特徴です。
2019年度もまさにこの取り組みを行いました。理解することと実践することは全く異なるので根気よく指導することがとても大切です。
長らく浸りきった慣習を変えることは至難の技です。しかしながら、不可能なことはなく必ず変化するという信念の問題であることがよく認識できた2019年度の活動でした。


「2019年は正銘にとってどんな年だったのか」

早いもので2019年度もあと残すところ50日余りとなりました。上海では昨日11月5日、60か国が参加して第二回中国国際輸入博覧会が盛大に開幕しました。ますます、発展する中国経済を目の当たりにして正銘の事業の将来に揺るぎ無い確信と信念を持って取り組まなければならないと改めて決意した次第です。
ところで昨年2018年度は正銘にとってどんな年だったのでしょうか?
2018年12月第二週のブログを振り返ってみました。
2018年度の正銘の実績として大きく次の三点に集約していいます。。
第一は人事労務事業の基本戦略が確立できたことです。
第二は能力本位人事管理制度のコンセプトを構築できたことです。
第三は新戦略及び新コンセプトを実際に現場で実践して手ごたえが得られたことです。

第一の基本戦略に関しては3年間温めてきた人事労務事業が確立でき、これまでの基幹事業であった通関物流事業と大きく二本柱での経営体制を築き上げることができました。
人事労務事業の三本柱は「人財育成事業」「人事諸制度改革支援事業」「組織活性化事業」です。
第二の能力本位の人事管理のコンセプトに関しては労務管理と早期に決別することを訴えました。
「能力主義」ではなくあえて「能力本位」人事管理制度を提唱し始めたのは世界的にみても正銘が初めてだと自負しています。能力本位とは「企業にとり人事管理上の最高価値を「能力」に置くことを意味しています。能力主義にはこのような強い意味はありません。
別の言葉でいえば、人事管理上のすべての判断基準を「能力」に置くことです。人事評価制度や人事処遇制度、人財育成制度などすべての人事諸制度は能力を基準に決定され運用されることになります。
第三の新コンセプトを実践して手ごたえを感じたことに関して申しますと公開セミナーや日常のコンサルティング活動を通じてお客様から納得と支持が得られたことを実感しました。

◆2019年度はどんな年だったのでしょうか。
年初では正銘の課題は以下の三点と認識していました。
第一は人事労務事業を「起業期」から「発展期」へとシフトさせることです。
第二はそのためにも人財の量と質を充実させることです。
第三は積極的なマーケティング活動の実践です。

2019年度は上記の課題を一言で言いますと「能力本位の人事管理制度の深耕」の年だったと思います。具体的な実践活動を振り返ってみたいと思います。

第一は能力本位の人事制度構築の実践活動です。
これは昨年来取り組んできた顧客企業の人事制度改革の事例です。昨年度は能力本位の人事制度を導入する調査、企画、制度設計が中心でした。今年度は2018年度の新人制度案を導入することが主たる活動でした。
能力本位の人事制度は以下の五つの制度で構築されています。
①社員等級制度
②人事評価制度
③人事処遇制度(給与・賞与)
④人財育成制度(研修・異動)
⑤目標管理制度
今年度導入支援した企業を仮にA社と名付けます。新人事制度の柱は社員等級制度ですがA社では三階層と七等級に区分し全社員を格付けすることになります。格付けするためには全社員の能力を把握する必要があります。
そこで人事評価制度を先行させることになります。人事評価制度は評価者の評価能力が最も大切です。人事評価制度の成否を握っていると言っても言い過ぎではありません。
評価者にはいきなり評価してくださいと評価表を送りつけても評価者は戸惑うばかりです。これでは公正な評価が期待できそうにもありません。そこで一次評価者と二次評価者を対象にした評価者訓練を実施しました。A社ではこれまでも人事評価制度は存在していたのですが多面評価の仕組みはなく評価者も限定的でした。従って評価訓練参加者には評価した経験のない人が数多くいました。われわれの実務の世界は経験がものを言います。果たせるかな、これまでに人事評価を経験した人と未経験者とで理解度に大きな開きが出ました。また、人事評価では評価面談が重視されます。被評価者の評価結果に対する納得を得るためにも評価面談を丁寧に行うことがとても重要です。
今後の予定では現在評価期間中ですが今年度中に評価を終え社員等級の格付け完了させる予定です。さらにこれからは給与と賞与に適用されることになります。

