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企業の生活習慣病その②『あなたの職場は「報連相閉塞症」に陥っていませんか』

前回に続き企業の生活習慣病を取り上げます。企業も個人も長年の生活習慣が病を呼び込む原因となっていることが多いのです。今回は企業にとって活性化のカギを握っている報連相の生活習慣病を取り上げました。
あなたの所属する組織や職場にはこのような現象が生じていませんか。

会社の方針や指示が第一線の現場に伝わらない
お客様の意見やクレームが経営者に聞こえてこない。
経営にとってのマイナス情報が経営者の耳に入るのが遅い。
現場で起こったことが正直に報告されない。
部門間がぎくしゃくしトラブルが多発している。
正直に情報を上げたら上司から叱られた。
同じ室内にいてもメールで連絡し合っている。
組織の中にコミュニケーションをよくするための方針や決まりがない。
組織内では本音の会話ができない。
指示命令を出しても実践されているかどうかの確認がない。

この様な現象が見られたら企業の生活習慣病「報連相閉塞症」に陥っている可能性があります。報連相とは報告・連絡・相談のことです。一口にコミュニケーションと言いますが奥が深くて難しい問題でもあります。また、企業における報連相は人間の血液に相当します。組織の末端まで新鮮な情報を送り続けなければ組織に活力は蘇りません。また、私たちの商品やサービスがお客様にどのように受け止められているのかを把握し改善活動を行わなければお客様はそのサービスや商品に不満を感じ静かに去ってゆきます。一気に顧客が去って行けば気づくのですが徐々に減っていきますからなかなか気付き難いのです。

生活習慣病は企業であっても個人であっても自覚症状がなく、気付いた時には取り返しの無い状況になってしまっているのは共通しています。従って。健康維持の鉄則である早期発見、早期治療が大原則です。

また、私たちは健康を維持するために毎年一回は健康診断を受けます。この定期的な健康診断は健康維持のためには不可欠なことです。それは健康診断によって変化を読み取ることができるからです。今は健康体であっても一年後も健康であるとの保証は決してありません。健康体であり続けるには定期的に健康診断を受け、体の変化を具体的なデータで把握して対応する以外に方法はありません。このことも個人と組織では全く同じです。

一例を紹介しましょう。かつて、顧客だったA社の管理担当の副総経理から当社にこんな相談がありました。副総経理は「わが社の社員は現場の状況を報告しないのです。どうすれば社内のコミュニケーションはうまく行くようになりますかね。報連相に関する研修会を開催したいのですが」と。そこで管理職を対象に報連相の社内研修を開催することになりました。毎月1回開催の六回コースで報連相の現状把握、原因追究、改善策の策定というように本格的なカリキュラムを編成して実施しました。

報連相の現状把握では社員と会社が把握している内容に大きなギャップが存在していることがわかりました。十数名の参加者のほぼ全員が自分たちは報連相をよくやっているとの反応でした。副総経理が把握していることと全く正反対の反応でした。むしろ、上位職位からの報連相がないことに社員は不満を持っていました。このような研修は意味がなという態度がありありです。

前述した通り研修会を6回開催したのですが6回ともすべて出席した社員は20名のうち9名でした。毎回午後1時にセミナーを開始するのですが開始時間にはいつも参加予定者の6割程度しか集まらず、時間が守られていませんでした。研修中も席を立つ人が多く受講態度は非常に乱れていました。このことは副総経理に報告しましたが最後まで改善されませんでした。

最終回は報連相に対する改善策の発表会となりました。総経理も参加されました。開始時間前には参加者全員着席していました。発表終了まで誰も途中退席する人はいませんでした。受講態度も真剣そのものでした。その状況を見て総経理は満足していました。総経理は研修のこれまでの受講生の経過報告をしても聞く耳を持っていませんでした。もし、私たちが指摘することが事実であったとしたらそれを改善するのはコンサルティング会社であるあなた方の役割でしょうと言わんばかりの口ぶりでした。この現状を皆さんはどう感じられたでしょうか。報連相には証拠が残りません。わが社の現状をどうすればその真実を把握できるのか考えさせられました。

