「人事労務は平等でなく公正であることー会社も従業員も納得する人事評価の進め方」原則編

 前回は人事評価を取り上げます。そして、基本的な原則をまず取り上げます。労務管理中心の企業では人事評価はなじみが薄いかもしれません。というのは労務管理では従業員の集団管理が中心になり人事評価制度を持たない企業が多いからです。
 人事評価は社員のやる気を喚起するとともに会社の発展に貢献することが目的です。また、人事評価は納得性がとても大切です。評価される人も評価する人も両者が納得するものでなければなりません。人事評価は評価者がその成否を握っています。被評価者よりも評価する管理職以上の皆さんに十分理解していただき被評価者から決して不満や不信感が出ないように運用しなければなりません。
 そして、人事評価制度の円滑な運用のために評価者の皆さんは特に次の点を注意してください。人事評価というと給与や賞与を決めるためだけに実施されると思われがちですがそうではありません。社員のやりがい、働き甲斐を通じて社員が安心して会社生活が送れるようするためです。そのためにも評価す立場の人は以下のことに留意してください。

第一は育成的観点で社員を観察する習慣を身に着けてください。
 人事評価は評価期間中の社員の業務の成果や業務遂行能力を点数化するのですが、被評価者の弱点を指導し強みに変えていくことも上司としての重要な役割です。評価期間の最後に記憶をたどって評価点を人事評価表に記入するのではなく、データ化した観察記録を紐解きながらより客観的な評価を実施してください。

第二は社員との意識的な対話を通じて双方向のコミュニケーションを心がけてください。
 人事評価は公正に評価することは大原則ですが評価の前に部下が自らの職務にやりがいを感じ職務に没頭する環境作りが大切です。そのためには上司と部下の垣根を低くして部下との本音の対話から会社が期待していること、つまり、評価要素や業務基準を明確に伝えてください。部下が成長し業績を達成し会社に貢献することも人事評価の大きな役割の一つです。

第三は自己責任、自己反省、自己管理の意識で取り組んでください。
 部下は上司を超えられないと言います。もし部下の能力に不足を感じたら、上司であるあなたに指導力がなかったのだと自己反省してください。部下の業績が達成できなかったら自らの部下への支援が足りなかったのだと自己責任意識を感じてください。部下の成長はあなた自身の成長でもあります。部下へのマネジメントも大切ですが、あなた自身の自己管理能力も常に意識して自己啓発に常に取り組んでください。
 
 人事評価制度は管理職の皆さんの自立、自律、自主の「三自の精神」があってこそ成り立つものです。

 人事評価の三原則
 何事にも当てはまることですが、原則をしっかりと理解することが大切です。理屈っぽい話になるので敬遠されがちですが原則の無い技術論は骨のない動物と一緒で姿勢を正しく保てません。
 人事評価には三つの大原則があります。これからお話を進めます。

公正の原則
 人事評価の第一原則は「公正の原則」です。人は誰でも努力した結果、貢献度に応じて格差がつく事を決して嫌がりません。多くの人が最も嫌うのは公正に評価されないことです。何らかの理由で特定の人が依怙贔屓(えこひいき)されることよって人事を不透明にしてしまいます。この意味で「公正の原則」は人事のすべてに通じることでもあります。「公正の原則」を堅持するためには次の二つの点が重要です。

 第一は人事評価制度に客観性が存在することです。人が人を評価するのですから、人事評価には勢い主観的要素が入り込みます。人事評価から主観性や恣意性をどう排除するかが人事評価の最重要ポイントといっても良いでしょう。客観性を維持するために、複数の評価者による多面的な人事評価システムの導入や客観的な着眼点の導入などがあります。たいていの人事評価制度にもこのような仕組みが導入されています。

 第二のポイントは納得性です。評価者と被評価者の両者が納得するものである必要があります。評価者が公正に評価したと思っていても被評価者が公正でないと思っていて決して納得していないケースがよくあります。評価者は評価される部下の貢献度を日常の業務活動から注意深く観察し、記録にとどめておかなければ、人事評価は主観的になり、納得性が得られないものになってしまいますので評価者は特に注意しましょう。

公開の原則
 第二の原則は公開の原則です。
 人事評価は原則的にオープンでなければなりません。被評価者が何を評価されるのかが分からなければ日々の業務の中で努力のしようがありません。ですから、人事評価表、また、評価の基準やルールが公開されるべきです。評価結果に関してもすべて公開してしまう必要はありませんが、被評価者には評価項目毎に知らせるべきです。
 というのは、次の能力開発の原則と関係することですが、人事評価の役割の大きな一つに「不足する業務遂行知識や技能を発見すること」つまり、教育ニーズの発見があるからです。
 被評価者はその結果に基づき自分の強みと弱みを把握し、今後の自己啓発目標や努力目標が設定可能になります。評価者は被評価者の成長を願って愛情ある人事評価を心がけてください。

能力開発の原則
 第三の原則は能力開発の原則です。
 社員の潜在能力を顕在化させる機能を人事評価制度はもっています。
 会社には半期ごとの決算があり、決算の時には資産の棚卸があります。人事評価は人的資産の棚卸と考えてください。社員の一人ひとりの皆さんは自分の能力の棚卸だと理解しましょう。この能力棚卸で一人ひとりの能力開発ニーズが発見できると共に当社全体の強みと弱みが把握でき、人材開発戦略が構築されると共に能力開発計画が策定され実施されます。
 能力開発は会社の発展を支援するプログラムである事が不可欠です。中期経営計画や年度方針のどの施策と連動しているのかを常に検証すると共に個人の場合は自分の能力開発が会社のどの部分と貢献しているのかを自問自答して適応させ、コントロールしてくださ


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