第二は人財の量と質を充実させること。
コンサルティング会社にとり人財ほど大切な資源と資産はありません。この意味で当社にとり人材の充実は永遠の課題かもしれません。正直に申しまして顧客に人事管理の情報と問題解決を提供するなりわいである当社であるにもかかわらず最も難しくハードルが高い課題だと認識しています。とりわけ顧客のすべてが日系企業である当社にとって日本文化を理解した人事管理のエキスパートの採用は最重要であり最困難な課題です。
このビッグチャレンジを次年度以降も引き続き継続したいと考えています。
この紙面を借りて有意ある皆様のご参加を呼びかけさせていただきます。

第三の課題は積極的なマーケティング活動の実践です。
事業に成功した経営者の話です。事業成功の秘訣は以下の三つであると…。
第一は優れた事業コンセプトを創造すること。
 これは前述した通り能力本位の人事管理制度のコンセプトを確立するとともに具体的商品でもあるプロセスデザインと導入定着スキルを整えました。
第二は優れた経営者及び経営幹部を担当させること。
今の規模の当社の経営を担当する経営能力を備わった人財は充足できていると自負しています。
第三は顧客に積極的に商品を訴求すること。
2019年度及びそれ以降の正銘の最大の課題はここにあると自覚しています。現場の実践で証明された能力本位の人事管理制度という質の高い商品をいかに正確に顧客に届けられるかどうか正銘が成長軌道に乗せることができるかどうかのカギを握っているといっても言い過ぎではありません。
これまで上海とその近郊エリアをターゲットエリアとして事業活動を展開してきました。
2019年度に初めて華東地域以外にターゲットエリアを拡大しました。今年度はまだ種まきの段階ですが2020年以降本格的に展開する所存です。


問題を見抜ける人と見抜けない人

問題を見抜ける人と見抜けない人
今回は問題をどうすれば見抜けるかについて考えてみたいと思います。皆さんは問題というとどんなことを連想するでしょうか?過去に問題を起こして苦い思いをした経験を持っている方はもう二度とあのようなつらい思いはしたくないと思うでしょうし、反面、問題に直面した時に問題から逃げずに果敢に挑戦し克服した人は自分を成長させてくれたまたとないいい機会だったと前向きに述懐すると思います。
昔から、企業は解決すべき問題の集合体であるとか、企業の競争力は問題を解決するスピードで決まるというように問題に関して格言めいた言葉がしばしば登場してきます。また、問題をどうとらえるかが問題だといった禅問答のような話もあります。
以前にも取り上げたことがありますが「問題とは何か」をもう一度復習してみたいと思います。ここではビジネスする上での問題に限定して話を進めたいと思います。
というのも、問題は私たちの生活すべての領域で日々発生しています。これらをひとくくりにして論じてもあまり意味がありません。

ビジネスで発生する問題は?
問題を把握しようとしてもその範囲が広すぎて問題を定義しにくくなるだけだからです。ここでまずビジネス上発生する三つの問題領域を把握したいと思います。
一つ目は逸脱問題です。これはある一定の基準やルールを下回っている問題をいいます。例えば納品期日や品質基準を下回っていて決められて通りに実行されない状態が続いていることなどがその典型でしょう。二つ目は探索問題です。あるべき姿を設定して現状と比較しその差を把握することによって認識する問題をいいます。この場合あるべき姿を設定しなければ問題が把握できません。例えば、わが社の一人あたりの労働生産性が1万元であるのを1万5千元にしたいと考えた時に5千元のギャップが発生します。このギャップが問題でとなります。
さらにレベルを上げると三つ目に創造問題もあります。戦略問題とも呼ばれています。現状、わが社の業績は一見何の問題もないように見えますが、将来ともに現在の好業績が約束されるわけではありません。そこでこのような好業績の時に今の会社の定義を否定し新たな定義を行うと問題が見えてきます。

問題が見抜けない人はどんな人か?
問題が見抜けない人は問題意識の無い人だと一刀両断する人がいます。確かにその通りだと思われますがことはそう単純にはいきません。
私たちがコンサルティングを通じて得た経験によりますと二つの側面があるようです。
一つの側面は組織的な側面です。その組織や職場全体に基準や標準が存在していない中で育った人。それぞれ個々人が判断基準を持っているのでバラつきが発生しているにもかかわらず基準や標準が無いので誰も気づいていません。では基準や標準があれば問題がすべて見抜けるかということになりますが必ずしもそれで完全とは言えないと思われます。
二つ目の側面は個人的な側面です。自責と他責という言葉があります。自責とはすべて責任を自分の責任と考えることを言います。自責の人はよしんば自分の責任でなくとも自分の責任と考えて対応します。他方、他責の人は責任は自分にないと思い込んでいる人のことです。他責の人は明らかに自分の責任であるのに自分以外の人に責任を負わせます。上司や部下、さらには経営者、会社など周りの人すべてに責任を転嫁します。このような人には問題は見抜けません。