以上のように生活習慣が組織に根付いてしまいますと固い岩盤のようになったそれを打ち破ることはとても難しいと思われます。A社のように社員が「よい子」を演じていれば。それを見抜くのはさらに難しくなります。


企業の生活習慣病「悪しき慣行からいかにして脱却するか」

◆皆さんの会社や職場でこんな状況が発生していませんか?
 悪しき慣行は大なり小なりその深刻さは別としてどこの会社でもある話です。では「悪しき慣行」とはどんな状況を言っているのでしょうか。ここで具体例をご紹介しましょう。

 まず、ケース1.です。その会社A有限公司では社内全面禁煙になっています。就業規則に決められていて社内のいたるところに禁煙の張り紙が貼られています。しかし、その張り紙の前で社員は当たり前のように喫煙しています。誰も注意しません。時には注意すべき立場の管理職もその場にいます。しかもその喫煙が常態化しています。

 次に、ケース2.です。その会社B有限公司の就業時間は午前8時半から午後5時半です。これも就業規則に明記されています。毎朝社員の出勤状態はどうでしょうか。毎日、必ず4~5名の社員が8時30分を過ぎてからあわてる様子もなく出社してきます。遅い人は9時近くに出社してくることもあります。フレックスタイム勤務制をどうひゅうしているわけでもないのに、こんな状況がここ数年是正されることはありません。
 そして、ケース3です。C有限公司では会議や社内研修では開始時間の遅くとも5分前に着席することになっています。これは会社の規則で決められたものではなく不文律で決められたものです。不文律とは明確に文書化されて規則でなく暗黙の合意事項のことです。ところが開始時間に着席するのは八割程度で、出席予定者が全員着席するのは毎回10分後ぐらいです。会議が始まっても携帯電話で参加者は席を頻繁にはずします。誰もその状況に違和感を覚えていません。

会社のどこにでもある日常風景を三ケースご紹介しました。皆さんはどのように感じられたでしょうか?
 「ここまでひどくなくてもうちの会社でもこんな状態の部署もあるよ」とか「全く同じ状況だとか」というようにさまざまに感じられたことでしょう。

◆なぜこのような状況が会社やその職場に発生するのでしょうか?
 悪しき慣行が蔓延っている理由は大小さまざまで特定しにくいのですが、代表的なものをここで三点指摘したいと思います。

第一には社内のルールそのものを社員が知らない。
 皆さんはこの項目に対してまさかそんなことはありえないと思われるかもしれません、ところが私たちが現場で話を伺っていますと就業規則は入社の時に少し話を聴いただけで今は全く覚えていないとか、就業規則があることすら知らないというのが圧倒的に多いのです。正確に規則を確認したことはないのだがみんながやっていることをやっていればとりあえず誰からも注意されないというのです。
ことほど左様に社内の知らなくてもいい噂話やデマは瞬時に組織に浸透しますが、社員に必ず知っていてほしい大事なことは組織の末端に行き渡りにくいのです。

第二に社内にダブルスタンダード(二つの規範)が存在する。
 どんな会社でも。社内にはフォーマル(公式)組織とインフォーマル(非公式)組織があり、情報はこの二つのルートで社内を縦横に交流しています。
 フォーマル組織というのは会社の組織図に基づき配置された集団です。インフォーマル組織というのは会社の公式な組織図に表れない集団のことです。例えば、同郷や学校の先輩と後輩の関係ですとか、同じ趣味の仲間やマージャンや飲み友達など会社には多様な非公式集団が存在しています。
 厄介なのはフォーマルルートよりインフォーマルルートの方が社内では情報が早くしかも信頼性や正当性をもって交流することです。会社が公式ルートで方針を全社に浸透させようとしてもなかなか浸透しませんがインフォールルートではそれほど努力しなくても容易に浸透します。いくら公式ルートで一生懸命浸透させようとしても、非公式集団がその必要性を認めなければ社員はそっぽを向いてしまうのです。例えばトップ経営陣が会社の利益確保に懸命になったとしても非公式組織が賛同していなければ成果を出すことが難しいのです、このように公式ルートの力が弱いと社内は非公式ルートの天下となり、会社全体を危機に陥れることもあります。

