組織に活力を蘇らせるには?

◆見えない経営危機の増大に備えて
 「リーダーの最大の任務は危機を予知することである」と経営学者P.Fドラッカーが述べています。「それは危機を避けるためでなく、危機に備えるためである」、同氏が述べているように、確かに私たちは決して危機を避けることはできません。ではどうすればいいのでしょうか。危機に備えるというのは何をすればいいのでしょうか。
 今私たちを取り巻く経営環境の中で最大の脅威は“見えざる危機”が忍び寄って来ていることです。この見えない危機の襲来こそ、現在の私たちを取り巻く経営環境の大きな特徴です。それは災害リスクであるかもしれませんし、人為的なリスクであるかもしれません。潜在的リスクが顕在化したとき、危機を克服できる組織と克服できない組織に分かれます。それはなぜでしょうか。
観点を変えて、私たち人間に当てはめて考えて見ます。病気にかかり易いのは体力の衰えた弱体な人です。普段から体を鍛えるのではなく体力を消耗ばかりしている人が病気になりやすいのですが、同様に組織においても見えない危機が来襲しても、危機を克服できる組織とできない組織があります。組織に活力がっていれば、よほどのことがない限り危機を克服できるのです。そして、危機を乗り越えたことより組織に自信がつき体質が強化されていくのです。これからの㈱東洋はこの「危機を乗り越えること」をおいてほかに生き残る道はありません。

◆品質への社会的関心が急増
 視野を少し広げてみましょう。21世紀は“クォリティ”の世紀だといわれています。社会全体が質を追求する、社会全体が質に関心を持つということに他なりません。生活者にとっては「生活の質」(Quality of Life)を高めることであり、企業人にとっては「勤労生活の質」(Quality of Working Life)を高めることです。生活者は「生活の質」を脅かされることに極めて敏感になっています。昨今、社会を揺るがす事件が頻発しているのはこのような背景からきていると思われます。
企業人も企業戦士とまで言われた高度経済成長時代から比べると「勤労生活の質」を重視するようになりました。一方的な指示命令だけでは部下は動かなくなりましたし、長時間勤務しても仕事に生きがいを見出すという人も少なくなりました。仕事をエンジョイし、私生活も充実した楽しい生活を送りたいというのが現代の人々の考え方ではないでしょうか。
経営の質を高めるためには、業務品質が向上しなければなりません。最終的には組織能力が向上し、社員の質が高まらないと業務品質は向上しないでしょう。つまり、社員が生き生きとして働き、組織が活性化しないと会社にとって最も大切な業務品質の向上に繋がらないと言っても言い過ぎではありません。

◆加速度増す経営資源の陳腐化
経営環境の急激な変化は企業のすべての経営資源の陳腐化を加速化しています。経営資源とは人、物、金、情報ですが、建物、生産設備などのハードウエアの陳腐化は誰でも気がつきます。ところが、陳腐化に気がつきにくいのは仕組み(システム・制度・体制)などのソフトウエアとヒュウマンウエアです。
現在のように変化の激しい時代は猛烈なスピードで経営資源が陳腐化していることに経営幹部は最大の留意を払わなければなりません。そして、経営資源が陳腐化したかどうかを早期に発見する仕組みを構築しなければなりません。すべての有機体は老廃物を排泄します。組織も同じです。陳腐化した経営資源を更新してリニューアルするか、スクラップしなければ、健康体を維持することはできません。㈱東洋の組織活性化策はすべての経営資源の陳腐化を早期に発見し、リニューアルするために有効性を発揮できる仕組みとして機能することを目指しています。

会社の目指す組織活性化

◆社会システムと技術システム
 多くの方々は組織活性化が必要なことは分かるがどうしてこんなに面倒なことをやらなければならないのだろうと思うかもしれません。確かに、組織の活性化度を評価するのは通常のプロセスよりは手間をかけなければ本質的な、構造的な組織の課題を抽出することができないのも事実です。というのも組織は社会システムであるからです。
 私たちの住んでいる地球は生態系システムを最上位にして、人間がある目的を持って社会システム(国家、企業などの非営利組織と営利組織)を作り上げています。そして、社会システムをより発展させるために技術システムが考案され、社会システムの意のままに動かされています。
社会システムと技術システムの特徴を比較したのが下記の通りです。



◆なぜ面倒なプロセスが必要か
なぜ、組織の活性化のために面倒なプロセスがいるのかといえば、社会システムは技術システムと異なり、ネットワーク性が強いからだと思われます。ある特定の人が問題を把握していても解決に繋がらず、問題を共有しなければなりません。問題を共有するには単に一方的に伝達しても共有できたとは言えません。複数の人の行動を変えるにはまず意識を変えることから始めなければなりません。意識が変わるには納得しなければなりません。一人の人が納得しても多くの人が納得するとは限りません。現実、現場、現物の共有するプロセスがあって、目標に向かうのです。要するに一人の人間ではどんな優れた人でもどうにもならないのです。多くの人の参画を得て解決するためには組織や仕組みそれに手続きが要ります。
価値観が多様化した現在では、複雑な社会システムを機能させるには面倒とも思えるプロセスをらなければ組織の活性化はありえません。それだけ、人間も組織も複雑な存在なのです。


