論語に学ぶ人事の心得第十五回 「自分がリーダーとして認められるにはどうすべきか」

 本項は学而編の最終項です。学而編の冒頭第一項では「学んだことを実践することの大切さ」
 「友人との語らいの喜び」、そして、「人から認められないことに腹を立てないこと」を戒めています。その締めである本項においても他人から認められないことを心配する前に自分が人を認めていないことを反省すべきではないかと問題提起をしてます。孔子はいずれ社会の指導者となる弟子に対して他人を指さす前に自己を顧みなさいと教えているのです。
 人はともすれば自分は高く評価して欲しいくせに他人の足りない点をあげつらいたがるものです。孔子が生きた2500年前も、現在も全く変わらない人間のもつ性(さが)と言ってもいいでしょう。
 だから、学べば学ぶほど自分の足りなさが見えてくるの学び続けましょうと弟子に呼び掛けているのです。孔子の偉大さは2500年も前に人間の持つ本性を見抜いていたことにあります。

 学而1-16「子曰く、人之己を知らざるを患(うれ)へず、(人を)知らざるを患(うれ)ふる也。」

 先生は言われた。「人之己を知らざるを患へず」とは自分が他人から認められないことを心配しないこと。「(人を)知らざるを患ふる也」とは自分が他人を認めていないことを心配せよということ。

 論語の教え16:「自分が他人から認められたいなら他人を認めなさい」
 教え1.人材育成の基本は長所を認め、長所を伸ばすよう支援すること。
 人間には誰にでも必ず長所と短所があります。他人の短所は目立つのでとても気になります。しかし、短所をいくら指摘しても短所は無くなりません。指摘すればするほど反感を持たれるだけです。それより、長所を発見し認めることです。そして、長所を伸ばすために全力で支援することです。長所が伸びれば短所は相対的に小さくなりますので短所が気にならなくなります。また、長所が伸びれば周りとの人間関係も良くなり意思疎通やチームワークも良くなり、結果として成果を上げることができるようになります。

 教え2.リーダーが成長しないとメンバーは成長しない。
 欠点指摘型のリーダーの下では人材は成長しません。成長する前にいい芽がすべて摘み取られてしまうからです。また、メンバーはリーダーを超えることはできません。リーダーは自分を超えるメンバーを排除するからです。孔子は2500年も前にこのことを見抜いていました。
だから、いずれ社会の指導者となる弟子に対して君子すなわち指導者として周りから尊敬される人物になることを求めました。そして、単に学んだことを頭で理解するのではなく実践し体得できることが学問の目的であることを説いたのです。現在のビジネス社会でも全く当てはまる真実だと思います。

 教え3.リーダーの役割は学習する組織を作り上げること。
 リーダーの最大の任務は組織全体に学ぶ風土を作り上げることです。学ぶ風土とは何を意味するのでしょうか。その組織を構成する全員が自己成長の可能性を確信して学びを実践していることです。人間には自分を向上させたいという本性が誰にも備わっています。私たちがこれまでにコンサルティングを通じて組織診断をしてきました。それらの企業では社員の9割以上が自分を成長させたいと願っているという結果がでました。しかしながら、会社は社員の思いとは真逆の勝手な思い込みにより、社員のやる気を阻害する風土づくりを一所懸命行っているという現実があることです。
 会社サイドは社員のやる気のなさを嘆き、業績悪化の理由にしている企業もありました。
 このような企業こそ業績不振の負のスパイラルを回している自作自演の企業というほかありません。社員を認め本質的な改革策を起動させる必要があります。(了)


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