第三に上位職位がルールを遵守していない。
 こんなことは言語道断だと良識ある皆さんは憤りをもって受け止めるかもしれません。ところが悪しき慣行の大部分は上位職位が発生源となっていることが圧倒的に多いのです。
 諺で「川の水は下流から濁らない」と言われます。まったくあてはまる言葉だと思います。とりわけ、最高経営責任者は心してほしいと思います。かの有名な某自動車の最高経営者ですらこの落とし穴にはまったのですからましてや誰も忠告してくれない「孤高の人」である最高経営責任者の方々は「危機は常にあなたのすきを狙っている」ことを心してほしいものです。

◆どうすれば悪しき慣行から脱却できるのでしょうか?
 ではどのようにすれば悪しき慣行から脱却できるのかについて三点述べたいと思います。

第一点は悪しき慣行の真の発生原因を断ち切ること。
 表層原因を断ち切ってもまた時間がたてば再発します。再発した問題を解決しても再再発します、これではまるでモグラたたきのような様相です。日々に問題の火消しに追われっぱなしになることが必定です。そこで発生した真因を究明し特定して断絶することが再発防止の絶対条件です。かつて消臭剤を作っている会社のコマーシャルに「臭いにおいは根っこと断たなきゃダメ」というのがありました。まさにこのコピーの通りです。

第二点はどんな小さな悪しき慣行でも早期に断ち切ること。
 解決が相当難しい組織の岩盤ともいえるまでに巣食った慣行も本をただせばごく小さな行為から発達してにっちもさっちもいかなくなってしまっているのです。小さいからと言ってみて見ぬふりをしたり見逃したりしてはいけません。決められたルールを遵守していない組織や職場は勇気をもって敢然と立ち向かうようにしてください。

第三に悪の温床に常に警戒し未然防止に心がけること。
 組織には必ず悪の温床があります。そこは悪を発生させる誘惑で満ち満ちています。人間は一人で悪の誘惑に勝てる人ばかりではありません。悪の発生しそうな部署はほとんど特定できますので社内で相互牽制制度や監査制度を充実させて常に光を当て続けることが大切です。
悪事は突如おこることはありません。突如おこると感じるのはそれに気がつかなかっただけです。会社の経営は常に青信号であることはありません。いきなり赤信号になることもありません。必ず青信号が黄色に変わり赤信号となっているのですがそれを表示するアラームシステムがなかったり機能していないからなのです。
 どうか警戒システムの整備充実を行い事故の未然防止を心がけていただきたいと思います。


ワークショップ異業種交流について

 正銘では今年から各地域でワークショップを開催することになりました。ワークショップとは聞きなれない言葉です。
 そこで、まずワークショップについて説明しましょう。ワークショップも一つの研修方式ですが、講師が一方的に講義する研修方式ではありません。講師と受講生が双方向のコミュニケ―ションをとる体験型の研修方式を言います。
それではなぜワークショップ形式による研修を行うのでしょうか
その理由は三つあります。
第一は知識を増やす研修ではなく実務での適用力、応用能力を向上させることにあります。
第二に講師から教えられるのではなく自ら学び取る研修です。自らの鋭利な問題意識で現場での問題解決能力を高めます。
第三に参加者同士の問題意識をぶつけ合い白熱した討議絵を通じて潜在的に持っている創発意識を顕在化させます。



