「優れた人事労務管理は会社に利益をもたらします」
昨今の中国産業社会の激変ぶりは何度もお伝えしました。これからの中国における企業は人事労務問題を「問題処理型」でなく「問題発生予防型」に転換する必要があります。
そのためにはどう対応すべきでしょうか?
どの企業にとっても、自社に最適な人事労務管理手法や仕組みを導入し定着させることに尽きると思われます。
「人事労務管理の乱れは経営の乱れだ」と言われます。企業の健全な経営を維持発展させるためには人事労務問題の早期発見と早期対応が絶対条件です。
人事労務問題は突発することはまずありません。人事労務問題には必ず兆候が見られます。突発したと感じた人は兆候を見逃したからにほかなりません。ところが往々にして、多くの企業では二進も三進も行かなくなるまで放置してしまうことが多いのです。経営幹部の皆さんは問題の予知や問題の早期問発見の目を養っていただきたいと思います。
予防型人事労務管理のステップをご紹介しましょう。
◆第一ステップ 職場風土の整備を行いましょう
会社の経営方針、就業規則、評価基準その他諸規則を社員に徹底させ、緊張感のある職場づくりが大切です。規律が守られなかったり、悪しき慣行がありながらも見て見ぬふりをする。挨拶や承認もなされないような職場では不正の温床になります。これらの活気のない職場は管理職のマネジメント力と大いに関係しています。
活性化された職場づくりはよき風土形成から取り組むことが大切です。職場の離職率が高いと職場風土が希薄になります。職場風土がこのように薄い組織では会社の価値観でなく個人的な価値観で仕事をするようになります。
職場風土には次の三つの発展段階と特徴があります。
第一段階 無動機集団です。メンバーの関心事は自己中心的で組織やグループの目標にはわれ
関せずで指示された事でも嫌々やることになりますし意欲は全くありません。意見を求めてもほとんど出ま
せん、
第二段階 親和動機集団です。この集団はいわゆる仲良しグループです。組織やグループの一
員である事に居心地がよく、メンバーの関心事は楽しくやる事が目的です。組織目標の達成は二の次みんな
と仲良くなる事です。
第三段階 達成動機集団です。メンバーの中での信頼関係が強く、本音で活発な意見交換が
行われます。自分の知識や技術をメンバーに伝え集団全体の能力向上を意識しています。この集団では組織
や集団の目標達成に強い関心があります。
◆第二ステップ
人事労務管理システムや仕組みの整備とグレードアップを行いましょう。
①人事労務管理は業績を上げる出発点です。
人事労務管理の目的は会社の発展力を確保することにあます。経営成果を一時的ではなく継続的に確保することが人事労務管理の仕組みをグレードアップする目的です。
②人事労務システムを整備しグレードアップしても成果の出せないことがあります。
それには二つの理由があります。第一は人事労務システムがその企業に適合していなことによるものです。システムそのものがいくら優れていても導入した組織にマッチしなければ何の意味もありません。人事労務システムの場合、よそで成功しているわが社でも導入するというケースが多いのです。第二は現場で取り扱いが難しく定着しないことです。この現象は人事評価制度でしばしばみられます。人事労務部門が現場を無視して机上で作成したものを活用したため評価基準が抽象的だったり曖昧なことにより発生します。
③現状の仕組みの陳腐化防止に関心を払いましょう
どんなに優れた制度や仕組みでもでも時間の経過とともに古くなります。とりわけ人事労務の制度や仕組みを10年以上見直したことがないという企業もまずらしくはありません。事業計画は毎年見直しますがせめて3年に一度は見直すことを意識してください。そうしなければ正しいことをしながら会社がダメになるといった事態に陥りかねません。
④現状の人事労務の仕組みのグレードアップ
とりわけ、採用と教育プログラムに関心を払う必要があります。この二点に関しては現状に満足することは基本的に退歩を意味します。
◆第三ステップ
管理職のマネジメント力の能力開発に注力しましょう
マネジメント力は次の三点です。部下を承認し動機付ける能力とマネジメントサイクルを回す能力と部下を公正に評価し指導する能力です
◎部下を承認し動機付ける能力
電機メーカーB社では社長にも挨拶をしないようなビジネスマナーのできない社員ばかりでした。社員にヒヤリングしてみるとマナーが定着しない原因は思わぬところに存在しました。なんと、この会社では社員が挨拶しても人事部長がいつも苦虫をかみつぶしたような顔して不機嫌だったことがわかりました。そこで社長は人事部長を呼び注意したところ人事部長の態度は変わり組織全体もいい方向に変化しました。
◎マネジメントサイクルを回す能力
自動車部品メーカーC社の管理職は部下を指導できないので部下指導の方法を教えてほしいという依頼がありました。行ってみると!なんと……. 管理職は初めて任用された人が圧倒的で、部下育成どころか自分の管理職の仕事を理解していませんでした。管理職の本来的な仕事である部下と仕事をPDCA(計画、実施、評価。改善)を繰り返してよき成果を出す業務が全くできていませんでした。
◎部下を公正に評価し指導する能力
IT会社であるD社では人事考課制度を導入して3年になるが導入前と社員には何の変化も現れていません。「なぜ?」 部下は会社の処遇の高低でなく、処遇の不公平に不満を持ちます。管理職が新評価制度を理解せず旧来の主観的な評価を継続していました。部下の能力や業績を正しく評価して処遇する能力を習得することが絶対条件ですがこの企業では評価者訓練を怠っていました。
最後に事例:部下を動機付けられる上司と動機づけられない上司を紹介しましょう。
◆部下をやる気にできる上司 ◆部下をやる気にできない上司 |
①意思決定のできる人 ①学歴・出身学校にこだわる人 |
②問題に対して逃げないき人 ②立派なことを言うが行動しない人 |
③仕事熱心で研究心の旺盛な人 ③指示することが好きだが中身のない人 |
④物事を肯定的にみる人 ④利己的で自己顕示欲の強すぎる人 |
⑤依怙贔屓せず公正な人 ⑤しばしば誘うが自腹の切らない人 |
⑥目標を持って生きている人 ⑥将来より昔話の好きな人 |
⑦自己啓発を継続している人 ⑦仕事より家庭生活を優先する人 |
⑧問題解決の際に解決のヒントを出せる人 ⑧将来に対し過度の悲観する人 |
⑨冷静で忍耐強く交渉できる人 ⑨上に弱く部下に威張り散らす人 |
⑩担当業務に精通している人 ⑩やさしいが何もできない人 |