どうすれば人事担当者を育成することができるか

 今、華東地区の日系企業を取り巻く人事環境が激変しています。
これまでにこのブログで何度も取り上げましたので多くの皆さんは察していたけるものと思います。
 人事管理上の変化は以下の三つに集約できます、その第一は人件費の高騰であり、第二は人材不足であり、第三には人財育成です。
 これらを専門的に担当する部署が必要なのですが人事部門の無い企業が圧倒的に多いように思われます。よしんば、あったとしても管理部門や総務部門のなかに人事担当者が配置されていますが、仕事の中身はというと勤怠管理や給与計算などの事務作業をしているにすぎません。
 今後、これらの人事環境の変化に即応し企業を発展させるには人事管理を専門とする部署の設置と専門家の配置が不可欠です。
 専門部署はすぐ設置できますが、問題はその責任を担うことができる人事担当者をどう確保するかです。いくつかの選択肢があります。外部から人財会社を通じて中途採用する場合と内部で発掘する場合です。いずれにしてもわが社の人事担当者としての適性をどう見抜くかがポイントになります。
 有名企業で人事部門の仕事をしていたからすぐわが社の人事部門で役に立つかというとそうではありません。人事の業務には大きく次の五つに区分できます、採用、人事企画、人事行政、人財育成、人事処遇です。少なくても人事部長職を担当するにはこれらのすべてに精通していなければなりません。人事担当者であれば二つ以上の業務に精通していなければなりません。精通するというのは少なくとも3年以上の実務経験を有し発生する人事管理諸問題を的確に解決できることを意味しています。
 それでは人事担当者に必要な資質や能力について触れておきましょう。

1.人事担当者にはどんな資質が必要なのでしょうか。
 仮にほかの能力がどんなに優れていたとしても下記の資質をどれか一つ欠くことがあったとしたら人事部門に配置してはなりません。

 第一に虚構性のない人です。虚構性とはどんな性格の人を言うのでしょうか。虚構性とは嘘をつくというのではなく自分をよく見せようとする性格の人です。例えばこれまでにあなたは一度も嘘をついたことがないという質問に肯定的な回答をする人のことを言います。

 第二に何ごとにも対しても逃げない人です。つまり、責任感の旺盛な人です。部下の責任を自分の責任と判断できる人でなければなりません。周りに責任をかぶせる他責の人は人事担当者に向きません。

 第三に忍耐強い人です。すぐ感情的になる人や切れる人は人事の仕事には向いていません。感情的な人に煽られて自分も感情的になったり、各方面からの苦情に対して冷静に受け止められることが大切です。感情をコントロールできる人が人事担当者には必要です。

 以上が性格面ですが能力面ではどうでしょうか。

2.人事担当者に求められる能力とは何でしょうか

 第一は個人と組織に強い関心があること
 人と組織に関心のない人には人事担当者は務まりません。人事は個々人の違いを理解することから始まります。一人ひとりが過去をどのように過ごし、今をどのように生きているのか、さらに未来に向かって自分をどのように成長させようとしているのかを察知できることが人事担当の基本的能力です。また、一人ひとりの個人に対して最大の影響を与えるのも組織です。個人能力と組織能力を両面で理解する必要があります。

 第二は初心に返って「考える力」を磨くことです。
 人事の問題は一つとして同じ問題が発生しません、過去起こった問題を同一視して安易に当てはめようしてもできません。人事担当者は問題の発生のつど初めて起こった問題だと初心に帰って考えて対処することを怠ってはなりません。この考える癖をつけることが人事担当者としての成長にも繋がります。

 第三は常に「先見性」をもって業務に取り組むことです。
 先見性とは将来を洞察することですが、簡単に言えば将来どうありたいのか、あるいはどうしたいのかを常に考えながら仕事をすることです。今をどうしたのかというよりありたい姿から現在を見つめてより早く到達できる方策を考えます。人財は育てるのに時間がかかります。会社の将来の必要人材を予見して今どうすべきか対処すのが優れた人事担当者のあるべき姿です。また、優れた人事担当者ほど長期的に将来を洞察することができます。
 さて、ここまでで、人事担当者のプロフィールをイメージしていただけたでしょうか。それではこのような人事担当者をどう育てるかということになりますが資質に関しては育成というより選別の問題です。つまり、会社の外部に求めるのかあるいは社内登用するのかのどちらかになります。
 結論から申して私は社内登用を進めます。理由は次の二点です。
 第一の理由は資質を見抜くのは実に困難であるからです。私は多くの採用の失敗例を見てきていますし私自身も失敗しました。社内登用であれば人事の知識は無くても資質に関しては観察する期間はたっぷりあったはずだかです。まず、見間違うことはないでしょう。たった数時間の面接で判断するより確かな情報に基づいて判断することができます、
 第二の理由は人事に業務は会社の歴史や企業文化、そして組織風土とともにあります。途中入社してこれらを体得するには1年以上かかるかもしれません。人事本来の仕事ができるようになるまでに相当な時間を要します。余裕のある会社は別として通常の場合には待てません。

 次に人事担当者の能力育成について述べます。
① まず採用業務を担当する。
 人事担当者候補が決まったらまず何を担当させるかについてですが私は採用業務を第一にさせることが重要だと思います。
 その理由の第一は社員を大切にする心構えを醸成できるからです。とりわけ人材不足になりますとやっと採用できた人だから大切に育てようとする気持ちが湧いてきます。
 第二は「採用は人事業務の出発点」です。人事は採用に始まり採用に終わるという言葉があるくらいです。また、人事業務の中で最も難しいのも採用業務です。難しい採用業務で多くの人々に会い人を見る目を養います。

② 次に人財育成業務を担当する。
 採用して入社してきた人をどう育てていくかを企画するのが人財育成業務です。入社後のオリエンテーションから始まり階層別教育プログラム、職能別能力開発プログラムへと展開してゆきます。
 この間に教育技法、教授法なども学習します。

③ 三番目に人事行政部門を担当します。
 人事処遇と人材配置を担当する部門です。人と人の組み合わせを考えるのがこの部門の仕事になります。人事担当者の最高の技術の一つがこの組み合わせです。組織が活性化するのも萎えるのもこの組み合わせ次第だからです。

④ 最後が人事企画部門を担当することになります。
 採用、能力開発、人事行政の各職能で実務経験をした後で人事制度企画や要員計画、組織制度企画を担当します。

 人事担当者は知識が増えるだけでは務まりません。必ず実務経験を積まなければなりません。人事担当者の育成は知識教育と経験教育を総動員することが必要です。つまり、キャリアプログラムを通じた人財育成計画が不可欠です。


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