1.ワークショップの目的は?
① 人事担当者の人事労務問題の解決スキルを向上させる
 人事管理業務は採用、人事行政、人財育成、人事企画のどの業務も高度な専門知識や専門技能を求められています。
 人事業務を素人でも行える時代は完全に去りました。それぞれの業務の基礎から応用できるまでの知識を体得できるワークショップとします。
 セミナーに参加したり、独習するよりはケーススタディや討議を中心にした創発の学習方法のほうがはるかにスキルの修得率は高くなります。
② 人事担当者の所属企業の枠を超え視野を拡大する
 人事担当者の最も留意しなければならないリスクは内向き志向で視野が狭くなることです。いわゆるタコツボ型のマネジメントになってしまいます。こうなると社会の変化に気付かず時代遅れの人事管理を行うことになります。
 地域社会や異業種に目を向けて自社の人事管理レベルを検証し続けなければならないのです。
 社会や企業は日進月歩している。その変化に対応できなければ企業は没落するのみです。
③ 人事担当者の情報交換で労働問題未然防止する
 人事労務問題を発生させてしまったら人事労務部門の職務怠慢であると判断して間違いありません。
 人事労務問題は突如勃発することはまずありません。必ず兆候があります。突然問題が発生したと言ったとしたら、問題の兆候を当事者または人事部門が気付かなかったからです。
 人事労務問題の最大の未然防止策は悪しき慣行の芽を摘み取るか慣行が組織に根付いているときは敢然と断ち切ることです。どんな小さなことでも規則で決められたことに違反していることは是正することが大切です。そうしなければ必ず大きくなります。

2.ワークショップ人事異業種交流の狙い
① 経営視点に立った人事管理の展開方法を学習します。
 人事の基本は企業を発展させることにあります。企業を発展させる人事を進めるためには当然企業経営の理解ができなければなりません。
② 広い視野を持った人事管理の専門家を養成します。
 ともすれば、人事は内向きになりがちです。一方で人事は時間との戦いです。時代に取り残された人事諸制度ほどみじめなものはありません。
 企業を発展させるはずの人事の仕組みが企業の足枷になっていることさえあります。
③ 先見性のある人事担当者を養成します。
 人は簡単には育ちません。5年、10年と時間がかかります。人が育ったが企業が没落したのでは全く意味をなさないことです。先を読める人事担当者、常に過去より未来を見つめ続けている人事担当者をこのワークショップで育成したいと思います。
3.ワークショップの運営方法



4.ワークショップ入会の特典



「高コスト・人材不足常態化時代を迎えた日系企業」その②

 前回に続き「高コスト・人材不足常態化時代を迎えた日系企業」をテーマに取り上げたいと思います。前回は以下のことを述べました。総論として人事管理の今後の在り方を解説しました。
 第一は年功主義から能力本位人事へと発展させること。
 第二は人事管理を経営の中心に据えること。
 第三にこれまでの人事諸制度をすべて見直すこと。
次に各論として2019年は何を最優先して対応すべきかも以下の三点述べました。
① 人事管理と労務管理の悪循環を断ち切る。
② 職場風土改革に取り組む。
③ 人事専門家を養成する。

 今回のブログでは第二部とし「定着率を高め社員のやる気を刺激する人事管理制度の導入方法」について述べたいと思います。本論に入る前にこれからの日系企業が人事戦略を展開するうえで不可欠な三つのキーワードにまず触れておきたいと思います。
 その第一は平等主義から能力本位へと意識転換を図ることです。
 やってもやらなくても同じ処遇は平等主義です。
 やった人を公正に評価して処遇するのは能力本位です。
 第二のキーワードは情緒対応から合理的制度を構築することです。
 決められたルールがなく発生のつど恣意的に対応するのが情緒対応です。
 誰もが納得するルールが明確化され、誰にでもどんな状況下でも同じ仕組みで対応するのが合理的制度構築です。
 第三は衛生要因重視から動機づけ要因を重視することへの価値観の変更です。
 衛生要因とは改善や向上してもやる気に繋がらないが減少したり向上率ひくいと、やる気を無くす労働条件です。代表的な衛生要因は給与です。
 動機づけ要因とは向上すればするほどやる気に通じる労働条件のことを言います。代表的な動機づけ要因は自分に合った仕事をすることです。
ここで、社員をやる気にさせる三つの要素を述べておきましょう。
第一は自己有能感です。職場で上司・部下・同僚から信頼されあてにされている状態のことを言います。
第二は自己成長感です。担当職務を通じて自分の能力が成長していることがひしひし感じられる状態のことを言います。
第三は貢献実感です。職場の業績向上や健全な維持発展に貢献していることを活き活き感じられる状態のことをいいます。この三拍子がそろえばどんなにハードな仕事であっても疲れを感じないほどの充実感があります。

