浸透し始めた能力本位人事管理制度

 「能力主義」ではなく「能力本位」人事管理制度を提唱し始めたのはこのブログでも以前に取り上げましたように大袈裟ですかもしれないのですが世界的にみても正銘が初めてと思われます。
 「能力主義」と「能力本位」はどう違うのでしょうか?
 これは言葉の遊びでなく能力本位とは「企業にとり人事管理上の最高価値を「能力」に置くことを意味しています。能力主義にはこのような強い意味はありません。
 別の言葉でいえば、人事管理上のすべての判断基準を「能力」に置くことです。人事評価制度や人事処遇制度、人財育成制度などすべての人事諸制度は能力を基準に決定され運用されることになります。

正銘がなぜここまで踏み込んで人事管理制度の改革を主張したのでしょうか?
 今回はその理由を三点述べたいと思います。
 これらはすべて直近のコンサルティング活動を通じて得た実感に起因するものばかりです。
第一点は労務管理と早く決別してほしいからです。
第二点は多くの社員がそれを望んでいるからです。
第三点は社員の能力と会社の発展は一体のものだからです。

第一点の労務管理と早く決別することについてです。
 つい最近まで華東地域における日系企業では労務管理が花盛りの様相を呈していました。
 多数の労働者を雇用し大量の離職者を発生させていました。
 ここで、労務管理と人事管理の違いをここで明確にしておきましょう。労務管理とは労働者を集団管理することです。ここでは労働者一人ひとりの違いを把握する必要はありません。企業は肉体的労働力を必要とするだけです。人手や人足の世界です。これらの人々をワーカーとひとくくりにしていました。
 一方、人事管理とは個別管理です。社員一人ひとりの違いを把握することが極めて重要になります。企業は肉体的労働力に加え精神的労働力を求めます。具体的には能力向上を期待しますので人事評価制度、人事処遇制度、人材育成制度が必要となります。労務管理の基本は勤怠管理と規律管理です。加えて低コストの労働力が豊富にあるということが労務管理の前提条件です。
 ところが華東地域の企業を取り巻く労働市場は一変しました。いまや高コスト労働力不足時代を迎えました。ある企業の経営者の言葉ですがかつては100人採用するのに1000人の応募者がいた。いまや10人採用するのに三か月かかると。従って一人ひとりの社員を大切に育て能力向上を通じて生産性の向上を目指す時代を迎えたのです。環境が激変したのに旧態依然たる労務管理を行っていたのでは企業が発展することは不可能です。

第二点の「多くの社員がそれを望んでいることに関して」です。
 いまや平等主義の時代ではありません。労務管理の名残で社員の成果に関わらず給与や賞与に差をつけることなく社員を平等に扱っている企業が少なからずあります。これには二つの誤解があります。第一の誤解は差をつけることを社員が望んでいないというものです。実際は全く逆なのですが社員の気持ちを具体的に把握せず社内の空気を読めない経営幹部や経営者の企業に多いパターンです。第二の誤解は差をつけるとチームワークが乱れ社員がやる気を無くすというものです。これも前項同様全く逆のことですがそれを信じきっている経営者や経営幹部のいる企業に多く見られる現象です。
 社員は公正に評価してほしいと願望しています。公正に評価するとは業績達成の貢献度に応じて処遇されることです。社員はやってもやらなくても同じ処遇されることを誰も望んでいません。
 にもかかわらず、現実には多くの日系企業で平等な処遇が行われ社員の不満が渦巻いてことを気づかずいます。どうか社員の気持ちを受け止め能力本位の処遇制度を構築して欲しいと思います。

第三点の社員と企業の成長は一体のものだという点です。
 「社員の成長なくして会社の成長なし」は一つの格言にすらなっています。会社の成長を願わない経営者はいないと思われますが社員の成長と会社の成長は一体の物であることを信じている経営者は少ないと思います。その証拠に人事に関する専門の部署を設置していない企業が圧倒的に多いのが現実です。また、人財育成に取り組んでいる企業も圧倒的に少ないのも現実です。社員の能力を向上させる人事政策無くして企業は絶対に成長しないことを肝に銘じてほしいと思っています。
 以上三点能力本位人事管理制度を提唱する理由を述べました。これからも正銘は果敢に能力本位人事管理制度の構築を進めてまいります。
 企業の発展を願う経営者ならびに経営幹部の皆さんのご理解をいただければ誠に幸甚です。


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