問題を見抜ける人はどんな人か?
問題を見抜ける人とは問題を見抜かない人の裏返しであると単純に考えるのも実際的ではありません。基準や標準の機能している職場で育ち、自責の人が問題を見抜く条件を満たしているでしょうか。確かに問題を見抜く必要条件を満たしていると思いますが十分ではありません。
問題を見抜ける人の必要かつ十分条件は基準や標準の機能している職場で育ち、自責の人との必要条件に加え問題解決の道筋を具体的に描ける人のことだと考えます。
私達ビジネスの社会は学校などのアカデミックの世界と異なり正解は一つしかないのではなく複数存在する社会に生きているからです。単なる問題の特定とその指摘では何の役にも立ちません。


企業の生活習慣病その三 「湯でガエル症候群」について

失敗は成功の母、成功は失敗の母
「人間は一本の葦に過ぎない。自然の中でも最も弱い存在だ。しかし、それは考える葦である」といったのは17世紀のフランスの哲学者パスカルですが、自然界でその人間のみに備わっている考える力を放棄してしまった組織や個人が21世紀になって増え続けているようです。
一流と言われるある企業では特別に大きな経営判断を誤ったわけでもないのにこのところ業績が低迷し赤字転落するのではないかと心配されています。社員は毎日一所懸命働いています。決して怠けているわけではありません。にもかかわらず業績は下げ止まらないのです。皆さんは何が原因だと思われますか。「失敗は成功の母」と言われますが「成功は失敗の母」という逆説もあります。いったん企業は成功を収めるとそれを過信し長らく成功した要因に拘って踏襲し続けます。成功した時の企業を取り巻く環境と現在と全く変わってしまっているのにいったん成功するとなかなか変えることができなくなります。このような状態が続きますと成功した要因と全く同じ要因で企業は没落の道を選択してしまうのです。私は経営幹部の皆さんしかできない企業の陳腐化との戦いを先頭に立って取り組むことが生活習慣病の病を克服できる唯一の道だと信じています。
また、ウチの会社の社員は危機感が乏しい。ぬるま湯にどっぷりとつかっているとこぼす経営者の言葉を耳にしたことがありませんか。いわゆる「ゆでガエル」理論です。かつて欧米ではやりました。これは現代のイソップ物語です。その内容は「カエルをいきなり熱湯に入れると慌てて飛び出して逃げるが、水から入れてじわじわと温度を上げていくと、カエルは温度変化に気づかず、生命の危機を感じないまま茹で上がり死んでしまう」というものです。本当にこのような現象が起こるのかどうかは検証されたのかどうか知りませんが、たとえが面白いので欧米だけでなく地球レベルで広がっています。
ところで、危機感を持っていないのは社員なのでしょうか。社員に危機感がないと言っている経営者の企業で社員にヒヤリングしたことがあります。社員の方々は口を揃えて「危機感がないのは上司です」とはっきり言いました。「上の顔色を見て仕事しているだけです。上がいなければ仕事などしていませんよ」部下は上司のことをよく見ています。昔からよく言われることに「上司は部下のことを理解するのに3年かかる。部下は上司のことを理解するのに三日もあれば済む」と。
確かに上司に危機感がないのに部下に危機感がありうるはずもないと断言できると思います。これも昔からの諺ですが「川の水は下流から濁らない」ということです。
生活習慣病は原因が特定できれば克服することができる。
ではこれらの生活習慣病をどのようにすれば克服できるのでしょうか。病気と同じように原因がわかれば治療することが可能です。
組織が考える力を失った場合の対症方法です。これには私たちが関与したケースがあります、その会社では管理職を含めてすべてに社員に対して、長年。指示したことのみをやりなさいという生活慣習がありそれが組織の隅々に浸透していました。ここにメスを入れることでこの会社では管理職から考える力を回復させることができました。どんなメスをいれたのかはここでは省略します。
組織がゆでガエル症候群に陥った時にどう対処すべきでしょうか。これにはショック療法と構造療法が要ります。ショック療法とは一例ですが、このぬるま湯状態を維持して企業の存続が難しいことを社内に通達します。構造療法とは組織のリストラの取り組みです。これらの取り組みプロセスは別稿に譲ります。
生活習慣業は長年の習慣が組織に定着していることもあり一気の解決することは難しいことが多いです。しかし必ず克服できることも確かです。


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