1.能力本位人事管理制度とは何か
 これからいよいよ本論に入ります。能力本位の人事諸制度をどのように構築し導入するのかについてです。
 ところで、能力本位とはどういう意味なのでしょうか? 能力主義という言葉は聞いたことがあるかもしれませんが能力本位とは初めて聞いた言葉だと思います。そのはずです。能力本位とは正銘が初めて定義づけた概念だからです。能力に人事政策や人事方針はじめとする企業の人事管理の最高価値を持たせることをいみします。これはあたかも金に貨幣の最高価値を持たせることを金本位制度というのと同じです。

2.能力本位人事管理制度の構成は?
 能力本位人事制度は原則的に四つ制度で構成されています。

第一は等級制度です。資格制度とも言います。
 すべての社員を等級に格付けします。組織の規模によりますが、通常一等級から九等級に区分されます。それぞれの等級には職能ごとに等級基準が設定されています。職能は営業、製造、管理の三職能に区分されますが、これらをさらに細かくして五職能に区分することもあります。いずれにしても大切なことは企業の実態に即しているかどうかです。
 等級の変わりにある資格名称をつけて社員を格付けする場合があります。主事とか三治とかの名称です。これを資格制度と言いますが内容においては等級制度も資格制度も全く同じです。

第二は人事評価制度です。
 人事評価制度は文字通り社員を評価する制度です。評価制度普段からに評価するのです。最後は企業の業績を向上するために評価します。
また、人事評価制度は二本柱で構成されています。第一の柱は能力評価です。第二の柱は業績評価です。なぜこのように分けているのでしょうか。それは評価結果の活用が異なるからです。能力評価は昇給と昇級に用いられます。業績評価は賞与の支給に用いられます。
 ここで人事評価制度を運用するうえで最も大切な評価の納得性について述べましょう。
納得性には評価者と被評価者の両者が納得しなければ意味がありません。被評価者は評価結果に想像以上に敏感に反応します。評価結果に納得がいかなければ即やる気に影響を与えひいては業績に悪影響を及ぼします。評価者である上司の皆さんは普段から部下の意識的観察と信頼関係の構築に努めましょう。

 第三は人事処遇制度です。
 賃金制度と賞与制度で構成されています。ほかのどの制度にもあまり関心はない人は多いが給与と賞与に関心のない人はいないでしょう。能力本位の人事処遇制度では給与と賞与の体系があります。給与体系では原則的に基本給と能力給で構成されています。等級ごとに能力給と基本給テーブルが設定されています。賞与体系では業績目標の達成度に応じて等級別に人事評価結果に基づき個人別の賞与支給額が決まります。

第四は人財育成制度です。
 能力本位の人事制度では社員の能力向上なくして成り立ちません。人財育成は思いつきや場当たり的に行うもので会ありません。継続的に体系的に重点的に行うものです。第一に、階層別、職能別能力開発プログラムが定期的に実施される必要性があります。第二にOJTプログラムの構築です。上司が職場内で行う実務能力向上プログラムです。上司には部下育成の責任がありその具体的実施策がこの職場内実務能力向上プログラムです。第三に自己啓発補助プログラムです。教育ニーズには会社サイドのニーズと社員サイドのニーズがあります。会社サイドのニーズは共通プログラムで対応できますが社員サイドのニーズは個人ごとにニーズが異なりますので共通プログラムでの対応はできません。そこで個人の教育ニーズには本人の申告により会社が審査して補助するというのがこの仕組みです。

3.能力本位人事管理制度の導入の留意点
 人事管理制度は制度設計や制度デザインは比較的容易ですが制度の導入や定着となると至難の技だと言っても言い過ぎではありません。現状を否定し新たな事態へと意識や行動を変えることは相当な個人的、組織的抵抗感が強いからです。折角、労力と経費を使って仕組みを構築したのに導入に失敗しそのままお蔵入りしたケースや組織的に抵抗感がくすぶっているのを承知しながら強権発動して導入したが一年で挫折したケースなど新しい制度が機能している事例は少ないと言えるかもしれません。そこで私は以下の三点を提案したいと思います。
提案1.自社のニーズに合った制度の構築し導入する。
   他社で成功したからわが社でも実施したいとか、今はやりだからわが社も乗り遅れないようにといった他力本願的な導入は全く意味を成しません。人事管理制度はわが社の発展性を確保するという原則に立ち返るべきです。

