企業の生活習慣病その三 「湯でガエル症候群」について

失敗は成功の母、成功は失敗の母
「人間は一本の葦に過ぎない。自然の中でも最も弱い存在だ。しかし、それは考える葦である」といったのは17世紀のフランスの哲学者パスカルですが、自然界でその人間のみに備わっている考える力を放棄してしまった組織や個人が21世紀になって増え続けているようです。
一流と言われるある企業では特別に大きな経営判断を誤ったわけでもないのにこのところ業績が低迷し赤字転落するのではないかと心配されています。社員は毎日一所懸命働いています。決して怠けているわけではありません。にもかかわらず業績は下げ止まらないのです。皆さんは何が原因だと思われますか。「失敗は成功の母」と言われますが「成功は失敗の母」という逆説もあります。いったん企業は成功を収めるとそれを過信し長らく成功した要因に拘って踏襲し続けます。成功した時の企業を取り巻く環境と現在と全く変わってしまっているのにいったん成功するとなかなか変えることができなくなります。このような状態が続きますと成功した要因と全く同じ要因で企業は没落の道を選択してしまうのです。私は経営幹部の皆さんしかできない企業の陳腐化との戦いを先頭に立って取り組むことが生活習慣病の病を克服できる唯一の道だと信じています。
また、ウチの会社の社員は危機感が乏しい。ぬるま湯にどっぷりとつかっているとこぼす経営者の言葉を耳にしたことがありませんか。いわゆる「ゆでガエル」理論です。かつて欧米ではやりました。これは現代のイソップ物語です。その内容は「カエルをいきなり熱湯に入れると慌てて飛び出して逃げるが、水から入れてじわじわと温度を上げていくと、カエルは温度変化に気づかず、生命の危機を感じないまま茹で上がり死んでしまう」というものです。本当にこのような現象が起こるのかどうかは検証されたのかどうか知りませんが、たとえが面白いので欧米だけでなく地球レベルで広がっています。
ところで、危機感を持っていないのは社員なのでしょうか。社員に危機感がないと言っている経営者の企業で社員にヒヤリングしたことがあります。社員の方々は口を揃えて「危機感がないのは上司です」とはっきり言いました。「上の顔色を見て仕事しているだけです。上がいなければ仕事などしていませんよ」部下は上司のことをよく見ています。昔からよく言われることに「上司は部下のことを理解するのに3年かかる。部下は上司のことを理解するのに三日もあれば済む」と。
確かに上司に危機感がないのに部下に危機感がありうるはずもないと断言できると思います。これも昔からの諺ですが「川の水は下流から濁らない」ということです。
生活習慣病は原因が特定できれば克服することができる。
ではこれらの生活習慣病をどのようにすれば克服できるのでしょうか。病気と同じように原因がわかれば治療することが可能です。
組織が考える力を失った場合の対症方法です。これには私たちが関与したケースがあります、その会社では管理職を含めてすべてに社員に対して、長年。指示したことのみをやりなさいという生活慣習がありそれが組織の隅々に浸透していました。ここにメスを入れることでこの会社では管理職から考える力を回復させることができました。どんなメスをいれたのかはここでは省略します。
組織がゆでガエル症候群に陥った時にどう対処すべきでしょうか。これにはショック療法と構造療法が要ります。ショック療法とは一例ですが、このぬるま湯状態を維持して企業の存続が難しいことを社内に通達します。構造療法とは組織のリストラの取り組みです。これらの取り組みプロセスは別稿に譲ります。
生活習慣業は長年の習慣が組織に定着していることもあり一気の解決することは難しいことが多いです。しかし必ず克服できることも確かです。


企業の生活習慣病その②『あなたの職場は「報連相閉塞症」に陥っていませんか』

前回に続き企業の生活習慣病を取り上げます。企業も個人も長年の生活習慣が病を呼び込む原因となっていることが多いのです。今回は企業にとって活性化のカギを握っている報連相の生活習慣病を取り上げました。
あなたの所属する組織や職場にはこのような現象が生じていませんか。