◆なぜ課と支店単位で組織活性化をやるのか
(1)自律的な支店及び課の経営を目指す
組織活性策は支店及び課の人財活性化を通じて会社全体の組織活性化を目指します。課及び支店は経営者からの上位方針と現場の声が交差する情報流と職能間の情報交流の交差点にあります。言わば、㈱東洋の経営の中核を担っているのです。これまでの㈱東洋では「指示されたことをやればよい」との風土の時代もありました。
しかし、中期経営計画を実現するためには自律した組織づくりが必要です。指示された事のみをやるのではなく、指示されていなくても自(みずか)ら環境変化を読み取って、支店及び課の目指す方向を自らの責任において策定し展開することが期待されています。そのためには、支店及び課の現状を自ら把握できる能力をもたなければなりません。そして、支店及び課の使命やビジョンを描くとともに現状をそれに近づける方針や計画を策定して実行しなければなりません。

(2)支店長及び課のマネジメント力の強化を図る
支店および課が自律するには、支店長と課長のリーダーシップとマネジメント力が不可欠です。支店長と課長には以下の能力が求められます。自らの能力を自己評価して足りない分を補ってください。

① 支店及び課のトップとしての基本姿勢が確固かつ一貫している。(バランス感覚)
    信頼(水平・垂直)が得られ、人を動かせる人間力を有すること!
    内外の成功例・失敗例からの気づきの力を有していること
②  長・短期のあるべき姿とそれに到達へのシナリオを描けること
   (ビジネス環境、競争環境をベースに、カンパニー、顧客との対話を通じ)
③ 自ら率いる組織の向かうべき方向を、ビジョン・戦略で明解に示すこと
    到達までのロードマップまで明解にイメージされていること。
④ ビジョンや戦略を現実化するための必要な組織、推進体制を作ること
    リソース(人、設備、予算)を定量化し、確保すること
⑤ 現場力を強くし、戦略の実践状況をあらゆる形で「見える化」すること
    横の関係者にも見えるようにし、実行を徹底させる
    公平性のある判断基準(KPI)をきちんと持つこと
⑥ 社員のモチベーションを高め、かつベクトルを合わせられる組織風土を
    作り上げ、維持向上させること
   (戦略の有効な伝達や評価制度などがポイントになる。)


組織活性化の狙い      
◆組織活性化された状態
組織が活性化された状態とはストレッチ(大いなる努力を必要とする)目標を設定し、それを達成したいと言う動機の人々で構成された組織です。達成動機の強い人は次ぎの特徴を持っています。
・自分の努力次第で成功すると信じる
・自分で責任を持つことを好む
・自分の仕事の結果を知りたがる
・仲間と一緒に仕事をする時には有能さで 相手を選ぶ
・適度の困難さを好む
 一方、活性化されていない組織では回避動機を持つ人で構成されます。失敗を恐れるがあまり挑戦することを拒否します。また、相互に協力し合う協働体制もできていませんので組織そのものに連帯意識は醸成されていません。目標も共有されずバラバラなので成果は上がりません。
また、親和動機はお互い親しくなりたいという動機で構成された組織です。次のような特徴があります。
・電話や手紙でのコミュニケーションが多い
・他者とのアイコンタクトが多い
・仲間と一緒に仕事をする時には親しさで相手を選ぶ
不安や恐怖が高まると、みんなと一緒にいたいという親和動機が高まると言われています。楽しく仕事をすることが動機ですから目標を達成するところまでは行きません。


人も組織も生きている
◆適者生存の法則
ダーウィンは「進化論」の中で弱肉強食の厳しい生態系の中で太古より進化を遂げ今日に生き延びたのは強いからでなく環境の変化に適応した生物だと指摘しています。企業や組織もまったく生物と同じであって環境適応できた組織のみが世紀を超えて存在しています。

◆人の行動は環境で決まる
行動科学の創始者クルト・レビンは右図にある方程式を考案しました。人の行動は環境と人格の関数であるというのです。私たちの組織がどのような状態であるのかが個人にも色濃く影響を与えてゆくのです。環境とは物理的環境もありますが組織風土や企業文化も環境に入ります。この組織にとり最も大切な組織風土は組織のトップが影響を与えます。つまり、支店長と課長のリーダーシップにより部下の行動がコントロールされてゆくのです。


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