提案2.自社のレベルにあった制度の構築と導入
   自社の組織規模や成熟度にマッチした制度設計と導入を図るべきです。人事制度はいくらいい制度であっても、それを使いこなせなければ何の意味も持ちません。中小企業なのに大企業のような複雑な仕組みを構築してもそれが足かせとなって企業の発展を阻害するだけです。「身の程知らず」でなく、「身の丈に合った」制度を構築し導入することが絶対条件です。
提案3.労使双方が納得する制度の構築し導入すべきです。
   人事管理制度は仕組みの構築や決定するのは経営幹部ですが実際の運用は社員です。社員の納得性が得られていないのに導入を強行しても前述した通り成功がおぼつかないばかりか組織にとって害にすらなってしまいます。社員との信頼関係にひびの入るやり方はお勧めできません。じっくりと時間をかけて納得性のある導入をすれば確実に成功します。

4.能力主義人事管理制度の導入テップ
 最後に能力本位の人事管理制度の導入のステップを紹介しましょう。六ステップありますのでステップごとに述べてゆきます。

第一ステップ 現状調査
       正銘ではこの現状調査をとても大切にしています。それは導入のポイントともろ関係するからです。自社のニーズやレベルを把握するために不可欠なのがこの現状調査です。調査は二種類あります。定量調査と精密調査です。定量調査はモラールサーベイとマネジメント力調査です。精密調査はインタビュー調査になります。
第二ステップ 調査結果のフィードバック
       定量調査と精密調査結果は両方とも該当組織にフィードバックします。 
第三ステップ 制度構築工程表の提案
       現状調査を踏まえ新人事制度の構築内容とスケジュール及プロジェクトの見積もりを提案します
第四ステップ 個別制度の設計と提案及び承認
       人事四制度設計開始、まず、人事等級制度から開始。順次人事評価制度、人事処遇制度、人財育成制度を構築しその都度提案死人を受けます。
第五ステップ 新制度への移行社内説明会開催
       前制度設計完了し承認を受けた後社内説明会を開催します。 
第六ステップ 新制度移行支援 
       人事評価を先行させます。新等級格付けには評価結果が不可欠だからです。
       制度導入前に人事評価者訓練を実施します。また、実験的人事評価を行う場合もあります。


「高コスト・人材不足常態化時代を迎えた日系企業」(その①)

■はじめに―この試練を乗り切る人事管理はいかにあるべきか
 多くの皆様がご高承の通り日系企業を取り巻く経営及び人事環境は激変しています。
 毎年JETRO(日本貿易振興機構)が日系企業の経営問題を調査していますが、それによりますと第一位は賃金の上昇で、第二位は調達コストの上昇、第三位は競争相手の台頭、第四位は品質管理、第五位は環境規制でした。
 とりわけ、人件費の上昇を指摘したのは回答企業の75%にも及んでいます。品質管理も社員の質と大いに巻毛がありますから経営問題の上位五位に人事問題が二つも入っています。
 直面する人事問題を私たちはどのように受け止めるべきでしょうか。私はこの試練はすべての企業に天(経営環境)が平等に与えた試練であり、新たな企業革新を生む機会だと理解すべきだと考えます。企業を強くするチャンスなのです。逃げずに敢然と立ち向かうことで勝機は生まれます。人事管理面では人事革新時代の到来を意味します。
 人事革新時代に真っ先に注力することは以下の三点です。
 第一は年功主義から能力本位人事へと発展させること。
 正銘では能力主義という考え方ではなく一歩さらに踏み込んで能力本位という人事管理上の新たな価値観を提唱しています。最高の貨幣価値を持たせることを金本位と言いますが人事管理上の最高価値を能力に置くことを意図してどこの企業よりも先駆けてこの言葉を導入しました。
 第二は人事管理を経営の中心に据えること。
 このことを正銘では「経営人事」と称しています。経営人事を進めるには人事専門部署の設置と人事専門家の配置が絶対条件です。素人が片手間に人事を行うほど企業内で発生する人事問題は簡単ではありません。アマチュアの時代は完全に去り、プロが人事をする時代を迎えました。
 第三にこれまでの人事諸制度をすべて見直す。
 人事諸制度は時の経過とともに陳腐化しています。10年も前の創業時に制定した人事諸規則を何も更新せずそのまま使用している企業があります。問題はその企業の実態と決められた規則が一致しているかどうかです。規則は規則で別の存在になったいて実態と会っていないケースはいわゆる悪しき慣行として規則化されています。これらをすべて清算する必要があります。