会社の方針や指示が第一線の現場に伝わらない
お客様の意見やクレームが経営者に聞こえてこない。
経営にとってのマイナス情報が経営者の耳に入るのが遅い。
現場で起こったことが正直に報告されない。
部門間がぎくしゃくしトラブルが多発している。
正直に情報を上げたら上司から叱られた。
同じ室内にいてもメールで連絡し合っている。
組織の中にコミュニケーションをよくするための方針や決まりがない。
組織内では本音の会話ができない。
指示命令を出しても実践されているかどうかの確認がない。

この様な現象が見られたら企業の生活習慣病「報連相閉塞症」に陥っている可能性があります。報連相とは報告・連絡・相談のことです。一口にコミュニケーションと言いますが奥が深くて難しい問題でもあります。また、企業における報連相は人間の血液に相当します。組織の末端まで新鮮な情報を送り続けなければ組織に活力は蘇りません。また、私たちの商品やサービスがお客様にどのように受け止められているのかを把握し改善活動を行わなければお客様はそのサービスや商品に不満を感じ静かに去ってゆきます。一気に顧客が去って行けば気づくのですが徐々に減っていきますからなかなか気付き難いのです。

生活習慣病は企業であっても個人であっても自覚症状がなく、気付いた時には取り返しの無い状況になってしまっているのは共通しています。従って。健康維持の鉄則である早期発見、早期治療が大原則です。

また、私たちは健康を維持するために毎年一回は健康診断を受けます。この定期的な健康診断は健康維持のためには不可欠なことです。それは健康診断によって変化を読み取ることができるからです。今は健康体であっても一年後も健康であるとの保証は決してありません。健康体であり続けるには定期的に健康診断を受け、体の変化を具体的なデータで把握して対応する以外に方法はありません。このことも個人と組織では全く同じです。

一例を紹介しましょう。かつて、顧客だったA社の管理担当の副総経理から当社にこんな相談がありました。副総経理は「わが社の社員は現場の状況を報告しないのです。どうすれば社内のコミュニケーションはうまく行くようになりますかね。報連相に関する研修会を開催したいのですが」と。そこで管理職を対象に報連相の社内研修を開催することになりました。毎月1回開催の六回コースで報連相の現状把握、原因追究、改善策の策定というように本格的なカリキュラムを編成して実施しました。

報連相の現状把握では社員と会社が把握している内容に大きなギャップが存在していることがわかりました。十数名の参加者のほぼ全員が自分たちは報連相をよくやっているとの反応でした。副総経理が把握していることと全く正反対の反応でした。むしろ、上位職位からの報連相がないことに社員は不満を持っていました。このような研修は意味がなという態度がありありです。

前述した通り研修会を6回開催したのですが6回ともすべて出席した社員は20名のうち9名でした。毎回午後1時にセミナーを開始するのですが開始時間にはいつも参加予定者の6割程度しか集まらず、時間が守られていませんでした。研修中も席を立つ人が多く受講態度は非常に乱れていました。このことは副総経理に報告しましたが最後まで改善されませんでした。

最終回は報連相に対する改善策の発表会となりました。総経理も参加されました。開始時間前には参加者全員着席していました。発表終了まで誰も途中退席する人はいませんでした。受講態度も真剣そのものでした。その状況を見て総経理は満足していました。総経理は研修のこれまでの受講生の経過報告をしても聞く耳を持っていませんでした。もし、私たちが指摘することが事実であったとしたらそれを改善するのはコンサルティング会社であるあなた方の役割でしょうと言わんばかりの口ぶりでした。この現状を皆さんはどう感じられたでしょうか。報連相には証拠が残りません。わが社の現状をどうすればその真実を把握できるのか考えさせられました。

以上のように生活習慣が組織に根付いてしまいますと固い岩盤のようになったそれを打ち破ることはとても難しいと思われます。A社のように社員が「よい子」を演じていれば。それを見抜くのはさらに難しくなります。


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