コラム記事

 人事労務に携わっている方々は、「人材棚卸し」という概念はご存知でしょうか?今日は、「人材の棚卸し」についてお話ししたいと思う。
 そもそも人材棚卸しとは何か?人材棚卸しとは、企業内の人材資源を照合、統計、評価、予測し、組織の人材状況をよりよく理解・把握し、企業の人材管理・育成に科学的な基礎と支持を提供することを指す。企業のニーズに応じて、人材を定義し、人材を識別するプロセスのことである。
 年末までに企業が人材の棚卸しをすると、それは社員を解雇することだと誤解する方がいると思うが、「そうでなければ、なぜ人材の棚卸しをするのか、人材の棚卸しをするメリットは何なのか。」という疑問を出す方もいると思うが、まず人材の棚卸しだが、これは単に社員を解雇するためだけのものではない。その最も直接的な目的は、企業が常に現在の人材状況を明確にすることである。エース級のスタッフにどのようにインセンティブを与え、より良い役割を担わせるか、一般的な人材をどのように編成して利点を最大化するか、等々。人材の棚卸し終了後に発見された現段階では企業が求める能力に合致していない社員は、今後どのように彼らを育成し、適切に定着させるかを考えるべきだ。第二に、企業人材棚卸しは、企業内部の人材標準を決定し、統一するプロセスでもあり、企業文化を効果的に大規模に普及させるものでもある。 人材棚卸しの作業に参加することで、各部門の責任者は効果的に人材を採用し、見極める能力を向上させることができ、企業の人的資源管理の全体的なレベルを高めることができる。したがって、大企業、特に有名な大手のインターネット企業は、人材の棚卸しを非常に重視しており、何としてでも人材や資金を投入し、中には半年に一度の棚卸し、四半期に一度の棚卸し、あるいは毎月の棚卸しなど、いつでも人材の棚卸しを行うところもある。これにより、人材という「人的資源」が活用され、真に、柔軟に、効果的に、より大きな価値を生み出す役割を果たすことができるのである。
 通常の倉庫の棚卸しや企業の固定資産の棚卸しについては、誰もが知っている。このような棚卸は、在庫の数量、有効期限、場所、所属などを別々に棚卸することに他ならない。しかし、もしその棚卸対象が人であれば、社員であれば、人材棚卸は何かをしなければならないのでしょうか?2つの主要な側面に分けることができます:一つは、人材の基本的な情報の棚卸しである。年齢、性別、学歴、地位、学歴、主な雇用経験、経験年数などの基本的な社員情報などである。もう一つは、人材のパフォーマンスと能力の棚卸しである。 人材の潜在能力(学習能力)、勤務状況、業績などである。
 一般的な人材棚卸しツールは、9ボックスモデル、総合順位法、360度評価、職能能力モデルである。360度評価と職能能力モデルは、一般的に使用される業績評価ツールであり、体系的な業績管理システムに頼る必要があり、毎年の評価結果を直接人材棚卸しに適用して使用することができる。総合順位の方法は、最も単純な方法であり、社員の数が非常に少ない場合に適用される。経営者が落ち着いて、社員の総合的なパフォーマンスと役職の重要性を明確にし、今の編成においてどの社員を辞めさせるのが一番難しいか、順番に考えてみてください。
それでは人材プールがある多くの大手企業が運用している、すぐに自社に運用できる「人材9ボックスモデル」という方法を紹介させていただきたい。
 人材9ボックスモデルは企業内の人材の位置と分布を直接表示することができるので、人材マップとも呼ばれ、通常、縦軸と横軸の2つの次元の潜在能力とパフォーマンスに応じて設定し、人材棚卸の結果を9つの象限に分けて表示する。以下の図1に示すように、それは主に企業内の人材の現在のパフォーマンスと将来の可能なパフォーマンスに焦点を当て、ビジネスの発展と人材の安定の状況に適用されるツールである。



 人材棚卸の焦点は、その結果を人材の訓練と育成、昇進、モチベーションアップなどに応用することである。上の図に示すように、企業の人材は5つのレベルに分けられる。このように、人材の異なるレベル(タイプ)に対して、ターゲットを絞った「人材のための教育」を実現する。


表1


 人材棚卸しの全体プロセスから見れば、最も難しい作業が実は「適材適所」の選別プロセスであることを見出すのは難しくない。図1を例にとると、横軸は業績であり、最も簡単な方法は「持って来い主義」をとり、データと社内の評価・考課制度と結合して、直接に業績評価結果を運用してレベルつければ良い。では、縦軸は-潜在力のデータはどのように運用すれば良いか。潜在能力イコール学習力という基本ロジックを考える必要がある。そして、学習力は、変化洞察力、結果洞察力、対人洞察力、思考洞察力などに分けることができる。 異なる企業は、自社の事業展開、企業文化、価値観の主張に従って、測定次元を「変形」させることもある。例えば、GEであれば、9ボックスモデルの縦軸と横軸は業績と成長価値に設定される。アリババの人材9ボックスモデルの縦軸は業績、横軸は仕事意欲と価値観である。下の表2は、国内のとある大手企業の社内用の学習力評価表という。思考力、変化力、結果、対人理解力の4つの側面を5次元にし、評価と点数をつけ、学習力の高い(潜在力の高さ)順に順位付けしたものである。


表2


 人材の棚卸について、評価・点数付けのプロセスでは、このような状況があるかもしれない:たとえ会社の業績が低下していても、職員のパフォーマンスが低くても、または社員の能力が平凡だっても、採点結果は、高得点一方の現象である。 これは2つの理由が考えられる。1つは、評価者自身がさまざまな懸念から、低得点による部署の人員削減や異動の恐れや、部下の給与や賞与への影響などの恐れであり、もう1つの可能性は、みんなの「評価基準」が異なっていることである。この問題に対処するためには、人材棚卸の前に説明会を実施し、人材棚卸の意義、運用プロセス、評価基準、指標説明を具体的に紹介することが重要である。そして、「2-7-1 」ルールを運用し、つまり強制的に20パーセントが優秀、70パーセントが良好、10パーセントが不満足と評価しなければならない。
最後に強調しておきたいのは、人材棚卸しは出発点であって終着点ではないということだ。人材棚卸しが終わったら、後継者育成計画、研修・能力開発計画、ローテーション計画、社員のキャリア発展計画、社員の最適化・調整計画の策定に進むべきだ。人事部門は、業務部門と協力して管理ツールを適用し、データを継続的に追跡する必要がある。


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