1.これからのすべての企業が準備すべき人事管理施策は何か?
1.1 2019年は何を最優先して対応すべきでしょうか。
私は以下の三点を特にあげておきたいと思います。
① 人事管理と労務管理の悪循環を断ち切る。
 人事管理は一人ひとりの社員を個別管理することであり、労務管理は社員を集団管理することです。労務管理では社員を労働力としてしかみなしません。社員の肉体的労働力を期待するだけです。従いまして社員の能力が向上することは期待しません。
 一方、人事管理は真逆の管理方法です。社員一人ひとりの違いを把握することが人事管理の出発点です。一人人の能力や適性を把握して適材適所の配置をすることが大原則です。正銘の調査では能力の向上を期待しない社員は誰もいないと言っていいと思います。
② 職場風土改革に取り組む。
 前項は個人の能力の問題ですが、この職場風土の改革は組織能力の向上を意味しています、会社の組織では個人がいくら意欲的であっても職場風土が社員の意欲を削ぐようだったらいい成果を出すことができません。むしろ、この組織能力が強いか弱いかで社員のやる気を決めることになります。また、いい成果が出せるかどうかも決まります。
 それではこの実態が見えにくい職場風土をどのように把握し改革に取り組むのでしょうか。問題解決は原因が特定できれば解決できたも同然だと言われます。職場風土改革に最もふさわしい言葉です。職場風土を決めているのはその職場の二人の人物です。一人は会社から正式に任命された職位者です。部長とか課長とか係長といったように長という名前が付く人たちです。もう一人は、会社から正式に任命されたわけでもなのにその職場で隠然たる影響力を持っているひとです。この二人が特定できこの人たちがどのような心理状態で毎日の職場で働いているのかがわかれば必ず改革策が見えてきます。
③人事専門家を養成する。
 人事専門家を必要性については記述しました。どのように育成するのかも5月第三週ブログで取り上げましたのでここではポイント述べます。
①まず採用業務を担当する。
 人事担当者候補が決まったらまず何を担当させるかについてですが私は採用業務を第一にさせることが重要だと思います。その理由の第一は社員を大切にする心構えを醸成できるからです。とりわけ人材不足になりますとやっと採用できた人だから大切に育てようとする気持ちが湧いてきます。
 第二は「採用は人事業務の出発点」です。「人事は採用に始まり採用に終わる」という言葉があるくらいです。また、人事業務の中で最も難しいのも採用業務です。難しい採用業務で多くの人々に会い人を見る目を養います。
②次に人財育成業務を担当する。
 採用して入社してきた人をどう育てていくかを企画するのが人財育成業務です。入社後のオリエンテーションから始まり階層別教育プログラム、職能別能力開発プログラムへと展開してゆきます。
 この間に教育技法、教授法なども学習します。
③三番目に人事行政部門を担当します。
 人事処遇と人材配置を担当する部門です。人と人の組み合わせを考えるのがこの部門の仕事になります。人事担当者の最高の技術の一つがこの組み合わせです。組織が活性化するのも萎えるのもこの組み合わせ次第だからです。
④最後が人事企画部門を担当することになります。
 採用、能力開発、人事行政の各職能で実務経験をした後で人事制度企画や要員計画、組織制度企画を担当します。

 人事担当者は知識が増えるだけでは務まりません。必ず実務経験を積まなければなりません。人事担当者の育成は知識教育と経験教育を総動員することが必要です。つまり、キャリアプログラムを通じた人財育成計画が不可欠です。

 以下次回に2019年正銘からの提言と第二部「定着率を高め社員のやる気を刺激する人事管理制度の導入方法」を取り上げます。


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